オリビアとパーティーに行きます!(2)
「ワン!ツ!スリ!フォ!はいターン!!」
コツン………という音を最後に、部屋がしんっと静まり返る。
こうなったら成功なのだ。
「はい!いいでしょう、お二人とも筋がいいですね。」
「「ありがとうございます。」」
オリビアと揃って頭を下げる。
今はダンスのおさらい中。でも、私もオリビアも何年か前に一度授業を受けているから特に問題はない。
オリビアだって、かなり天才なのだ。
とはいっても今回の授業は本格的なダンスの先生のもと3時間ぶっ通し。いつものドレスではなく、汚れてもいい無地のワンピースを着ていたから良かったけれど、終わった頃には私もオリビアもじんわり汗をかいていた。
クリスからタオルを受け取って汗を拭いていると、メイドが飛び込んできた。
「アゼンタイン公爵家の公子様がいらっしゃっております!」
「え!?」
練習室にいた一同かたまる。
よりによって今………。来るんじゃないかなとは思っていたけれど。
ダンスの練習で汗もかいてしまったし、ワンピースも質素なものだ。
「オリビア、お風呂はいい?」
「いけません。汗をかいたでしょう。」
今からお風呂に入っていたら二時間コースになってしまうじゃない!
いくらなんでも公爵家の公子様をそんなに待たせるわけには。
「でもー。」
「いいですよ、そのままで。」
聞き覚えのある声がしてぎょっと振り向く。
「もう来られたんですか!?」
「ええ。声が聞こえていましたので。」
だからと言って来る………?
クララック様は私とオリビア以外にも人がいるからか、敬語を使っている。そうしていると、さらに貴公子感がでて、なんとも言えない空気になった。ちなみにすでに呼びに来ていたメイドはノックアウト。
「お、お久しぶりです、クララック様。」
「ええ。良かったらお庭、拝見させてもらっても?」
!!
挨拶も何もかもすっ飛ばしていきなりそれということは、よっぽど急いでいるんだろう。じゃなかったら呼ばれる前からここに来たりもしない。
「ええ。」
庭ということは、人がいるところで話したくないことだと。
まぁパーティーの件ならそうだろうけど。
乱れた髪の毛を手ぐしで整えて、クララック様のもとへ行く。
「ではお嬢様、帰ってきたらお風呂ですからね。」
背中にオリビアの声がかかる。私が言う前に、クララック様がドアに手をつけながら言った。
「オリビアも。」
「え!?私もですか!?」
「そうよ。クララック様のパートナーはあなたじゃない。」
今さら気づいた、という顔をしてタオルをクリスに預けて駆け寄ってくる。オリビアを笑顔で出迎え、私たちは外に出た。
「突然ごめんね。」
「いいえ。元はと言えば私のせいです。ご迷惑お掛けして………。」
「いや、パーティーはどのみち困っていたし………。」
そうですか、と言いつつ後ろを歩くオリビアを呼び寄せる。
「今日は後ろを歩かなくていいから。」
「はい。」
クララック様がそんな私たちを見て笑う。
庭のかなりおくまで来た。ここまで来ればいいだろう。
「聡いところは変わらないね。」
「クララック様も。」
もちろんオリビアも。
パーティーの件を話すなら当事者であるオリビアはどんな些細なことも聞いておかなければならない。後ろを歩いていたらそれはできない。だから私は呼び寄せた。
いつものオリビアなら 恐れ多い と言うだろうが、今それを言わなかったということは、オリビア自身それに気づいていて、私が言うのを待っていたということだ。
「ここにお座りください。」
クララック様にすすめたこの椅子は、ベドフォード家の広い庭園のなかの、中央に位置するランプのような休憩所みたいなところにある、真っ白な椅子。そこは普段私とオリビアの定番のお茶会スポットだ。
私とオリビアも反対側の席に座る。
「あ、ウィリアムさんに言わないと。」
「あ、私言います。」
「ありがと!」
ウィリアムさんとはベドフォード家の庭師さんのこと。いろんなとこに入り込んで作業しているから、近づいてきても気づかないことがあるんだ。で、決めたルールが、
「ウィーリーアームーさーん!!おねがいしまーーす!!」
聞いてほしくないような話をするときは、こうやって合図すること。
「これは………」
「おきになさらず。ベドフォード家のルールなんです。」
ぎこちなく頷いているけど、多分本心はあのオリビアが大声で叫んだことにびっくりしているんだろう。
まあ、オリビアが気にしていないし、触れなくていいか。




