クララック様と皇太子様は長年の友でした
「突然で申し訳ありません。」
「大丈夫だよ。ただ、今日はもう一人お客様が来る予定だから、一応こっちに隠れて話そう。」
はい。と言ってオリビアと一緒に奥の森にはいる。
「リリアン。さらにあの頃より美しくなったね。」
「え………ありがとうございます。」
こんな直接誉められたことはなくて、少し動揺した。あんな事をさらっと言えるってことは、かなりモテるんだろうなぁ。クララック様。
「そちらがオリビア嬢かな。」
「はい。」
「リリアン様の専属侍女のオリビアともうします。」
オリビアは姓がないから、名乗るのは名だけ。それでもクララック様は気にしなかった。
「よろしくね。オリビア嬢の事はリリアンから手紙で聞いているよ。」
「よろしくお願い致します。」
オリビアも表情を緩ませた。少し進んだところに、木製の椅子とテーブルが出来ていた。チュールのような薄い布で飾りつけがされている。
「素敵ですわね。」
「リリアンのために作ったんだ。前のように見晴らしのいいところではゆっくり話せないだろうとおもってね。」
「そうなんですか?ありがとうございます!!」
お礼を言いながらそこに座ると、クララック様は向かいの椅子に座った。
と、左脇の葉の間から白い毛が見えていた。
あら、と呟いてクララック様とオリビアにしーっと言ってからそっちに忍び寄る。
尻尾をつついて脅かそうとしたその時。
ぐるっと尻尾が動いて私に巻き付いた。そのままぐいっと持ち上げられる。
「えっ………きゃあっ!」
予想外の反撃に悲鳴をあげる。
"久しぶりだなリリアン!"
「ルアン様!」
白い虎ことルアン様がにかっと笑った。私に巻き付けた尻尾はそのままに、私をもとの椅子に座り直させてくれる。
「お久しぶりですわ。」
「お、お嬢様………。」
オリビアが驚いた顔をして私を見つめていた。
あ、そっか。オリビアは初めてだっけ。
「僕の契約精霊のルアンだよ。貴族精霊、位は伯爵。」
「まあ、そうなのですね。失礼しましたルアン様。」
"いや。オリビアというのか。オリビアもリリアンと同じような心地いい空気をまとっているな。さぞかし精霊に愛されるだろう。"
ルアン様の言う通り、オリビアは精霊ととても仲がいい。だから今日連れてきた。精霊が多いここには精霊に嫌われているひとははいれないだろうけど、オリビアなら大丈夫だと思ったから。
「それじゃ、本題に入ろうか。みんな、リリアンにお茶を頼めるかな。」
"分かった~"
そうして精霊たちがいなくなったのを確認してから口を開いた。
「まず、クララック様がお探しの精霊ですが、この5年で見つけることは出来ませんでした。」
申し訳ありません。と言うと、クララック様はとんでもないと言う風に笑った。
「そもそも無茶だったからね。」
………そう。無茶だったのだ。表情が暗くなる私を見て、クララック様は心配そうな顔をした。
これは私がベドフォード家の書庫で探しだした情報。5年間時間があれば書庫に通って、莫大な数の精霊に関する本を読みふけった。ベドフォード家はオーブリーが稀に生まれることや、高い専門知識を持つことからそういった情報がおおくある。もちろん他の家にはないようなものも大量に。
オリビアは貴重なベドフォード家の情報を持ち出すことを最初は渋っていたけれど、クララック様に助けてもらったことを話すと、しぶしぶ承諾してくれた。
そしてその情報とは、
「………クララック様が出会ったその精霊ですが………………。
………精霊姫である可能性が高いです。」
「やっぱりそうなんだね。」
クララック様が困ったように笑って首をかしげた。
精霊姫とは人間型精霊の統率者のこと。つまり、クララック様や私がいつも仲良くしている子達の長。
ベドフォード家に伝説としてその名前が残されていて、銀色の髪が特徴だと書いてあった。この精霊姫はまず人前には姿を表さない。その理由は分からないけど、本には力が強すぎるからだと書いてあった。
人間型精霊が人間と契約しないのは、力の発動がほぼ感情によるものだから。人間型精霊はある時代、そのせいで恐れられていた。精霊姫は中でも感情が荒れたときの魔力の波動が強すぎて、普段、というか、永遠と姿を隠している。はずだった。それがなぜか、クララック様と出会ったと。
恐らく精霊姫はクララック様と分かれた後また姿を隠したはず。そう簡単に見つかるわけがないのだ。
精霊姫はその力の強さゆえに、他の精霊たちとはある意味違う種族のような感じ、精霊たちもその名を口にだすのは嫌う。これは全精霊に共通するんだ。だからルアン様も教えてくれなかった。
これはクララック様も知っているはず。
「ですが、精霊姫様に会える可能性がないわけでもありません。」
「え?」




