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成長したリリアンは美しすぎた件


 「お嬢様。求婚書が届きましたよ。」


 「どこから?」


 「トラッチ伯爵家からです。」


 「………………変な名前ね。」


 読んでいた本を元に戻しながらそう言うとオリビアが苦笑して言った。


 「燃やしておきます。」



 「おねがい。………………にしても最近多いわね。」


 ため息をつきながらいうと、オリビアがなぜか胸をはって言った。


 「お嬢様ももう12歳ですから。」


 「まだ12よ。」



 オリビアの言葉にもう一度ため息をついてしまう。




 あれから5年が経って、こんなことは日常茶飯事になってしまった。

 貴族の令嬢の結婚が早いのは知っていたけど、いざ来てみるとやっぱりうんざりだった。

 

 「あ。いっそのこと、………皇太子様から求婚が来る前にどっかの人と結婚してしまえばいいんじゃないかしら。」


 「お嬢様………。オーブリーでいらっしゃるんですから、下手なとことは婚約できませんよ。幸いまだお嬢様がオーブリーであることは内密になっていますが、今度の洗礼で明らかになる可能性は高いですよ。」


 ………そうなのだ。

 

 3日後、洗礼と呼ばれる神殿での祝福を受けなければならない。

 王国に生まれた12になる子供は必ず神殿で神官からの祝福を受けなければならないのだ。その祝福は時にその人の人生の定めや試練を言い当てるものだから、私がオーブリーであることをばらされる可能性が高い。ちなみにお兄様達の時は「誰よりも清らかで儚い一輪の花を守り続けよ。」だった。それによってお兄様達の過保護がひどくなったのは言うまでもない。

 今どうにかしてそれを避けようとお父様が動いているけれど、私はもう潮時なんじゃないかと思っている。いずれはばれること。それがおそいかはやいかというだけの話。

 どっちみち16歳での大神殿での洗礼祭の時はどうしようもないだろうしね。


 「リリー。リリー?どこにいるの?」


 「お母様。リリーは書庫におります。」


 お母様の呼び掛けに声を張るとすぐに書庫の扉がオリビアによって開かれた。

 お母様が少し顔をしかめて入ってくる。今日のお母様は午後からお父様とお茶を飲むらしく、デコルテのあいたクリーム色のイブニングドレス。今日もうつくしいわ。


 「リリー。洗礼に着ていくドレスは決めたの?」


 「まだです。」


 「どうして?仕立て屋さんが来ていたでしょう?」


 「だってお母様あの人、隙あらば私を襲おうとするような目で見てくるんですもの。気持ち悪くて。」


 言い訳をするように肩をすくめながら言うとお母様が顔を真っ青にして叫んだ。


 「そっそう言うことは早く言って頂戴!大丈夫なの?信頼していた店だったのに。」



 なんかいつも見る人じゃありませんでしたから新人さんでしょう。

 肩に手をおいてしんぱいしてくれる。

 これも日常茶飯事である。で、この後大体………


 ドオオォォンッッ!


 屋敷が揺れるほどの爆音が鳴り響く。それに次いでカイお兄様の怒号が聞こえた。

 



 「こんの変態野郎が!よくもリリーに邪な目を向けやがったな!その目えぐりだしてやる!!」


 「カイ、虫の息程度にしておけ。俺が蛙にしてやる。」


 「シェフー!鶏つれてきてくださいな。ライお坊っちゃまが蛙にするそうです。餌にしましょう。」


 「りょーかい!」


 ………………………。






         あの人死んだな。








 大体こんな感じ。


 さすが小説の主要キャラなだけあって、リリアンは大きくなっても絶世の美少女だった。

 小説ではこんなにリリアンが襲われるような描写はなかったから、中身が私じゃなくておしとやかなリリアンだったら、美しすぎて近寄りがたい雰囲気になるのだろう。だけどまあ、中身私だから………。

 やられたらやり返さない性格ではない。

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