私はオリビアが大好きです(2)
「おかえりなさいませ。」
「ただいま。」
出迎えてくれた使用人達にお父様が代表して返す。ずらっと並ぶ使用人達のなかにクリスを発見した。お父様の補佐官のクリス。いつもは綺麗にお手入れされているクリーム色の猫っ毛は寝癖がついていて、メイドが夢中になる深い海のような色の瞳は瞼によって半分以上隠されていた。
あ………クリスに押し付けたんですね、お父様………………。
「楽しまれましたか?」
「ああ!皆で露店の串焼きを食べたんだ。そしたらライが一個落としてさ。」
「おい!言わない約束だろう。」
「リリーはやけに手慣れてたんだ。一人だけ穏やかに食べててさ。」
半分寝ているクリスにお兄様達が喋り倒す。御愁傷様。
それを無視してお母様に向き直る。
「私、オリビアと部屋に行っていていいですか?」
「ええ。もちろん。ディナーのとき呼びに行ってあげて。」
「かしこまりました。」
私はオリビアの手を引いて階段をかけ上がった。
「お嬢様!転ばないでくださいね!」
「もちろん!」
私たちの手にはラッピングされた箱が握られている。
バタンッと扉を閉めて一息ついてから、オリビアと顔を見合わせて笑った。
なんかこういうの、すごく仲のいい友達同士みたい。
「先にどっちから行く?」
「えっ!私は後で………いやでもやっぱり先に………いやぁでも………。 」
オリビアが本気で悩み始めたので、私のを先に開けてもらうことにした。
「はい、開けて!」
箱を差し出して笑う。
どんな反応するかな。想像はつくけど、やっぱり楽しみ………!
オリビアは箱を恐る恐る受け取って丁寧にラッピングを剥がしていく。そんなに丁寧にやらなくてもというほどゆっくり開けるから可笑しかった。でもそれを言うと「全部このままとっておくんです!」
って言われた。
「………………わぁ。」
やっと開けて中身を見たオリビアは、一瞬硬直して、次の瞬間顔に弾けるような笑顔を浮かべた。
「オリビアの目の色と同じ色の宝石がはめてあるものにしたの。………どうかな。」
「こ、こんなもの、私がもらってもいいんでしょうか………。」
えっ!?
オリビアの目が潤み始めていた。ぎょっとしてオリビアの腕をつかむ。
「やだオリビア、泣かないで。」
「だって………私はただの侍女で………………こんな立派で素晴らしいものを、しかもお嬢様が選んでくださったものを頂くなんて………。」
まさかの号泣。これは、………想像してなかったかな。
「オリビアはただの侍女なんかじゃないよ。私を助けてくれたじゃない。」
「え?………そんなことは………………」
ううん、と首を振って髪飾りを手に取り、オリビアの髪につけた。
「オリビアが私を叱ってくれなかったら私、今日みたいに楽しく過ごすことなんて一生出来なかったかもしれないもの。オリビアのおかげなの。だから………………受け取って、くれるよね?」
オリビアはやっぱり泣いていたけど、髪飾りを押さえながら高速で頷いた。
「はい!はい、もちろんです!ありがとうございますお嬢様。」
それを聞いて嬉しくて、押さえようとしても顔がにやけてしまう。
それが恥ずかしくて、オリビアが大好きで、おもいっきり抱きついた。
「ねぇオリビア、ずっとそばにいてね。」
「………っもちろんです。ずっとお側におります。」
………という感動のシーンをお父様達がずっと覗いていたことに、私はまだ気づかなかった。
ちなみにオリビアのプレゼントは………………。
「え、わ!?え!?」
「私、お嬢様の本当の目の色が大好きなんです。なので紫じゃなくて、こちらにしました。」
あのとき見てたような頭をぐるっと囲むような髪飾りではあるんだけど、はめ込まれている宝石や垂れ下がる飾りがピンク色だった。
てっきりピンクを避けると思ってたから驚いてしまった。
「オリビア………どうして………………。」
「え、お嫌でしたか!?申し訳ありません!」
首を振りながら箱のなかに大事にしまわれているそれを取り出して、頭につけた。
「………なんでわかったの?私がほんとは、ピンク色の目が気に入ってるって。」
笑いながらいうと、オリビアはきょとんとしてからほっとしたような顔をして、息を吐いた。
「そうだと思っていましたよ。」




