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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百五十六話 道連れ

7447年12月16日


 俺の使ったオーディブルグラマーによって、首尾よく全てのドラゴニアンの注目を惹きつける事に成功した。

 作ったトーチカに半身を隠しながらも、着陸が遅れた奴に速度に魔力を追加したストーンジャベリンミサイルを叩き込む。


 ドラゴニアンは躱そうと身を捻るが通常よりもかなり速い速度にまで高められたジャベリンにその胸を貫かれ、墜落した。


 俺の場合、弾頭の飛翔速度を上げるため、無魔法に魔力を注ぎ込んでも通常より使用する魔力は低い。無魔法レベルMAXの面目躍如だ。


 残りは九匹か。

 接触するまでの間にたった二人だけで敵戦力の半数以上を倒せたのは上出来だ。


 ドラゴニアンが墜落した辺りから“ドン!”という炸裂音が響いた。


 こ、こいつら、火薬でも持っていたのか!?


 手に持っていたのは棍棒だった筈だと信じられないような思いを抱く。

 つい、左手に持った貫きの槍《スピアー・オブ・ピアシング》の感触を確かめてしまう。


 登山道に転々と四つの土山が並んでいる。

 これを上手に使ってエンゲラの狙撃による援護を受けながら数を減らしたいところだ。


 道の両側の森の中に派手に泥化(クァグマイア)の魔術を使って泥による堀を作った。

 勿論双方とも一箇所だけ隙間を空けている。

 この隙間を通ってくれれば狙い易い。


 泥の上には睡眠ガス(スリープクラウド)を使っておいているが、その効果にはあまり期待していない。

 単にこの魔術で発生するガスが無色透明で無臭だからに過ぎない。

 あの翼で低空を滑空されて来たり、丁度ガスの中で羽ばたかれでもされたら散っちゃうだろうし、僅かでも効果があれば儲けものってところだ。

 場合によっては炎の壁(ファイアーウォール)や石の壁(ストーンウォール)でもいいけど、それじゃ視界を塞ぐからね。

 迷宮内の山が火事で丸坊主になろうと俺の知った事じゃないので気を使った訳ではない。


 狙いは当然、氷漬け以外ない。


 とは言え、森の中の見通しは悪いので纏めて氷漬けにするのは無理だ。

 半数も氷漬けに出来れば上等で、運が良くても三匹くらいじゃなかろうか。

 それも魔法使いタイプならすぐに氷を消して出てくるだろう。

 だが、僅かな時間でもそれで足止めをする事が狙いだ。


 同時に相手取る数は少しでも減らしたいところだし。

 とにかくもこれで簡易的な要塞化は済んだ。


 ……。


 木の陰からこちらを窺うドラゴニアンが一匹……二匹。

 道の両脇十mほどに作った泥沼の帯までまだ十m程の距離がある。

 せめて泥沼の辺りまで近付いてくれるまで気付かない振りをしておこう。


 いま氷を出してもあの二匹を氷漬けにして終わりだ。

 

 ……三匹……こんなもんか。

 もう少し近付いてくれ。


 む、エンゲラめ、あんなところに……。

 俺がいる道の下方、百m辺りの木陰にエンゲラが見えた。

 位置的には撃ち上げ射撃という難しい形になるが、撃ち下ろしよりはマシか。

 風なんか大して無いし、この距離なら重力もコリオリも殆ど意味ないから気分的な問題だけだけど。

 そう言えば屋外での射撃練習、俺も含めてまだ誰にもさせてない。

 領地出来てからでいっか。


 それはそうと、エンゲラは太い幹の樹木と古い倒木とを上手く利用して目立ちにくい場所を確保している。

 彼女の腕なら、俺が妙な動きをして邪魔さえしなければあの場所で二発は射撃可能だろう。

 俺が発砲炎を上手く誤魔化すことに成功すれば三~四発も夢じゃない。


 辺りを見回してまだ少し余裕がある事を確認すると、魔力を練る。

 遠話(テレパシー)の魔術だ。

 俺の視界にエンゲラが入っているから問題なく使える。


「エンゲラ、そこで三発は撃てるように粘る」


 小声でも声を出して喋らないと相手には聞こえないのが難点だが、便利な魔術だ。

 静かな部屋の中で目の前にいる相手に聞こえるくらいの声であれば問題はない。

 つまり、囁き声でも大丈夫だ。


「一応、お前から見て右側の方を任せるつもりだが、相手の位置関係によっては最初にそちら側に魔法を使うかも知れない。その場合はお前にも判るように使うからその時は左側から来る奴らを任せる。今、左側には三匹、右側には一匹、いや、二匹見える。いいな?」


 同じ坂にいるのだから、俺がエンゲラ同様に坂の上の方に向き直れば左右は一緒だ。


「解りました、ご主人様」


 目の前でエンゲラの囁いたような声がした。


「それから、翼付きのうち真鍮色と銅色の奴は魔法が使えない。別の奴を優先的に狙え。最優先は翼の無い金色っぽい奴だ」


「畏まりました」


 エンゲラから見て左側の三匹はゆっくりと近付いて来ている。

 鱗の色から判断してバーズ・ドラゴニアンが二匹とガーバク・ドラゴニアンが一匹。

 その後ろに何匹が隠れたまま様子を窺っているのかは残念ながら不明なままだった。


 そして、エンゲラから見て右側の二匹もまたゆっくりと近付いて来ている。

 こちらは両方共バーズ・ドラゴニアンのようだ。


 ここらが限界か。

 ここから大きく移動しない限り今いる位置の前後や左右を同時に見ることは出来ないから、やはり左の方に対して氷漬けだ!


 上手く三匹とも氷の中に閉じ込めてやった!

 こいつらは自力での脱出は無理だし、あの全元素魔術が使えるウォーラック・ドラゴニアンが傍に居ない限りは大丈夫だろう。


 と、その時、またもや咆哮が轟き渡る。

 今度の咆哮は明らかに怒りや苛つきを感じさせた。


 反射的に山の上の方を見上げてしまう。

 早く邪魔者を始末しろ、という事だろうか。


 慌てて後ろに振り向いて右側から近づいて来る奴らに視線を放つと、奴らも上を見ていやがった。

 どこか人間臭さを感じさせるね。

 人型だし、それはしょうがないのかも知れん。


 二匹いる方のうちの片側にライトニングボルト!

 俺が魔術を放とうとすると同時に奴らもダッシュで近付いて来る。

 翼は折りたたんで背中にくっつけているようだ。


 ライトニングボルトは一瞬のうちに到達し、電撃によってバーズ・ドラゴニアンを絡めとる。

 直撃だ!


「ゴケェッ!!」


 嫌に濁った叫び声を上げてドラゴニアンが倒れる。


 もう一匹の方は頭部を右から殴られたように吹っ飛んだ。

 即座に周囲にオーディブルグラマー。


 エンゲラ、ナイスサポートだ。


 撃たれたバーズ・ドラゴニアンは倒れたきり動かない。

 倒れ方からして側頭部に銃弾を受けたんだろう。

 周囲に血液や脳漿が飛び散ってはいないから盲管か……驚いた。

 M80食らって貫通しないとはな……しかし、脳は破壊されたらしく即死のようだ。


 これで残り四匹!


 心の中で快哉を叫ぶが、目を見張る。

 たった今倒した二匹のバーズ・ドラゴニアンは、その艶のない真鍮色の鱗がみるみるうちに白っぽく変色し、あっという間に……倒れたドラゴニアンの形をした石像と化してしまった!


 何だこりゃ!?


 そう思う間もなく、石像と化した二匹が飛び出してきた後ろの木立の奥から攻撃魔術が飛んで来る!

 なんとかトーチカに隠れて防いだ。

 俺の後ろ側は氷があるから、僅かの間は大丈夫だろう。

 そちらにウォーラック・ドラゴニアンが居たとしても氷を消すか、迂回するか、もう一度飛び上がって越えてるまでの時間はある筈……。


 だが、何ということか!


 山の上の方、ドラゴニアンたちがやって来た辺りから……。

 巨大なモノが飛び立つのが……。


 見えた。


 見てしまった。

 見てしまった以上、とても目を外すことは出来なかった。

 一瞬、ドラゴニアンたちの存在をすら意識の外に追いやられてしまう程の……。


 再び銃声が轟いたことで意識が引き戻される。


 エンゲラはあいつを見ていないのか!?

 しゃがんでいるから木立に阻まれて上方視界が制限されていたから気付いていないのか。


 オーディブルグラマーを使う事すら忘れていた上に、デカブツに意識を取られていた事が致命的な隙を作り出していた。

 木立から身を乗り出していたウォーラック・ドラゴニアンが魔法を使っている。


 生意気にも地魔法で土を出し、それで俺を埋めようとするつもりらしい。

 だが、地魔法のレベルが低い(充分に高いが)ために生成量が少なく、直接は埋められずに俺の頭上に飛ばしている。

 即座にライトニングボルトをもう一発放つ。

 俺も埋められてしまうが、殆ど同時にウォーラック・ドラゴニアンに電撃が届いた。


 倒せたかどうかは解らない。

 すぐにアンチマジックフィールドで周囲の土を消す。

 消すと同時に別のドラゴニアンが放って来たらしい魔術弾頭も消した。


 さっきのウォーラック・ドラゴニアンは倒れてはいないようだが、電撃に苦しんで膝を突いている。

 そのMPじゃ電撃傷自体は治せても、痛みや痺れまではそう簡単に抜けないだろう。


「ダッダ・ゴド・ブール・カーッ!」


 地に膝を突いたドラゴニアンはしゅうしゅうと息が漏れるような声で坂の下の方を指差しながら、何事か指示している。

 エンゲラ、そっちに何匹か行くようだぞ?


 気が付くと最初に氷漬けにした三匹を解放すべく別のウォーラック・ドラゴニアンがアンチマジックフィールドを使っていた。

 既にガーバクとバーズ・ドラゴニアンが一匹づつ解放され、俺に向かって来ている!


 ガーバク・ドラゴニアンにウインドカッターを放って牽制し、バーズ・ドラゴニアンに対して手に持った槍で応戦。


 再度銃声が轟き、後ろの方で「ゴガッ!」という苦悶の叫びが上がる。

 やったな、エンゲラ! その調子だ!

 それと同時にバーズ・ドラゴニアンの棍棒が届くよりも前に貫きの槍《スピアー・オブ・ピアシング》の穂先がその胸を捉えた。


「ぬええぇぇいっ!」


 気合一発、全身の力を込めて胸のど真ん中を貫いた。

 手応えは充分!


 すぐに槍を引き抜くと先程牽制したガーバク・ドラゴニアンに槍を向けた。

 同時にそいつの鼻先にオーディブルグラマー!

 猫騙しだ。

 ダメか。

 これ、大抵の場合効果ないんだよな。

 手を叩くように視覚に訴える訳じゃないからだろう。

 因みに、ライトやダークネスは効果があるが相手が動いていない時に限る。


 ガーバク・ドラゴニアンは棍棒で俺の槍をいなそうとして来る。


 まず俺との距離を詰めない限りは勝ち目がないし、しょうがないよね。

 でも、俺はこんな時でも魔術が使えるんだ。

 至近距離からファイアージャベリンを放って始末してやった。


 そして、更に氷から解放されたバーズ・ドラゴニアンと、そいつを解放し終わったので別の魔術を使おうとこちらに手を向けているウォーラック・ドラゴニアンの方へアイスコーンの魔術を放つ。


 バーズ・ドラゴニアンの突進は阻まれ、ウォーラック・ドラゴニアンの精神集中は途切れた。


 が。


「エメロン!」


 坂の下の方からエンゲラの声がする。

 遂に肉薄されたか。

 炎の剣(フレイム・タン)は強力な武器だけに、肉弾戦ならエンゲラに分があるだろう。


 俺の前のバーズ・ドラゴニアンとウォーラック・ドラゴニアンを捉えたアイスコーンへの精神集中は切らさない。

 だけど、たった今ファイアージャベリンで始末した筈のガーバク・ドラゴニアンの死体が……黒煙を上げながらじゅわ~っと溶け崩れた!


 これ、キルクラウドのガス!?


 アイスコーンへの精神集中を維持しながら後退する。

 坂を下り、エンゲラと合流するべく後退方向をずらそうと……。


 ライトニングボルトで傷を与えたウォーラック・ドラゴニアンが後ろに居る筈だ!

 くそっ!

 攻撃を受ける前に思い出していたので、ぎりぎりのところで躱すことが出来た。


 なんとか体勢を立て直して襲い掛かって来たウォーラック・ドラゴニアンに向き直れたのは、そいつが痛みまでは完治出来ていなかったために動きが多少ぎこちなかったからだ。

 だが、この距離じゃ槍は役に立たない。


「シッ!」


 槍を落とすと拳を握りしめてパンチを放つ。


 メリケンサック付きのフックだ。


 パンチを喰らったウォーラック・ドラゴニアンはよろめく。

 追い打ちをかけるように反対側の腕でもう一発!

 今度はそのでかい顎に……効いてない!?


「ヤリヲテバナシタノハシッパイダッタナ、コゾウ」


 にやりと嗤うように顔を歪めたドラゴニアンはしゅうしゅうと息が漏れるような聞き取りにくい声で喋る。

 ラグダリオス語(コモン・ランゲージ)!?


 爪の生えた腕で掴んだ棍棒を振り回してくる。

 スウェーバックして棍棒を躱し、こうなりゃまた攻撃魔術を、と思った時。


 ドガンッ!


 少し離れたところで倒れてぴくぴくと痙攣していた筈のドラゴニアン、ついさっきエンゲラに撃たれたヴォーザッグ・ドラゴニアンの全身が一瞬膨らむように内側(・・)から爆発し、飛び散った!


 と、同時に“ゴンッ!”と体の芯に響くような衝撃があった。

 突然の爆発に気を取られ、その死体の飛沫を浴びてしまっていた隙にウォーラック・ドラゴニアンの棍棒による一撃を左肩に貰ってしまったのだ。


 が、倒れながらもファイヤーカノンをぶち込んでやるのには成功したぜ!

 にやつくような表情を消し飛ばし……!?


 目の前で大音声を発しながら首なしのウォーラック・ドラゴニアンの死体が爆発した!

 さっきのヴォーザッグ・ドラゴニアンなんかとは比較にならない大爆発だった。


 意識を手放さないよう、必死に歯を食いしばる。

 さっき見たデカブツのことがチラリと脳裏をよぎった。


 

 ドラゴニアンについてですが、ドラゴニアンという種族はドラゴンの卵が孵化する前に秘術を掛けることで生まれてきます。従って非常に貴重な種族で、迷宮以外で見ることはまずないでしょう。

 同種族であればドラゴニアン同士で繁殖も可能です。

 その場合、妊娠したドラゴニアンの雌は一度に一個だけ卵を産みます。

 卵は黒鉄色をして、そう簡単には割れることはありません。


 なお、種族のサブウインドウには重要な情報も書いてありますが、本編中で見ることは難しいと思いますのでちょっとだけ抜粋します。


■バーズ・ドラゴニアン

 ドラゴニアンの中で最下級種で数も多い。他のドラゴニアンと比較すると体格も良くない。魔法を使う事も可能ではあるが、修行に耐える精神力を持った者は少ない。外傷が原因で死亡すると死体は石になる。


■ガーバク・ドラゴニアン

 こちらも魔法を使う事も可能ではあるが、修行に耐える精神力を持った者は少ない。体液は有毒で、戦闘前に唾液を武器に塗りつけていることもある。外傷が原因で死亡すると死体は溶解し、強酸と猛毒のガスを発する。


■ヴォーザッグ・ドラゴニアン

 翼を持たない代わりに魔力飛行の能力を持ったドラゴニアン。魔力飛行はあまり複雑な機動を行うことは出来ないが、移動には充分に役に立つ。一度の能力使用(MP1)で肉体レベル当たり10分間の全力飛行が可能。外傷が原因で死亡すると全身の骨が爆発する。


■セイバク・ドラゴニアン

 滅多に生まれないがドラゴニアンでは最も体格が良い。魔法も得意。体格が自分と同程度(概ね身長1.5~2.5mくらい)なら自分が殺した相手の姿に変身することが可能。但し、最後に殺した相手のみ。また、死体は自分を殺した者の姿に変わる(サイズは上記と同じ)。変身できない場合(サイズを超えた相手や、事故死など)、死体は爆発する。


■ウォーラック・ドラゴニアン

 ドラゴニアンの中で最上位種で非常に貴重。ヴォーザッグ同様に翼を持たない。我慢強く、魔法も超得意。外傷が原因で死亡すると死体は大爆発する。


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