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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百五十五話 竜人

7447年12月16日


 今回は視界の通り難い森の中を進んでいたので、十二層のようにパーティー間の距離を取っていなかったのが幸いといえば幸いだった。


 見付からないうちに道から外れた森の中へと隠せる。


 まだライトニングボルトの檻は発生していないようだから、こちらを見付けた上での威嚇だったという訳ではないのだろう。

 エンゲラは咆哮の影響を受けなかったが、一体何が起きたのか理解していない様子だ。

 まぁ、知らなきゃそうなるのは無理も無いので、慌てるエンゲラを叱咤しつつ全員を追い立てて木立の中に隠す。

 勿論、動きの鈍い奴は蹴り上げつつも引き摺り、とにかく急いで退避させる事を最優先にする。

 元々恐怖のあまり逃げ出そうとしていたが、腰が抜けていた事もあって全員が動けなかった。

 乱暴に扱った為に避難を完了させるまで然程の時間を必要としなかったのが僅かな救いか。


 しかし、さっきのがドラゴン(?)の【咆哮】だとすると、その威力はホーンドベアーなんかとは比較にならない。

 MPが多いミヅチやベルなんかも一発で恐怖に打ち震えている。

 減ってるMPはたった四だけなんだけど。


 尤も、その御蔭で若い上にMPの少ないジェスは完全に魔力切れの様相を呈しており、避難すらしようとはせずにその場に蹲って槍を放り出して頭を抱えてすすり泣き、戦の神(オヌワス)に祈っているだけだった。

 恐怖のあまり失禁もしていたが、失神しなかったのは褒められるのかもしれない。

 失神してくれていた方が運ぶのが楽だったと思うけど。


 エンゲラだけはMPすら減っておらず、全く異常が見られない。


 彼女のレベルは二四で、俺の次に高いレベルを誇っている。

 その次はミヅチ、ゼノム、ズールーの二三と横並びだが、この三人はMPを四だけ減らされて恐怖に涙を浮かべ、顔を強張らせているばかり。

 以下全員同じだった。


 ちくしょう。この場所から全員を連れての撤退は無理だ。


 ……そうすると、戦闘するしかない。


 しかも、皆に被害が及ばないよう、ここから少しでも距離を取ってそこに敵を引き付けるべきだろう。


「よし、全員隠したな? エンゲラ、お前はこの剣を使え。俺はグィネの槍を使う」


 エンゲラにトリスの剣を渡し、俺は銃剣を降ろしてグィネの魔法の槍を掴んだ。


「そ、そんな! これはカロスタラン様が大切にしておられる……」

「気にするな。もしドラゴンが相手なら魔法の武器の方がいい。魔力付与の魔術を使えないこともないが、戦闘が長引いたら掛け直している暇があるかどうかわからんからな……だが……」


 能力から言ってミヅチの使っている剣の方が高いだろうが、片刃の曲刀なんか俺もエンゲラも上手に使う自信はない。それに、リーチを考えると槍の方がいいが、エンゲラは槍を使った事がないし、ライフル銃がメインだから邪魔になりにくい剣でいいのだ。俺も槍自体は得意ではないが、ガキの頃に一通りは仕込まれているうえ、銃剣格闘は元々槍術がその源流だ。恐らく、上方に向かって突く以外の細かいテクニックなんか必要ないだろうからその程度でも充分だろう。


「弾丸を寄越せ」


 エンゲラが腰に着けている弾薬箱の弾丸のうち、一列十発に魔法武器化(エンチャント・ウェポン)の魔術を掛けた。

 今までモンスターを相手取っての実射で試したことは無いが、魔法武器化(エンチャント・ウェポン)の魔術の対象になることは解っている。

 気休め程度にはなるだろう。

 時間がないからこれ以上多くの弾丸に魔法を掛けている暇はないけど。


「よし、この列の弾に魔法を掛けた。銃が効かないと判断したら回転弾倉(シリンダー)に弾が残っていても捨ててこれと詰め替えろ」


 そう言いながら俺もベルの矢筒(クイーバー)から盲目の矢《アロー・オブ・ブラインドネス》を数本抜き取って腰の後ろのベルトに挟んだ。

 突き刺さりさえすれば弓で射なくても効果を発揮するのは昔バストラルが実演してたし。


「今から防御の魔術を掛ける。終わったら皆から出来るだけ離れて戦うぞ」

「はい」


 エンゲラと自分自身にレジスト系の魔術を全種掛けると二人で山の上方を目指して全力で走り出した。




・・・・・・・・・




 山道を走り出し、山の上方を見上げると変化が起きていた。

 まだ遠くてゴマ粒のようにしか見えないが、飛行生物らしきものが何匹もぐるぐると旋回しているのに気が付いた。


 更に五分程全力で山道を駆け上る。


 山の上の方になにやら洞穴らしきものが口を開けている。

 飛行生物はそこから飛び出して来ているようだ。


「っ……あれは……!?」


 横で息を切らしながらエンゲラが言う。

 だが、まだ遠くて俺もよく判らない。

 数は……九、十……いや、もっと増えている。

 それに……。


「はっ……ひっ、人型に見えるな……悪魔(インプ)か?」


 それにしちゃ変だ。

 もう少し大きいようだし、形も……。


 その時、遥か上空からパーンという空気を引き裂くような音が響き渡った。

 あまりにも遠いので音は軽く、小さく耳に入ってきただけだったが、発生源までの距離を考えると、本来は轟音だろう。


「この音は……!」


 エンゲラの言う通り、この音はライトニングボルトの檻が形成された時の音だ!

 慌てて左右を見渡したが遠くに十三層の外壁が見えているだけで何も……。


 いや、上空に浮かぶ網の目の隙間から連続する稲光のようなものが見えている。

 十二層のライトニングボルトの檻が作動した!?

 今頃?


 ……それはその通りなのだろうが、原因はすぐに判明した。


 山の上の方で旋回していたゴマ粒のような奴らが米粒ほどになっている。

 発見されたと見るべきだろう。


 つまり、あの羽虫のような奴らが十二層の階層守護者だった!?


 その通り。

 ゴマ粒のようだった米粒どもはぐんぐんとその大きさを増して来ていた。


「エンゲラ、当てられる自信がある距離まで引き付けてからカマしてやれ!」


 そう言って俺はエンゲラから距離を取り、オーディブルグラマーの魔術を使いながら更に山道を登る。

 エンゲラにはベルと一緒に機会のある毎に動体射撃の練習をさせている。

 適度に速度を落とし、短く変形させた攻撃魔術の魔術弾頭を撃たせているのだ。

 流石にアーバレストクラスの弾頭に当てるのは半々程度だが、ライトカタパルトなら半々よりマシ、ヘビーカタパルトならまず当てられるようにまでなっている。

 人間サイズなら二百mの距離があっても落ち着いて狙える環境なら見越し射撃で必中だ。


 そろそろ五百mを切ったか……【鑑定】の射程内に入る。


【 】

【女性/16/11/7445・バーズ・ドラゴニアン】

【状態:良好】

【年齢:2歳】

【レベル:17】

【HP:155(155) MP:1(1)】

【筋力:33】

【俊敏:22】

【器用:17】

【耐久:30】


 この程度ならなんとでもなるだろう。


 ……ん?

 何種類かいるみたいだな。


【 】

【男性/14/7/7444・ガーバク・ドラゴニアン】

【状態:良好】

【年齢:3歳】

【レベル:17】

【HP:149(149) MP:6(6)】

【筋力:30】

【俊敏:24】

【器用:17】

【耐久:31】

【特殊技能:毒】


 なんか違うのかね?

 あ、毒か。

 近付かれる前に始末が必要だ。


「エンゲラ! 一発撃ったら位置を変えろよ!」


 どうせもう俺は発見されているようだし、今更逃げ隠れするつもりもない。

 叫ぶのも敵を引き付ける要素になるから大切なことだ。


 パーン!


 ドラゴニアンの編隊が二百m程に近付いた辺りでエンゲラのライフルが火を噴いた。

 森の中だとは言え、音を遮るものはないから発射音は結構拡散している。

 僅かに間を置いて俺のオーディブルグラマーが発射音を誤魔化す。

 二十匹程の集団から落ちる奴がいた。

 どちらの種族かまでは判らなかったが、当たれば一撃か?


 よし、俺も!


 まずは頭数を減らす為と小手調べの為に先頭を飛んでいた弱そうなバーズ種の一匹にチェインライトニングの魔術を放つ。


 百五十m程度のところまで迫っていたドラゴニアンに空気を震わせながら電撃が命中!

 次いでいつも通り分裂して二匹、いや、距離の問題で一匹だけか……だが、そこから更に分裂して二匹、更に分裂して三匹、更に……流石にダメか。


 俺の魔術で七匹もの仲間を落とされたドラゴニアンどもは用心したのか素早く散らばった。


 だがな……。


 即座にストーンジャベリンミサイル!


 五本弾頭の石槍(ストーンジャベリン)を誘導(ミサイル)付きで撃ち放つ。

 お、反応自体は結構素早いのな。

 だが、空中での機動性はたかが知れたものだった。

 それに、飛んで来る速度も大人が走るよりは少々速い程度の速度で、時速三十~四十㎞というところかね?


 長時間地上を走り続けるよりは速いんだろうが、あれじゃブンド鳥の方がずっと上だ。

 結局、躱そうと身を捻っていた奴も後を追いかけた五本の石槍にその身を貫かれて絶叫を上げながら落ちていった。


 距離が迫って来たら更に別の奴が混じっているのに気が付いた。

 何だあいつ!?

 群れの中には少数だがこんな奴らも混じっていた。

 群れの後方に位置していたらしく、遠くからでは気付かなかった。

 さっきのチェインライトニングで何匹か仕留めていたかも知れないけど。


【 】

【男性/23/6/7443・ヴォーザッグ・ドラゴニアン】

【状態:良好】

【年齢:4歳】

【レベル:17】

【HP:100(100) MP:22(27)】

【筋力:23】

【俊敏:22】

【器用:20】

【耐久:14】

【特殊技能:魔力飛行】

【特殊技能:地魔法(Lv.2)】

【特殊技能:水魔法(Lv.2)】

【特殊技能:無魔法(Lv.3)】


 コウモリみたいな羽がない!

 【特殊技能:魔力飛行】ってやつで飛んでんのか?

 ……上空からの魔法は少し厄介かもな。


【 】

【男性/11/4/7439・セイバク・ドラゴニアン】

【状態:良好】

【年齢:8歳】

【レベル:18】

【HP:143(143) MP:36(36)】

【筋力:33】

【俊敏:25】

【器用:20】

【耐久:24】

【特殊技能:写し身】

【特殊技能:地魔法(Lv.3)】

【特殊技能:水魔法(Lv.3)】

【特殊技能:火魔法(Lv.3)】

【特殊技能:無魔法(Lv.5)】


 こいつはちゃんと羽がある。

 体つきは一番大きいし、魔法のレベルも高いからこいつがボスか?

 【写し身】なんて特殊技能もあるし。

 しかし、こいつは結構……。


【 】

【女性/19/3/7435・ウォーラック・ドラゴニアン】

【状態:良好】

【年齢:12歳】

【レベル:20】

【HP:146(146) MP:53(58)】

【筋力:31】

【俊敏:27】

【器用:20】

【耐久:25】

【特殊技能:魔力飛行】

【特殊技能:地魔法(Lv.5)】

【特殊技能:水魔法(Lv.5)】

【特殊技能:火魔法(Lv.5)】

【特殊技能:風魔法(Lv.5)】

【特殊技能:無魔法(Lv.6)】


 ……間違いない!

 こいつがボスだ!

 レベルも高いし、魔法もかなり高レベルで操るようだ。

 ついでに言うと、他の奴にはかなり目立つ尻尾があるが、こいつには無いか、あっても目立たない小さなものだろう。


 しかし、ここまで近付いてくれたのでようやっとその姿形が判る。


 どいつもこいつも擬人化したトカゲ、いや、ドラゴンのような姿形をしている。

 ドラゴンなんか見たこと無いから知らないけどさ。

 でも、トカゲよりずっと凶悪そうで厳つく見えるんだもんよ。


 バーズ・ドラゴニアンは体全体が艶のない真鍮色の鱗に覆われている。

 ガーバク・ドラゴニアンは古びた銅色の鱗、ヴォーザッグ・ドラゴニアンは緑青まみれの青銅色、セイバク・ドラゴニアンは鈍色の鱗、そしてウォーラック・ドラゴニアンの鱗はくすんだ金色をしている。


 装備品もあるようだが、ボロ布のような衣服や棍棒らしきものを手にしている。


 集団から攻撃魔法が放たれるまでの間に追加で二匹始末出来た。

 魔法のレベルが高い分、俺の方が射程が長いからね。

 一匹は俺の攻撃魔術で、一匹は位置を変えたエンゲラの狙撃だ。

 エンゲラは狙いを外さなかった。偉い!


「ふん」


 ドラゴニアンの数匹から俺を目掛けて幾つかの攻撃魔術が放たれた。

 飛行中に魔法が使えることに驚いたが、遠すぎだろ。

 攻撃魔術なんざ加速させなきゃボールを投げるくらいの速度だ。


 少し位置を変えるだけで魔術は全部外れた。


 即座に反撃の魔術を放ち、もう一匹のドラゴニアンを追加で撃墜しておいてやる。


 ぬっはっは、七面鳥撃ちか?


 と、思ったが敵もさるもの、ウォーラック・ドラゴニアンはミサイル付きの攻撃魔術を放って来やがった!


 ミサイルの誘導を放棄してアンチマジックフィールドで対処せざるを得なかった。

 盾持ってくりゃ良かったよ、くそ。


 でも、ここまでに十一匹のドラゴニアンを始末出来ているのはでかい。

 残りは半数だ。


 まずはあのミサイルを使ってきたウォーラック・ドラゴニアンを始末した方がいいな。


「あの金色の奴からやれ! 俺が囮になる!」


 エンゲラに命じながら目立つように走り出す。


「ゴォォォォガァァァァッ!!!!」


 再びドラゴンらしき咆哮が響き渡る。

 その声は心なしか苛つきのようなものを感じさせた。

 ドラゴニアンたちは最初の咆哮が響いた後に空中に飛び上がっていたから咆哮の効果を受けないだろう事は想像が付いていた。

 それゆえに、妙な期待を抱いてはいない。


 だが、響き渡った咆哮によってドラゴニアンたちに焦りのような物が生まれた事を感じ取る。


 こりゃあ、なんかあるな……。

 ドラゴン(?)とドラゴニアンとの間に一体どんな関係があるのかは不明だが、何らかの関係がありそうだ。

 じゃなきゃ十二層の守護者であると思われるドラゴニアンたちが十三層に居る訳がない。


 ドラゴニアンたちはもう俺から数十m程先にまで達しており、高度を落とし始めた。

 上空にいたままだと素早い機動は出来そうにないから地上戦でこちらを仕留めようというのだろう。

 エンゲラの狙撃は間に合わなかったようだ。


 しかし、地上戦なら望むところだ。


 道の前後に地魔法を使って数個の土山を作る。

 この土山をトーチカに見立てて、まずは射撃戦だ。

 壁状にしなかったのは囲まれて逃げ難くなるのを防ぐためだ。


 とは言え、ドラゴニアンは人と同じくらいか、個体によっては少し大きい程度の大きさだ。

 銃剣置いて来たのは失敗だったかも知れん。


 銃声が響いた。

 降下し始めた奴の一匹が濁った絶叫を上げながら落下したのが視界の隅に映る。

 すまん、エンゲラ。

 お前を侮り過ぎていたようだ。


 エンゲラの銃声に気を取られないように、こちらでも連続してオーディブルグラマーを使う。

 こっちを向きやがれ!


 

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