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地道なゴブリン討伐

「石だといっても、人の頭に当たれば、即死します。

街の中央だと、跳ね返りで怪我をする方もいるかもしれません」


「そんなに強力なのか。じゃあ村の外に出よう」


俺たちは、村の外に出て、的を探す。


「よし……、あの木にしよう」

村長は一本の木を指さす。


「わかりました」


俺は石を拾い、投石器にセットし投げる。

(ひゅん)

石はまっすぐに飛び、木の幹に命中した。


「よし」

思わず拳を握った。


「みごとじゃな。

しかしな。投石だけでは心もとない。

接近戦になった時に、身を守れる道具があったほうが良い。

ワシが若い頃に使っていたこん棒があるから、それをやろう」


「じゃあ、討伐しても良いのですか?」


「もちろんじゃ。ワシらはお願いするほうじゃし」


「それで倒し方なのですが、一日一匹程度ずつ、削っていこうと思っています」


「削る?」


「一度に相手をせず、少しずつ数を減らします」


「まぁ、うちとしては、被害が出てるわけでもないから、別に構わないが、利益にならんだろ」


「それは大丈夫です。できれば、ケガをしたくないので」


「ケガをしたくないか……、珍しい冒険者じゃのう。まぁ良い。こん棒を取りに行こう」

村長は笑った。


村長の家に戻り、

こん棒を受け取る。

持ち手の部分は茶色く手垢で染まり、使いこんだ跡があった。


「ずいぶん、使い込まれてますね」


「親父の代からだからな」


「そんな大事なものを」


「大事なもの?

ただの古道具だろ。

いいよ。いいよ。

道具屋でも買い取ってくれない年代物だ」


「ありがとうございます。あと出現がよく確認される場所を教えてもらえますか?」


「よく出現するのは、あの森の端の大きな岩の辺りだ」


「岩の上にいるという事ですか」


「あぁそうだ。いつもではないがな」


俺は少し嫌な予感がした。


村長に礼を言い、俺は森の周りを遠くから確認する。

岩は村と街を結ぶ道を見下ろす位置にあった。


周りにゴブリンがいないことを確認し、大きな岩に上った。

視界を確認する。

驚いた。

ここからだと、街の様子も、村の様子もよく見える。

もしかして……、

ゴブリンが村や町の襲撃をたくらんでいる?


そんな疑問が頭をよぎった。


俺は岩の周辺を確認する。

なにかの動物の骨が散乱していた。


これがゴブリンが食べたものだとすると、

ゴブリンにとって、重要な地点なのかもしれない。


俺は岩の上から、森の中を見る。


森の中央にゴブリンの群れがいる。

十匹いや、もっと多い。

少なくとも二十匹はいる。


ゴブリンは、ずっと固まって行動しているわけではない。

個体個体で、別行動している事もわかった。


俺は、

岩の上でこれからの行動を考える。


「おい。こん棒を持て。なんか嫌な予感がする」

ミルが言った。


俺はこん棒を片手に、周りを見渡す。

高い位置だから、基本的には有利だ。

ふと下を覗き込むと、一匹のゴブリンが岩を登ってきている。

想像より小さい。

こちらには気が付いていないようだ。

どうする。

殴るしかなさそうだ。


俺は息を潜め、

ゴブリンが登り切る瞬間を待った。

(どす)

柔らかな感触と、何かが砕けるような感触が手に伝わる。


(うぅ)

(ばさっ)

ゴブリンが岩の下に落ちる音がした。


やばい。勘づかれるかもしれない。

俺はとっさに身を屈める。

息を潜め、ゴブリンが落ちた方向を見る。

誰もいない。

逃げたか。

いや違う。

別の岩の間に挟まっていた。


俺は森の中を見る。

森のゴブリンたちの反応は変わっていない。

五分ほど経過。

俺は静かに降り、ゴブリンの耳を切断する。

気持ち悪い感覚だ。

 

俺は耳を回収し、

村に戻った。


ふと見ると村長が様子をうかがいに、村の入り口の辺りまで見に来ていた。


「どうも」

俺は愛想笑いをする。


「あぁ。その様子は……。怖かったか」


「はい。怖い……、というのもありますが、気味が悪い」


「あぁそうだろうな。で、やったか?」


「えぇ一匹」

俺はゴブリンの耳を見せる。


「たしかに。ちょっと待て。袋をやるから」

村長は家に走る。


俺はとぼとぼと村の中を歩く。


「ようさっきの兄ちゃん。やったか?」

先ほどの村人が笑いかける。


「一匹ですが」


「上等上等。ほら水汲んでやるから、手を洗いな」


村人は井戸で水を汲み、俺の目の前に出した。

俺は手を出した。

(ざー)

冷たい水が、手にかかる。

その瞬間、意識がハッキリとした。

「冷たい」


「そうだろ。

俺もな。兄ちゃんみたいに魂の抜けたような時は、井戸水で手を洗うんだ。

すると意識が戻る」


「本当ですね。正気に戻った気がします」


そう言うと、村人は笑った。


「いたいた。これ袋だ。

井戸水で耳を少し洗って、この袋に入れろ。

そうしたら臭いがマシだから」

村長は小さな麻袋を渡してくれた。


「ありがとうございます」


「今日はもう帰るんだろ。一匹倒したし」


「はい。そのつもりです。あぁこん棒が早速役に立ちました。なかったらヤバかったです」


「そうか。それは良かった。そのこん棒はお前にやる。使ってくれ」


「ありがとうございます」


「あと、このパンは帰りにでも食ってくれ」

そう言い、村長はパンを持たせてくれた。


俺は、ゴブリンの耳と、パンを持ち、街に戻る。


パンとゴブリンの耳。パンの耳。おぉパンの耳だ。

俺は訳の分からない事を思いながら、街に戻る。

ギルドに戻り、

受付嬢に耳を渡した。


「本当に一匹だけでしたね」

受付嬢は少し驚いた表情をした。


「いや。でも怖かったです。岩の上に上っていたら、ゴブリンも上ってきて」


「それでどうしたんですか?」


「こん棒を村長からもらっていたので、ギリギリまで上がってくるのを待ち、それで殴りました。こん棒がなかったら死んでたかもしれません」


「蹴り落としたらよかったのでは?」


「は?」


「蹴ったら、落ちるし、落ちたら、動けなくなるでしょ」


「なるほど。そんな手もあるのか。うん……確かに」


「まぁ初めてなら、怖いですもんね。慣れですから、がんばってくださいね」


「はい。がんばります」


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