投石
ホークはその日のうちに、値段を変える準備を終わらせた。
明日から0.05Gに変更だ。
その様子を古道具屋の爺さんも興味津々で見ていた。
帰り際、
「なぁ兄ちゃん。うちの古道具屋も同じ形にできんじゃろか?」
爺さんが聞いてきた。
「どうでしょうね。どんなものを扱ってるんですか?」
「色々なんじゃよ」
「値段の高いものと、安いものが混ざるみたいな感じですか?」
「難しいじゃろな」
「そうですね。例えば安いものだけ、0.05G均一にするとかかな」
「ほう。なるほどな。ワシの店も見に来てくれんか?」
「仕事があるんで」
「仕事が終わってからでも構わん」
「では、行ける時に覗きます」
「この店でまた一緒になるだろうしな」
「そうですね」
「場所はな。ここの十軒隣じゃ。じゃあ頼むぞ」
「はい」
俺は、
蜂部屋に戻る。
街灯はまったくなく、
窓から漏れる光を頼りに、ぽつぽつと歩く。
蜂部屋に戻ると、半数くらいの部屋は埋まっていた。
洗面器にお湯を貰い、皆と同じように体を拭く。
風呂がないのは、少々きついが、他の人も風呂に入らないなら、
大して気にはならない。
身体はさっぱりとした。
俺は自分の部屋に入る。
部屋は圧迫感があると思ったが、意外と心地よかった。
気が付くと、俺は完全に寝ていた。
朝、
蜂部屋を出ると、冒険者ギルドではパンが販売されていた。
0.03Gでハーブ水付き、俺はすぐに購入する。
昨日と同じ仕事を受ける。
草刈りの仕事だ。
草刈りの仕事では、途中でレモンとオレンジの中間のような果物を貰った。
あまり甘くはなく、かといって酸っぱさが強いわけでもない。
レモンやオレンジの原種と言われれば、納得するだろうなと思う味だった。
ただ、食べると疲れがスーッと抜ける。
草刈りをしていると、
途中で、怪しげな小さな置物が見つかる。
持っていくと、驚かれた。
「落ちているものを拾ったら、それはお前のもんだ。くれるってのなら貰うが、どうする?」
と笑われた。
「じゃあ、自分のモノにしておきます」
と言うと、
「それが良い。お前正直だから気に入った。もう一個やろう」
そう言い、先ほどと同じ果物を貰った。
仕事が終わり、書類にサインをしてもらい、冒険者ギルドに帰る。
「仕事終わりました。これ今日草刈りの途中で拾ったものです」
落ちていた置物を渡す。
受付嬢は、近くの鑑定士にモノを見せ、話し込む。
「すみません。これは買取不可能です」
「そうなのですか。じゃあ、これはどう使ってもいいのですか?」
「もちろんです。ご自由に」
「わかりました」
「それでは、今日の報酬です」
俺は報酬を受け取った。
すぐに、蜂部屋の料金を支払い、場所をキープする。
俺はすぐに古道具屋に向かう。
「どうも」
「おお。来てくれたか。ここがワシの店じゃ。ゆっくりしていってくれ。ハーブ水でも入れるよ」
「ありがとうございます」
店は雑然としていた。
「どうだ。できそうか?」
「まずは値段別に、わけたほうがいいかもしれませんね」
「なるほどな」
「なぜ均一料金に惹かれたのですか?」
「孫がおってな。店を出させてやりたいんじゃよ」
「あぁそういう事なのですか。こことは別に?」
「そうじゃ。隣の町にな。孫も商業ギルドに入っておるから、計算はできるんじゃが、孫は人見知りで、焦ると計算ができなくなるんじゃ」
「そうですか……、じゃあお孫さんの所は、こことは扱う商品を別にして、0.05Gで販売できる商品に限定してはいかがですか?」
「なるほどな。新しく店を構えるなら、それでもいいわけか。わかった。それで行くよ」
「俺からも相談があるんですけど、良いですか?」
「あぁもちろん」
「これ何かわかります?」
俺は先ほど拾った置物を見せた。
「うん。これは……、呪いの人形だな。これはどうした?」
「さっき草刈りの仕事の時に拾ったんですよ。
そこの人に渡そうとしたら、拾ったものは、その人のものと言われて、持ち帰り、冒険者ギルドでも引き取って貰えなかったんですよ」
「そりゃ、そうじゃろな。誰だってそんなものは、引き取りたくないわ」
爺さんは笑った。
「呪いって何が起こるんですか?
徐々に体が蝕まれるとか……」
「どうだろうな。多分ホークが詳しいぞ。奴の部族の呪いの人形だからな」
「わかりました。じゃあ」
俺は、
ホークの店に向かう。
店の前には0.05Gと大きく書かれた看板があり、
人であふれていた。
俺はカウンターに座る。
「おぉ。セル昨日はありがとうな。お陰で急に繁盛しだした」
ホークはバタバタと動いている。
置物の事は聞けなさそうだ。
俺は注文をし、カウンターでゆっくりと食事をとった。
しばらくして、ホークがやってきた。
「魚も肉もスープもパンも全部売り切れた。残りはエールだけだ」
少し疲れているようだ。
「余計なことしちゃいました」
「いやいや。過去最高の売上だ。ありがとう」
「ホークさん。こんな時に、悪いのですが、これなにかわかります?」
俺は呪いの人形を見せる。
「うん?これは……、お金の守り神だな」
「えっ。そうなんですか?呪いの人形とかって聞いたのですけど」
「あぁ、支配者ってのは、土着の民族の神は全部邪悪なものってしたがるんだよ」
「じゃあ。これはお金のお守りみたいなものですか?」
「あぁ、そうだ。そうだ。しかも、これ結構古いぞ。少なくとも百年以上は前のものだ」
「どうしたら良いでしょうか?」
「特に何もする必要はない。持っとけばいいんじゃねぇか?」
「欲しいとかないですか?」
「そこまでお金に執着してないからな。お前がもっとけ。それよりこれ投石器だ」
革でできた道具を手渡される。
「これどう使うのですか?」
「これはな。ここに石を入れて、こう投げるんだ」
身振り手振りをする。
「ここで出来ますか?」
「人の頭にでも当たったら、まず即死だぞ」
「そんなに強力なのですか?」
「ちょっと待ってろ」
ホークは、店の裏から獣の骸骨を持ってきた。
「これはな。投石で頭を砕いた猪の頭蓋骨だ」
頭蓋骨に穴が開いている。
「こんなに強力なんですね」
「そうだ。この投石器を使えば、遠くまで飛ぶし、威力も増す。女子供でも相手に致命傷を与えることができる」




