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ホーク食堂

食堂にやってきた。

石造りのそこそこ大きな店で、

店の前には、

動物の角が沢山ぶら下がっている。

中からいい匂いと笑い声が聞こえる。

繁盛してそうだ。


(カラン)

ドアを開ける。


「いらっしゃい」

威勢のいい声が聞こえる。


席数は二十席ほどで、カウンターもある。


「よう! カウンターで良いか?」

店主らしき男が言った。


俺は頷き、カウンターに座った。


「兄ちゃん。初めてかな?」


「はい。冒険者ギルドで聞いてきました」


「そうか、そうか、新人冒険者って事か」


「そうです」


「俺はホーク。ここの店主だ」


「セルです」


「それで……、何を食う?」


「何があるんですか?」


「今日はな。鹿肉と魚だな」


「今日はって事は、日によって変わるんですか?」


「そりゃもちろんだ。狩りと漁に行って、何が獲れるかによるからな」


「では鹿肉で」


「煮込んだのと焼いたのがある」


「それはおいくらですか?」


「煮込んだのが0.08G、焼いたのが0.06Gだ」


「じゃあ焼いたので」


「あいよ」


ホークは肉を焼きだす。

美味そうな匂いがする。


「ほかに何かありますか?」


「エールにパンやスープだな。干し肉とかもあるぞ」


「それはおいくらですか?」


「エールが0.04G、スープが0.02G、パンが0.03G」


「じゃあ、スープとパンも」


「あいよ」

ホークは、スープとパンを皿に取り、渡す。


「肉はもうすぐ焼けるから」


「はい」


俺はパンをちぎる。

黒く固いパンだ。

スープを一口飲む。

薄い味付けで、中にはカブのような野菜が入っている。


新鮮だが、塩分は少ないようだ。

肉体労働者には、塩分が足りないのでは?

そう思った。


俺は心の中でミルに尋ねる。

「もしかして、塩って高いのか?」


「そりゃ塩は高いぞ。海も遠いからな」


なるほど、じゃあ……。

ここで塩があるかと聞くのは、まずそうだな。


「はい。お待ち」

目の前に肉が出された。

200gはあろうかと思われる肉の塊。


「すごいな」

俺は思わず、声を漏らす。


「そうだろ。うちの自慢だ。今朝獲った新鮮な鹿だ」


「はい。いただきます」


俺は一口食う。

なんとも野性味のある味。


「なんか、野生に帰るみたいな味ですね」


「はっはははっ、セル、お前、面白いこと言うな」

ホークは笑う。


店の人に、いきなり名前で呼ばれたのは初めてだ。

でも、悪い気はしない。


「ホークさんが狩りをしたんですか?」


「そうだ。狩りもするし、漁もするし、料理もする」


「すごいですね。全部をするなんて」


「まぁうちはな。非公認だからな。全部自分らでやらないと、食っていけねぇんだわ」


しまった。ちょっとマズい事を聞いたか。


「ホーク、勘定頼むわ」

他の客から、声がかかる。


「えっと、エールが5杯に、焼いた肉が3つ、パンが2つに……。えっと、いくらだっけ」

ホークは慌てている。


「おいおい。あの計算得意なねぇちゃんは、いねぇのかよ」

客はからかっている。


「風邪ひいて寝込んでんだよ。ちょっと計算するから、待ってくれよ」

ホークは指を折り、計算している。


「0.42Gですよ」

俺は言った。


食堂はシーンとする。


「おいおい。兄ちゃん。いい加減なことを言うなよ。賢い振りをしたいのか?」

勘定を頼んだ客は言う。


なんだ? こいつら。

計算もできないのか。


「まぁ待ちなさい」

カウンターの隅で、一人食事をしていた老人が声をかける。


「古道具屋の爺さん。あんたなら計算できるよな。計算してくれないか」

ホークは言った。


「その兄ちゃんの計算は正しいよ。ワシも計算したからな」


「そうか、じゃあ0.42Gだ」


「あぁ、わかったよ」

金を払い、客は帰っていった。


「セル。ありがとうな。すまねぇが、今日いる間だけでもいいから、計算を手伝ってくれねぇか」

ホークは言った。


「別に良いですけど、こういう事、よくあるんですか?」


「計算が得意な店員がいる時はいいんだが、最近そいつの母親が身体を弱らせていてな。休みがちなんだ」


「それはお困りですね」


「すまねぇな。食事が台無しだろ」


「いえいえ。お困りなら、いっその事、計算しなくてもいいようにしてはいかがですか?」


「計算しない? どういう事だ」


「全部同じ値段にするのですよ。0.05Gとか」


「バカ言え。煮込んだのと、焼いたのを同じ値段にできるか。材料代もかかるんだぞ」


「サイズを変えれば大丈夫です」


「サイズを変える?」


「えぇ。煮込んだのも、焼いたのも0.05Gで売ってもいいサイズに変えるんですよ」


「そうか。サイズを少し小さくするという事か……。

なるほど、妙案かもな。

じゃあパンやスープはどうする?」


「パンとスープのセットで0.05Gにする」


「なるほどな。でもな。あんまり金のない奴も来る」


「その人は何を食べますか?」


「パンだけだ」


「じゃあ、パンだけの人は0.02Gをカウンターで払うようにする」


「なるほどな。色々食いたい奴は?」


「だったら、パンとスープと肉を0.05Gで食べられるセットにする」


「エールはどうする? 0.04Gだぞ」


「エールは少し量を増やします」


「お前、頭良いな」


「ありがとうございます」


「やってみたいんだが、それでも計算がいるだろう」


「もちろんいります。

じゃあ私が表を作りましょう。

50個までの注文の料金がわかるものを」


「いくらだ?」


「何がですか?」


「謝礼だよ。いくら払えばいい?」


「いや。別にいらないですよ」


「それはダメだ。じゃあ何かやろう。何が欲しい?」


「別にいらないですよ」


「お前、戦いはできるか?」


「苦手ですね」


「じゃあ、投石器と投石を教えてやろう。

お前は俺に楽に稼ぐ方法を教えてくれた。

投石は狩りに役立つ。討伐クエストでも使えるだろう。

これがあれば、お前は稼ぎやすい。どうだ」


「じゃあ、それで」


「よし、決定だ」


それから、俺は値段の計算を手伝い、計算表を書いた。

ホークは0.05G分に料理の量を調整し、常連客に見せて回った。

計算が苦手な客がほとんどで、提案を喜んだ。


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