宝の山
俺はしつこく残党狩りをしていた。
森の表面に見えるゴブリンはおらず、
こん棒を持ち、慎重に森の奥深くに進んでいく。
しかし、見つからない。
二時間ほど探索をしていると、
(がさ)
音がした。
俺は音の方向を確認する。
ゴブリンだ。
走って逃げていく。
俺は周りに気を配りながら、
追いかける。
しばらくすると、ゴブリンは洞窟のような場所に入っていった。
辺りに骨が散乱している。
動物の骨。
そして人骨らしき骨まで見えた。
ここが巣穴か。
俺はこん棒を持ち、中に入る。
ゴブリンの姿はない。
洞窟の奥から、石を踏む音だけが遠ざかっていった。
そこには、ピンクと白の結晶のようなものがあった。
「水晶か?」
俺はつぶやいた。
「こん棒で少し叩いてみろ」
ミルは言った。
俺が結晶を叩くと、あっけなく砕けた。
「やはりな。少し舐めてくれ」
「舐める……、危なくないか?」
「最悪、水を飲んで、口をゆすげば大丈夫だ」
俺はかけらを取り、
洞窟から十分に距離を取り、
水で表面の汚れを洗い、ほんの少しだけ舌先につけた。
「しょっぱい」
「やはりな。あれは岩塩だな」
「岩塩?」
「おそらくな。ここは岩塩の取れる洞窟だ。いくつか結晶を取って、ギルドに報告しろ」
「なんでだ?」
「塩は貴重だ。
岩塩の取れる場所は、領主の管理下に入る。
そして見つけたものには、売上の3%が入る仕組みになっている」
「中に入って、多いかどうか調べなくてもいいのか?」
「ゴブリンがいるだろう。お前は近接戦は苦手だ。それに岩塩が取れる場所かどうか、開発するに値するかは、領主の調査団が決める」
「わかった」
俺はいくつか結晶を取り、急ぎギルドに戻った。
「お疲れ様です。今日はどうでした?」
「ゴブリンの巣穴らしきところで、これを見つけました。鑑定を」
受付嬢は目を細める。
「これはまさか……」
「はい。舐めたらしょっぱかったので……」
「しばらくお待ちください」
受付嬢は、鑑定士とギルドマスターを呼び、話をしはじめた。
ギルドマスターがやってくる。
「広さはわかるか?」
「いえ。入口辺りのを持ってきました。ゴブリンが逃げ込み、姿が見えなくなったので、ある程度奥は深いかなとは思います」
「洞窟内にソロで入るのは、危険だしな。
賢い判断だ。
よし、領主様に報告して、調査を始める。明日にも調査団を派遣するので、同行してくれるか?」
「はい」
「知ってるとは思うが、岩塩の取れる場所を見つけた場合は、その売上の3%が見つけた者に入る」
「わかりました。それも預けられますよね」
「あぁ、もちろんだ」
ギルドマスターは嬉しそうに笑った。
「それと、入口近くに人骨らしきものもありました」
「人骨か……、それは物騒だな。わかった、十分に警戒しよう」
「あとな。これは鉱山そのものをやるという意味じゃない。
発見者としての権利料だ。
採掘が続く限り、売上の3%が支払われる」
「わかりました」
……
次の日、
俺は調査団に加わり、森へと向かった。
護衛は領主の騎士団が行う事となった。
「君がセル君か。俺はキャラメル。騎士団の副団長だ。今日は俺達が護衛をする」
「よろしくお願いします」
「入口付近に、人骨らしきものがあって」
「聞いておる。それと貴殿だな。例の指輪を見つけたのは」
「はい」
「ついでに、発見場所も案内してくれないか?」
「わかりました。洞窟に行くまでにあるので、先に案内します」
俺は指輪の発見場所まで案内した。
「こちらです」
「では周辺を捜索せよ」
副団長の一声で、五名の騎士が一斉に捜索を始める。
三十分ほど捜索したのち、
「やめろ」
声がかかる。
「結果は……」
騎士達は首を横に振った。
「そうか……、ではセル殿、洞窟に向かおう」
「はい」
俺たちは洞窟に向かう。
今日はゴブリンを見かけない。
「副団長。洞窟内にはゴブリンが潜伏している可能性があります。くれぐれもお気をつけて」
「あぁ、わかった」
洞窟に辿り着いた。
外に見張りとして騎士を二人置き、
副団長と残りのメンバーは、洞窟内に向かう。
「おぉ。これは良質な塩鉱山だ」
「たしかに、質も良さそうだ」
「もともと採掘していた場所なのか?」
「しかし、そんな事聞いたことがない」
「副団長、来てください」
騎士の声が聞こえる。
俺は副団長についていく。
そこには、囚われた数名の女性の姿があった。
副団長が息を呑んだ。
「レーラ様……」
「副団長。助けに来てくださったのですね」
「よくぞ御無事で。すぐに出しますので」
女性たちは、やつれていた。
立ち上がろうとした一人の女性が、足に力が入らず膝をついた。
粗末な縄、水桶。
それらが過酷な生活を物語っていた。
騎士たちは水を飲ませ、二人を背負い、残りを支えながら外へ運んだ。
俺は、
何も聞かなかった。
「セル君。この事は内密に」
副団長は言った。
「はい」
副団長は調査団のメンバーと打ち合わせを始めた。
「セル君。いい鉱山だ。さっそく開発を始めるとしよう。君には売上の3%と、指輪を見つけた褒賞として1000G出そう」
指輪を見つけた褒賞に1000G?
高すぎる。
口を閉ざせということかな。
「今回は鉱山が見つかっただけ。そういう事ですね」
副団長は頷いた。
女性たちが洞窟を出た後、
しばらく調査団は洞窟を調査していた。
その後一時間ほどで、洞窟を後にした。
騎士達は、
女性たちの護衛かもしれないと、
入口付近の人骨らしき骨を回収していた。
「ゴブリン討伐の仕事。もう終わっちゃいました」
俺は呟く。
「珍しいな。君、ゴブリン討伐を楽しんでいたのか?」
副団長は不思議そうな顔をする。
「はい。そこそこ。毎日一匹ずつノンビリと討伐するのが、意外と性に合って」
「そうか。ゴブリン退治なら、結構あるぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ。俺からギルドに言っておいてやろう。非公開のもあるんだ」
「場所的にまずいやつですか?」
「そうじゃない。あまりゴブリン討伐が多いとなると、ほら……」
なるほど、治安が悪く感じるってことか……。
「わかりました」
「君……、物分かりがいいな」
「はい。いろいろと経験だけはあるもので」
俺は笑った。




