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いや……、

でも、俺ゴブリン食ってないよな。

食わないと殺生なら、俺は殺生をしていることになる。

しかし、

ゴブリンも食べてはいないが、村を守るという目的がある。

だから、問題はない。


ちょっと待てよ……、

釣りにも食料確保の訓練という目的があればよいのではないか。

ホークに教わるか?


あぁそうだ。

水の中にある大きな岩に、大きめの石をぶつけて、

その衝撃波で魚を気絶させるって方法あったな。


あれテストしてみるってどうだろう。


俺はさっそく試してみる事にした。


俺は手ごろな石を探し、

魚が隠れていそうな岩をめがけて投げつける。


(がん)


成功か?

反応がない。

じーっと観察する。

何も起きない。


別の岩をめがけて投げつける。


(がん)


反応がない。

何も起きない。


(がん)

(がん)

(がん)

(がん)

(がん)

(がん)

(がん)

(がん)


計十回やったが、成果はゼロだった。

魚がいないのか?

そう思ったが、魚はちゃんといるようだ。

では、

なぜ効かないのか?


そもそもが、そんな漁はない。

いや、ショックで魚を気絶させる方法はある。

爆薬を使ったり、電気を使う方法もあるし……。

だとしたら、衝撃波が弱いか……。

俺はこん棒に目が行く。

こん棒で……、

いやこれは護身用の武器だ。


いろいろ考えて、今日は帰る事にした。


それから一週間、毎日残党狩りをしながら、岩に石をぶつける漁を試した。

そして、六十八回目にして、ようやく魚が浮かび上がった。


「うぉー」

雄叫びをあげると、

魚はびくんとなり、逃げて行った。


それからも、ゴブリンの残党狩りの傍ら、石をぶつける漁を行ったが、

成功するのは、十回やって、一回程度だった。


「十回で一回くらいか……」

俺は呟く。


「別にいいやろ。食料が必要になる事なんて、そんなに起きないし、狩りするより、ずいぶん楽やで」

ミルは言った。


「それもそうだな」


俺は、

再びやる事を考えだした。

サラリーマン時代は、合理化合理化で、どんどん色々なものを合理化していった。

合理化で仕事がなくなると、さらに仕事がやってきた。

俺は合理化でその仕事も減らした。

すると、また仕事がやってきた。


俺は、

賽の河原で、子供が石を積むのを、鬼が崩すという話を思い出す。

サラリーマンの仕事は、まさにこれだ。

仕事を減らし、楽になると思ったら、また仕事が増える。

その永遠の繰り返し。

地獄でも、人間の世界でも、構図は同じなのだと、そう思えたのだ。

そう考えると、賽の河原の話も、別に残酷でもなんでもない。

当たり前の世界だ。


俺はギルドに戻ることにする。


ギルドでは、なにか人だかりができていた。


「これ、今日のゴブリンの耳です」


「確かに……、こちら、報酬の1Gです」


「じゃあ、これを預かってください」

俺は昨日余った残りの0.7Gを受付嬢に手渡す。


「0.7Gですね」


「なんの騒ぎですか?」


「今日はレベル判定の日なのですよ」


「レベル判定?」


「はい。

冒険者はクエスト受注の際に冒険者としての実績以外にも、

様々な能力を問われる場面があります。

その能力を対外的に示すのが、このレベル判定なのです」


なるほど。

これはやってみるのも良さそうだな。


「それはどうするんですか?」


「いくつか項目があって、合計で0.5Gかかります。

体力は、ここから街の外に見える山の頂上の木にリボンを結び、

帰って来るまでの時間を計ります」


ちょっと待て。

それ単なる体力測定では?


「力は、あそこにある丸石をどの重さまで持てるかで判定します」


「攻撃力は、盾を構えたギルドマスターへ攻撃してもらい、

受けた衝撃によって判定します」


完全に体力測定だよな。


「ギルドマスターの体調によって、結果が変わりませんか?」


「多少は変わりますね」

受付嬢は苦笑いをした。

「とりあえず、そんな感じです。受けてみますか?」


「今みたいに、ゴブリン討伐を受け続けるなら、レベル判定は必要ですか?」


「いえ。別にいらないですね。どちらかというと、見栄やステータス的な部分があるので」


「なるほど。じゃあ、今回はやめておきます」


「そうおっしゃるような気がしてました」


「あぁそうだ。この指輪を鑑定してもらえますか?」


俺は金の指輪を手渡す。


「こ、これは?」


「ゴブリンが持っていた物のようです」


「しばらくお待ちください」


鑑定士と、受付嬢が話している。

鑑定士はしきりにこちらを見ている。

何かあるのか?


鑑定士と受付嬢がやってきた。

「こちらを、ゴブリンが持っていたと……」

鑑定士は言った。


「はい。まさか呪いの指輪とかですか?」


「いや。そうではありません。これは、かなり身分の高い方の持ち物なのです」


「そんなものを、なぜゴブリンが?」


「わかりません」


「報酬はどうなりますか?」


「それが、今の段階では何とも言えないのです」


「わかりました。ではお任せします」


「申し訳ないですが、モノがモノなだけに、

発見の記録自体を公にできない可能性があります」


「もしかして、俺消されちゃったり?」


「さすがに、それはないですよ」

受付嬢は笑った。


「最悪。お礼すらもらえない系ってことですか?」


「はい。それは覚悟しておいてください」


「わかりました」


指輪を黙って売るよりは安全だ。

それが身分の高い者の持ち物なら、持っている方が危険だろう。


お礼がないだけで済むなら、それが一番安いかもしれない。


俺は冒険者ギルドで、レベル判定する冒険者達を眺めていた。

三人や四人、五人くらいでパーティを組み、

いろんな仕事を受注していた。


レベル判定で一喜一憂して、

なんだか懐かしい気分になった。

サラリーマン時代や学生時代、

いろいろテストをしたものだ。

その多くが、半ば強制されてやったものなのに、

ここでは、皆が一喜一憂している。

冒険者というのは、向上心が強いのだろうか?

いや違うか……。

受注するための強制であればなおさら、

一喜一憂するのも当然。


あれは喜んでやっているというより、

やらざるを得ないからやっているのだろう。

そんな勝手な解釈をしていた。


だとすると、

その基準から、意図的に外れる俺は、異端でしかないのだろう。


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