表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ魔物たちの気ままな楽園づくり 〜勇者パーティーを追放された従魔たちを保護したら、神話級に覚醒しました〜  作者: 比津磁界


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/30

第3話 ハシ姉の実力。

ハシ姉の、真の戦闘力が明らかになります。

ガサガサッ、と下草を踏み荒らす音が、幾重にも重なって迫ってくる。


漂うのは、ひどく淀んだ血の匂いと、泥にまみれた獣臭。

茂みを乱暴に掻き分けて姿を現したのは、先ほど俺が解体した緑色の小鬼――ゴブリンの群れだった。

ざっと見積もって六体。

黄ばんだ牙からドロリと粘液を垂らし、丸太のような棍棒や粗末な石突きを括った弓を構えている。


腰に差した粗悪な鉄剣を、鯉口を切るようにして引き抜く。

ザラついた柄の感触。

小中高と道場で体に染み付いた剣道の基本動作が、自然と右半身を前に出し、すり足で重心を落とさせた。


だが、俺が踏み込むより早く。


「……ツムグ、後ろに下がってなさい」


低く、ひんやりとした声。

巨大な影が、俺を庇うようにスッと前へ滑り出た。

勇者が「不良品」と吐き捨てた巨鳥、ハシ姉だ。


彼女は微動だにしない。

ただ、その冷たく無機質な黄色い瞳で、よだれを撒き散らしながら迫る六体のゴブリンをじっと見据えている。


『キチィィィッ!』


耳障りな金切声を上げ、先頭のゴブリンが跳躍した。

丸太の棍棒が振り下ろされる。

間合いに入った、その瞬間。


ふわり、と。

ハシ姉の巨体を、陽炎のような『紫色のオーラ』が包み込んだ。


「……っ」


俺の右目が、チリッと熱を帯びる。

視界の中で、ハシ姉から立ち昇る不可思議なエネルギーの粒子が、彼女の長大で分厚い嘴へと一気に収束していくのがはっきりと見えた。


そして、彼女がわずかに嘴を開いた直後。


カタカタカタカタカタカタカタッ!!!!!


空気が、爆ぜた。


鼓膜を直接ハンマーで殴られたかのような、甲高く、そして異常なほど重圧な連撃音。

ハシビロコウ特有の威嚇行動である「クラッタリング」。

だが、ハシ姉の放ったそれは、単なる威嚇の音ではなかった。


甲高い音の連撃に同調するように、嘴に圧縮されていた紫色の光が、巨大な『音波の波紋』となって扇状に放射されたのだ。


ビリビリと大気が震え、周囲の樹木の葉が一斉に千切れて舞い散る。

紫色の音波を真正面から浴びたゴブリンたちの動きが、空中で完全に停止した。


『ギャ、ア……!?』


悲鳴すらまともに上げられない。

広範囲に撒き散らされた未知のエネルギーは、一瞬にして群れ全員の鼓膜を破壊し、三半規管を完全に狂わせたらしい。

平衡感覚を失ったゴブリンたちは、白目を剥き、口から泡を吹きながらバタバタと地面に倒れ伏していく。


瞬きする間の出来事。

血の一滴も流させることなく、圧倒的な暴力で群れを制圧してしまった。


「……すげえ」


思わず感嘆の声が漏れる。

これが、勇者がゴミだと捨てた「第3段階」の力。動かないのは欠点ではない。動かずとも敵を無力化できる、極めて完成された待ち伏せのワザだ。


ハシ姉はゆっくりと俺を振り返り、長い嘴を器用に傾けた。


「どう? アタシの美技に惚れたかしら?」

「ああ。凄かった。助かったよ、ハシ姉」


素直に称賛を口にすると、ハシ姉はバサリと一度だけ羽を揺らした。


「あらやだ……」


カタカタ、と今度は小さく、どこか照れ隠しのような音を鳴らす。

普段、勇者たちから蔑まれてばかりで、褒められ慣れていないのだろう。


「でも、全滅させたわけじゃないわよ」


ハシ姉が視線を落とす。

地面では、六体のゴブリンたちが痙攣しながら、かろうじて息をしている状態だった。


「ちゃんと手加減して、ギリギリの瀕死状態に留めておいてあげたわ。……さあ、ツムグ。トドメはアンタに譲ってあげる」

「俺に?」

「ええ。この理不尽な世界で生きていくなら、さっさとレベルを上げなさいな」


その言葉には、オネェ言葉の奥に隠しきれない、面倒見の良い姉御肌――どこか母性のような温かさが滲んでいた。

俺に「命を奪う覚悟」と「経験値」を積ませるための、彼女なりの不器用な気遣いだ。


「……分かった。ありがたく譲ってもらう」


剣を握り直し、倒れたゴブリンたちの前に立つ。

右手と左手の絞り。刃筋を立て、抵抗のなくなった緑色の胸元へ、確実に切っ先を沈めていく。


一体、また一体と息の根を止めるたび。

柄を握る掌から、チリチリとした奇妙な熱が血管を伝って流れ込んでくる感覚があった。

これが「経験値を獲得する」という現象なのだろう。


六体すべての処理を終え、魔石を抉り出す。

先ほどの一つと合わせ、計七つの魔石。

手のひらで転がすと、ジャラリと小気味良い音が鳴った。


「これだけあれば、生活資金にはなるのかな。まずは、雨風を凌げる住む場所を探したいところだが」


血に塗れた手を草で拭いながら、俺は今後の計画を口にする。


「それなら、ここから歩いて行ける街まで案内してあげるわ! ギルドでアンタのステータスも見なきゃいけないしね!」

「助かる。じゃあ、行くか」

「ええ! さぁさぁ、行くわよツムグ! アタシの美貌を街の連中に見せつける時が来たわ!」


巨体を揺らし、ハシ姉が先陣を切って歩き出す。


「ワン・ツー! ワン・ツー!」


大きく羽を広げ、まるでランウェイを歩くモデルのように体をくねらせながら。

ルンルンと、見事なまでに陽気なステップ――スキップを踏み始めた。


『待ち伏せ特化の生態、速攻で崩壊してんじゃねえか!!』


本日最大級のツッコミが、俺の心の中で炸裂する。

自分の美貌がどうのこうのと騒ぎ立て、結局一番はしゃいでいるのはどこのどいつだ。


……とはいえ。

あの重苦しい身の上話をズルズルと引きずられるよりは、よっぽどマシか。


「おい、あんまり離れるなよ」

「アンタが遅いのよ! ほら、テンション上げてかないと! 」


呆れ顔の俺は、泥だらけのブーツを引きずりながら。

オネェ全開でスキップする巨大鳥の背中を追って、のどかな異世界の街へと続く道を歩き出した。

第3話、最後までお読みいただきありがとうございます!


クラッタリングによる範囲スタン攻撃。ハシ姉、実はめちゃくちゃ強くて面倒見の良い鳥でした。

続きが気になる!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや下の【☆☆☆☆☆】で応援をいただけますと嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ