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ハズレ魔物たちの気ままな楽園づくり 〜勇者パーティーを追放された従魔たちを保護したら、神話級に覚醒しました〜  作者: 比津磁界


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第16話 ギルド帰還と驚愕の戦果。

規格外の戦果と新しい相棒を連れて、ツムグはギルドへ帰還します。

――同時刻。

夕闇に包まれ始めたファルデルの街。

冒険者ギルドの重厚な木の扉を押し開けると、むせ返るような酒と肉の匂い、そして荒くれ者たちの喧騒が鼓膜を打った。


「ただいま戻りました」

「あっ、ツムグ様! 無事でお戻りになってよかっ……って、ええええっ!?」


カウンターへ向かうと、笑顔で立ち上がったミリアさんが、俺の背後を見て綺麗に目を見開いた。


「ツ、ツムグ様、その後ろに浮いている派手な魔物は……!?」

「フッ。人間どもの砦か。淀んだ空気が満ちているが、まあ悪くはない」


俺の肩の高さでフワフワと空中を泳ぎながら、レオパが短い前足をクロスさせてドヤ顔を決めている。


(……身内の中二病って、人前で見せられるとちょっと恥ずかしいな)


心の中でそっと視線を逸らしつつ、俺はアイテムボックスから袋を取り出してカウンターへ置いた。


「森で拾ったんです。なんか懐かれちゃって」

「ひ、拾った……? こんな大きくて珍しい魔物をですか!?」

「我を拾っただと? 違うな。深淵の魔竜たる我が、特別にこの人間に付いてきてやってるのだ。勘違いするなよ、小娘」


クリクリの愛らしい瞳で、精一杯の凄みを利かせようとしているレオパ。

ミリアさんは完全に困惑した表情で「は、はぁ……深淵の魔竜、様……?」と引きつった笑いを浮かべている。


「ハシ姉の知り合いらしいんで、俺の従魔として登録をお願いできますか? あと、こっちが依頼の薬草です。指定された量は確保しました」

「あ、はい! 確認いたしますね!」


ミリアさんが袋を開け、中身のギザギザとした葉を素早く確認していく。


「素晴らしいです。根も傷ついておらず、最高の状態ですね。これでポーションの在庫も少しは潤います。……ところでツムグ様、森の様子はいかがでしたか? 危険な魔物には……」

「ああ、それなんですが」


俺はアイテムボックスを探り、ゴブリンたちの体内から回収した鈍く光る『魔石』が大量に入った麻袋をドンッ、とカウンターに置いた。


「浅い森で、ゴブリンの群れに遭遇しました」

「えっ」

「ざっと三十体ほど。マッドボアが森を荒らした影響で、住処を追われて人里近くまで降りてきていたみたいです」


ピタリ、と。

俺の言葉に、周囲のテーブルで飲んでいた冒険者たちの喧騒が止まった。


「おいおいマジかよ……。浅い階層で三十体のゴブリンの群れだと?」


ジョッキを持ったガランが、信じられないものを見るような顔でこちらへ近づいてくる。


「初心者がそんな群れに出くわしたら、間違いなく命を落としてるぞ。よく五体満足で帰ってこれたな……って、この魔石の量。まさか、全部お前がやったのか?」

「俺だけじゃありませんよ。この新しい相棒が、凄い土魔法で一網打尽にしてくれたんです。俺はただ、動けなくなったところを斬って回っただけで」

「フハハハッ! 容易いことよ! 我が不可侵なる深淵の霊廟の前には、羽虫の群れなど児戯に等しいわ!」


ドヤ顔で空中でふんぞり返るレオパ。

ガランたち『銀の牙』の面々は、そのポップな黄色い姿と、口から飛び出す仰々しい言葉のギャップに呆気にとられている。


「……そ、そういえば」


静まり返った空気の中、ミリアさんが恐る恐るレオパへ視線を向けた。


「この子の種族名は、なんでしょうか?見たことがない魔物なのですが……」

「種族は『ユーブレファル』らしいです。名前は……」


そこまで言って、俺は少し考え込んだ。

拾ってからここまで、ずっと心の中で『レオパ』と呼んでいたが、それはあくまで俺の前世での通称だ。ずっと一緒に生きていく家族に、種族名をそのままつけるのも味気ない。


「……何か、希望の名前はあるか?」


肩の高さに浮くトカゲに視線を向ける。


「フッ。我に名を与えようというのか。よかろう、ならば我が魂に刻まれし真名……『ダーク・アビス・ドラグーン』とでも呼ぶが――」

「よし、今日からお前の名前は『レオ』だ」

「人の話を聞けぇっ!! せめてダークかアビスを……む?」

「レオ……強そうで、すごくかっこいい名前ですね!」


短い手足をバタつかせて抗議しようとしたレオへ、ミリアさんがぱっと花が咲いたような笑顔を向けた。


「あら、呼びやすくていいじゃない♡ ねっ、レオちゃん?」


ミリアさんのキラキラとした尊敬の眼差しと、ハシ姉の生温かい視線。

空中でピタリと動きを止めたレオは、コホンと一つ、器用に咳払いをした。


「ふ、ふんっ。まあ……そこまで言うのなら、その名で呼ばれるのも悪くはないだろう。特別に許可してやる」


(こいつ、めちゃくちゃチョロいな……)


文句を言いながらもあっさりと受け入れたレオの姿に、俺は思わず肩を揺らした。


「ふふっ……仲が良いんですね。私はミリア、よろしくお願いしますね」

「俺もまだ名乗ってなかったか。俺はツムグだ、よろしくな、レオ」

「ふむ、ミリアにツムグか。」


ミリアさんが、少しだけホッとしたような笑顔を見せる。


「それでは『ユーブレファルのレオちゃん』ですね。ステータス水晶で従魔登録の手続きと、薬草とゴブリン討伐の報酬の計算をいたします。少々お待ちください」


水晶に手をかざす。淡い光の中に、俺のステータスと従魔の情報が浮かび上がった。


「……えっ。ツムグ様、もう『レベル10』に上がってるんですか!?」


ミリアさんが驚きの声を上げ、横から覗き込んだガランも目を剥いた。


「たった半日でレベルが2も……!? おいおい、お前さんどんなペースでゴブリン狩ったんだよ!」

「レオの魔法のおかげですよ」


慣れた手つきで処理を進めていくミリアさんを眺めながら、俺は小さく息を吐いた。


「疲れたわねぇ。早くお部屋に帰って、美味しいお魚が食べたいわ」

「そうだな。約束通り、今日の夕飯は奮発してやるよ」


アイテムボックスの中には、最高の状態で保存されている極上の川魚と、マッドボアの分厚い肉がたっぷりと眠っている。

それを暖炉の火で香ばしく焼き上げる想像をしただけで、腹の虫が盛大に鳴った。

新たな家族のドタバタとしたやり取りと、胃袋を刺激する想像。

今日一日の心地よい疲労感に包まれながら、俺は報酬を受け取るためカウンターに寄りかかった。

第16話お読みいただきありがとうございます!


深淵の魔竜(自称)のレオちゃん、ミリアさんの笑顔の前にあっさりと陥落しました。チョロいです。

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