教会の禁忌
「貴様等は、一体何をやっとるんだ‼」
俺は軍艦を計四隻も沈めてきた、使えない部下達に向かって大声で怒鳴りつける。
「あれが、一隻いくらすると思っている⁉ 貴様らの一生分の給料を支払っても、お釣りがくるぞ! しかも、それほどの被害を出しておきながら海賊達に逃げられただとぉ⁉」
「い、いえ、逃げられたとは……ただ、海龍が現れたせいで撃沈したか確認をする余裕がなく……」
「なら、今すぐ黒海に戻って、船の残骸の一つでも持ってこい!」
俺がそう言うと、まるで蜘蛛の子を散らすように部下達は敬礼して部屋から出て行く。
クソッ! これでは、今まで完璧に保っていた俺の経歴に傷が付くじゃないか!
本当に、俺はロクな部下に恵まれてない! ああ、腹立たしい!
「それもこれも、あの人形姫が海賊達を逃がしたからだ!」
今まで散々目をかけてやったというのに、あの小娘め! 恩を仇で返しおって!
「しかし、海龍だと……? あれが最後に現れたのは数百年前も前だぞ? 最早生きているかも分からん怪物が、何故このタイミングで現れた?」
それだけではない。報告によれば、最近第二海層の海龍ガイアまで現れたと言うではないか。
数百年単位でしか現れない海龍が、こうも連続で姿を現すなんて明らかな異常事態だ。
「何かがおかしい。まさか、本当に……」
俺はそこで頭を振り、危険な思考を中断する。
……これ以上は、不味い。
教会では、思考の中ですらも聖域を犯すことを禁じられている。
もし、今の思考が大元帥にバレたら、それこそ俺の立場が危うくなってしまうじゃないか。
俺は自分の頭にこべり付いて離れない、天海という文字から必死に思考を遠ざけるのだった。




