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ちょっとハードな恋の導入部分☆

 現在。私は迷惑女の血の跡を追って港まで来ていた。


「……はぁ、最悪」


 迷惑女は、すぐに見つかった。

 しかし、そこに居たのは迷惑女であって、すでに迷惑女ではなかった。


「きゃはっ☆ やっほー、お前を殺しに来たよ! ……このクソッたれのゴミ蛇め」


 港の堤防に腰掛けながら、肩口くらいあるピンクの髪をあざとくお団子のようなツインテールにして、これまたあざとい困り眉で庇護欲をそそる姿をした女がそこにいた。

 見た目だけなら、間違いなくナンパ男に声を掛けられるくらいには可愛いのだろう。


 ……しかし、どんなにか弱そうな外見をしていても、周囲全てを徹底的に見下したその瞳がそいつの全てを物語っている。


「良くここまで来られたね。ドゥルジ」

「まあねー。私、超運が良いからー。普段の行いってヤツー?」

「たった数分で人間に寄生して、身体も魂も丸ごと奪い取った奴が良く言う」

「いやいや、私は望みを叶えてあげただけだよ。今すぐこの恐怖から逃れたい! お前をぶっ殺してやりたい! っていう望みをね」

「後半は、お前の願望だろう」

「そんなの、どっちでもいいじゃーん! 結果は変わらないんだし」


 ドゥルジは腰かけていた防波堤から降りると、足元に立て掛けていた禍々しい漆黒の鎌を手に取る。


「【禍火(マガツヒ)】、ここにある全ての船を、灰も残さず燃やし尽くせ」


 その瞬間、鎌からは黒い炎が溶け出すように溢れ出し、瞬く間に港は火の海に飲み込まれる。


 ドゥルジの炎は、一度燃えたら何をしようと対象を焼失させるまでは決して消えない。


 例え、私の槍でもだ。


 無論、刃で切り裂けば炎は消し去れるはずだが、いくら槍で炎を消したところで、結局それは点や線での話。

 対象を面で燃やす炎を全て消し去る事は出来ないし、仮に出来たとしても、その時には船の九割は灰になっている事だろう。


「何て面倒くさいことを……」

「これで、お前は終わりだ」


 黒い炎はまるで光すらも燃やしているように、昼間であるはずの港を暗く染め上げる。

 そんな中で、炎と同じく暗い笑みを浮かべたドゥルジは心底楽しそうだ。


「この女の記憶からは、色々と面白い事が分かったぞ。お前もそれが目当てで、この女を襲ったんだろう?」

「え? ううん、ただその女がお前みたいにちょっかいをかけてきただけ。それより、化けの皮が剥がれてるぞ」

「きゃはっ! なになに? やっぱり、こっちの方が——」

「ちょっと黙ってて」

「あ?」


 ドゥルジはピキッと額に青筋を浮かべながら、常人なら気絶するほどの殺気を私に向けてくるが、今はそれよりも気になる事がある。


「……? 何か、蒼の叫び声が聞こえた気が…………」

「……っ! サズ…………っ‼」

「あっ、ほら、やっぱり——」

「——避けろ、サズ子ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ‼」

「へ?」


 ズゥドゴォォオオオオンッ‼


 ……その瞬間、およそ人体から出ないであろう音が自分の後頭部から鳴り響いたのを、何故か明瞭に覚えている。


 これが人間のいうトラウマというヤツなのかも知れないと気が付いたのは、もう少し後になってからの事だった。


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