【イラっと】白身魚のムニエルと大きな長男
毎日の夕食の献立を考えるのは、正直言って面倒臭い。
娘は気分によって、食べる日と食べない日がある。
それが、同じメニューだとしてもだ。
夫は、あまり好きではないものでも、
「あんまり好きじゃない。」
と言いながらも食べてはくれる。
そんな理由から、
“みんなが美味しく食べられるもの”
よりも
“自分が食べたいもの”
を作るようになっていた。
この日も、どうやら肉より魚派らしい娘のために魚料理にすることにした。
普段なら、タラならクリーム煮にしたり、サケならクリーム煮や味噌煮的なものにしたり…。
とにかくワンパターンになりがちだった。
だから、ちょっとした変化球をと考え、ムニエル風にすることにしたのだ。
白ワインはないから、調理酒と香り付程度のハーブソルト。
そこに少し浸けておいて、片栗粉をまぶす。
フライパンにはバターとニンニク。
ニンニクの良い香りが立ってきたところで、ムニエル用のタラを焼く。
片面にこんがり焼き色がついたところで、裏返して蓋をし、火を弱めて蒸し焼きにする。
最後は風味付にレモン汁を少々。
正直、私個人は好きな味。
夫は多分あまり好きではない味。
娘は未知数。
それをわかっていて、食卓に並べたのだった。
むしろ、夫が苦手なのを理解しているからこそ、
『これくらいの量なら、ユンも食べられるかな?」
と、ハーブソルトは控えめにしたのだ。
娘の方は、この日あまり気が乗らなかったようで、一口食べて
「もういらない。」
となっていた。
ここは想定範囲内。
そんな娘の姿を見てか、夫が不機嫌そうに一言。
「ムニエル、りんが食べると思って作ったんやんな?」
そんなの未知数なのに、わかるわけないでしょ!
こっちは普段から、娘が食べる食べないを意識してしんどいんだよ!
と思いながらも、そこは一旦黙っておく。
代わりに
「食べてくれたらいいなとは思ったよ。」
と、平静を装って言う。
「それならいいけど。」
夫は、まだ物言いたげな不機嫌声。
そこで私も冷却期間が欲しくなり、食後は寝室に引き篭もることにした。
だが、なかなか気持ちは収まらない。
それでも
「さんにんでねるー!」
という娘の要望に、一度は
「ママはイヤ。」
と言いつつも、渋々応えることにした。
間接球のつく薄暗い部屋。
はしゃぐ娘の声。
それを挟む私たちの、どことなくぎこちない空気。
「あのさ。」
とりあえず話をしてみようと、私から口を開く。
「りんが食べたり食べなかったりするのって、今に始まった話やないやん?」
「まぁそうやな。」
「うん。それがわかってて、なんであんなこと言ったん?」
「俺が好きじゃないってわかってて出したから。」
……
…え?
「最近、俺が機嫌悪いのなんとなく気づいてるやろ?」
「まぁ、そうね。」
「それに加えて、Uber配達から帰ってきてソレやったら…。わかるやろ?まぁ全部は言わんけど。」
……
…はい?
えぇっと…?
要するに、
“最近転職に伴う資格の勉強も頑張って、お仕事も頑張ってるボクちんの好きなものを作ってよーぅ。”
ってこと?
“亭主は産んだ覚えのない長男”
とはよく聞くが、これもそれか!!
ツッコミの言葉が喉元まで出かける。
しかし、それを吐き出してしまえば、この言い合いは再燃すること間違いなし。
それは避けたい私。
一歳とはいえ、歳上としての大人ぶりを見せてやろうじゃないの。
その言葉をゴクリと飲み込み、私は口を開く。
「あぁ…。それは、ごめん。明日は鶏肉残ってるからチキン南蛮でも作るね。」
そしてようやく返ってきた
「ごめん。頼むわ。」
声にもようやく落ち着きが戻ったらしい夫。
…本当に、産んだ覚えのない長男…
明日は、キミの大好きなチキン南蛮にしてあげるね。
そうだなぁ。
ちょっとめんどくさいけど、ゆで卵からタルタルソースも作ってあげようね。
市販より手作りが美味しいもんね?
市販より、私が作ったものの方が好きでしょ?
それで満足かい?
ちなみにここ数日、その“資格のお勉強”のために通学していたので
三連休はほぼ完全ワンオペだったわけで。
それまでも、週末は配達に行っていて不在だったから
週末は半日ほどはワンオペだったわけで。
そのことも気にしていたのか、文句を言いながらも
「(りんのこと)任せっきりで悪いけど…。」
とは言ってくれていました。
そこは一応、フォローしとく。
基本的には、家族に対する愛情は深い人ではあるということを。




