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蒼井小話帖  作者: 蒼井 つばさ


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【キュンと】えらいね

以前使っていた、タブレットケース付属のキーボード。

訪問看護ステーションの看護師さんから

「すぐ壊れるよー。」

とは聞いていた。

でも、看護師さんたちと違って、私は持ち歩くわけでもない。

家の、しかもベッドの上で膝に乗せて使用するのだ。

『とは言っても、そんなすぐに壊れることなんてないやろ。』

と、たかを括っていた。

だが!

本当に1年ほどでスペースキーが暴走するようになってしまったので、キーボードを新調したのはつい先日のこと。

後から調べてみると、こういうケース付属のキーボードは本当に壊れやすいらしかった。


この日、週末の娘の午睡の間に、ダイニングでこの“新しい相棒”と執筆していると

「ふぇ……」

と、泣き声が聞こえる。

反射的に身体が動くのは、もう“母親業”としての職業病のようなものだ。


ベッドに腰掛け、手を握りながらゆっくりトントンと背中を叩き落ち着かせる。

しばらくそうしていると、微かな寝息が聞こえてくる。

『よし、寝たな…。』

ダイニングに戻り、執筆の続きに取り掛かる。

すると、10分と経たずに再び

「ふぇ……」

と聞こえてくる。


そんな事を何度か繰り返すと

「ここでおしごとして?」

と、寂しそうな声で言われる。

暗い中でタイピングするのは眼にもよくないし、キーボードも見えないという理由はある。

それと同時に、寝ているのを邪魔しないほうがいいと思っていたこともあり

「ここでしていいの?じゃあ、お荷物持って来るから待っててね。」

と、娘に確認をとってから荷物を全て寝室に移動させ続きに取り掛かる。

だがすぐに、

「もうおきる。」

と娘が言うので、キリの良いところで切り上げる。


娘は、私の新しい相棒に興味津々。

あまり適当に触られて胡椒でもしたら洒落にならない。

そういえば、こういうこともあろうかと、前に使っていたものはまだ捨てずにとってある。


「あ!そうだ。りんたん、ちょっと待っててね。」

そう言って、先日までの相棒を出してきて娘に託す。

「これ、ママはもう使えなくなっちゃったから、りんにあげるよ。」

「りんにあげるのー?」

「うん。そうだよ。」

「えらいねぇ。よしよし。」


大人びた表情をし、小さな手で私の頭を撫でる。

また出た。リトルマザー。


「りんに、あまえたいんでしょ?」


…なんですと?笑


「そう、甘えたいのー。」


そう言って私は、隣に座っているその細い腕に手を回し

小さな、でもとても大きなその肩に頭を預けたのだった。

このあと、両手でパンパンとキーボードを叩き

「かちゃかちゃいっぱーい!」

と、ニコニコ笑顔の娘の姿がありました。


極めつけに最後の一言

「おしごとどーぐ、ないないしとく!」

プチOLか!


以前から、キーボードを指して

「これなにー?」

と訊いてきた娘に

「ママのお仕事道具だよ。」

と言っていたのが、自然と染み付いているようです。


ちなみに“大事なもの”という認識をしているようで、時々出してきて少し触っては

「ここにいれるの!」

と棚に戻している娘なのでした。

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