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蒼井小話帖  作者: 蒼井 つばさ


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【クスッと】せんせい“りん”

とある休日のお昼寝タイム。


前日、普段よりも1時間以上早く眠ってしまったからだろうか。

その日の朝は5:00ごろに起きてきた。

「もうちょっとねんねしてていいんだよ…。」

そんなことを言いながら、微睡(まどろみ)の中にいた私。

対照的に、寝転んではいるものの元気いっぱいな娘。


そんな早朝を過ごし、いつもの起床時間くらいから動き出す。


朝食を終え、身支度も整える。

娘をバギーに乗せて、開店直後のスーパーに買い物へ行く。

「りん、すーぱ、だぁいすき!」

そんな弾むような声も、道中のバギーの中から聞こえてくる。


買い物に行っている間、家のことを夫がやってくれている。

本当ならもっと早くに出かけたかったはずなのだが、頭が上がらない。

「11:00前後にお昼ごはんできたら食べる?」

買い物から帰宅すると、夫に確認をしてから昼食準備をしだした。


食事の用意ができて、夫も降りてきたので娘を呼ぶ。

「りんー。ご飯できたよー!」

「ごはん、たべない。」

…言うと思った。


どうにかこうにか食卓についてもらうのだが、この時点から最早甘えん坊モード突入。

朝早くに起きたからだろう。どうやら既に眠そうだ。

案の定といったところか、娘はほとんど食事には手をつけず

「ごちそうさまする。」

と言い出した。

こんな時はここで無理に食べさせなくてもいい。


「じゃあ、ご馳走様してねんねしよっか。もう眠たいんでしょ?」

「ねむたくないの!」

とろんとした眼でいう娘。

「そう?でも、もうお昼寝の時間だよ?」

「ねむたくなあい!」

今度はポロポロと涙をこぼす。


泣いていてはこちらもメンタルが削られる。

ここは、一旦落ち着いてもらう作戦に出る。

「おいで?」

両腕を広げて、娘がこっちに来るように促す。

抱っこで背中トントンしながら、涙を拭いて頬をツンツンする。

声をあげて笑う娘。


少し落ち着くとこんなことを言い出した。


「えほん、みるー。」


気分転換もありだと判断する私。

「うん。じゃあ、1個だけ読もうか!好きなの持っておいで。」

そう言うとお気に入りの絵本を持って来る。


読み終わった後、お片付けを頼むと…

おや?


私に裏表紙を見せながら

「これ、なにー?」

と指差しをする。

「もぐらさん。」

「これはー?」

「木の枝!」

「これはー?」

「葉っぱ!」

全部を順番に訊いていく勢いだ。


途中、私が答えた後に

「よくいえまちた!」

と、ちょっとお姉さんな表情をみせる。

思いがけずお褒めの言葉をいただいた。

どうやら今の娘は、“保育園の先生”らしい。


「せんせい“りん”だよ」

「りん先生なの?」

「ちがうの!せんせい“りん”なの!」

呼称にも譲れないものがあるらしい。

立派なリトル保育士だ。


ひとしきり、そんなやりとりを楽しんだお昼寝前のひと時。


大人の言動をよく見ているわね。

…りん、恐るべし。

本当は眠たいくせに、そこに抗って遊ぶのは2歳あるある。


普段は

「おいしゃさんになる!」

と言って、“りん先生”と言っていたのだが、今日は保育士。

まさか呼称にまでこだわりを見せるとは!


本人の中では

『先生』とはいえ、医者と保育士とで分けて考えているのかもしれない。


因みにだが、自身の保育園の保育士のことは

「〇〇せんせー」

と、普通に呼んでいる。


…いや、『せんせい“りん”』って

どういうこだわり!?


まだまだ2歳の思考回路の奥深さには、理解が追いつきません。

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