人生いろいろ、非合法の被験者は言うまでもない(前編)
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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「やれ!」
俺の命令を聞いた、ヌイグルミのような羊が鳴く。
『ミィイイイイッ!』
警備室にいた警備員は驚くも、次々に倒れて、寝息を立てる。
「さて……」
次の交代要員が来るまで、時間を稼げた。
このチームの現場責任者のコードで、俺が入れられていた個室を除いて、閉じ込められた奴らがいる部屋のドアを解錠。
次に、再び個室を訪れる。
顔見せをしていたことで、半信半疑という様子だが、しぶしぶ廊下へ出てきた。
閉じこもっていても、人体実験があるだけ。
寝ている警備員を適当に縛り、猿轡も嚙ませたあとで、協力して目立たない場所へ……。
誰もいない警備室で、俺たちは向き合う。
お互いを信用できないため、微妙に距離を空けたまま。
「最初に、提案がある! 俺をリーダーにしてくれ! ここを脱出するまでに内輪揉めをしている暇はない」
沈黙。
最初に反応したのは、長い黒髪の美女。
「いいわ! あなたが、私たちを出してくれた。でも、拒否権は持つわよ? あからさまに捨て駒という命令は嫌」
「構わない。……残りは? 返事がなければ、俺はこの女性と行動するぞ?」
それを聞いた少女が、息を吐いた。
見たところ、小学生ぐらい。
ダークブラウンで、短めのボブ。
ややピンクがかった赤色の瞳で、俺を見上げた。
「I'm counting on you!(頼りにしてる)……よろしくお願いします」
最後に、20代半ばと思われる男が、両手を広げつつの詰問。
「おい? 本当に、外へ出られるんだろうな!?」
「不服なら、元の部屋へ戻るか、お一人でどうぞ……」
冷静に返したことで、男は言葉に詰まる。
「分かった、分かった! 俺じゃ、この状況も無理だ! 頼む!」
降参するように片手を上げて、俺に従う意思を示した。
俺は、ぐるりと見回した後に、リーダーとしての発言。
「この4人で脱出します! 自分の名前を言ってください。フルネームではなく、偽名で構いません。また、年齢の上下に関係なく、敬語を止めましょう。時間がかかります」
3人は、同意した。
「俺は、サイだ」
「マリナよ!」
「メティス」
「ケンイチだ」
さっそく、説明する。
「ここは、レトゥス製薬会社の非合法エリアだ! 警備員から聞いたが、刑務所とよく似たセキュリティ。別のエリアへのゲートを開けられるが、次のエリアではまたチェックされるわけだ……。おそらく、合法エリアとの間に傭兵のような部隊が待機している部屋がある。合法エリアへ出ても、テーザーガンか鎮静剤を打たれて、ここへ連れ戻されるか、始末されるだろう」
黒髪の美女であるマリナは、自分の腕を組んだ。
「ええ! この敷地から自力で脱出しないと……。あなたのプランは?」
「協力し合うと言ったろ? 脱出に役立つような技能は? 俺は、観察特区にいる魔術師だ」
3人は、怪しむような目つきに。
それでも、マリナが発言する。
「私は、VTuberをやってる! 過激なネタとして、この製薬会社を扱い……ご覧の通り」
両手を上げたマリナに、質問する。
「人気があると?」
ここでリスナーに媚びても、意味はない。
それを感じとったのか、マリナが付け加える。
「医学部を中退したの……。だから、一般人より詳しい――」
「もったいねえ! 何で、辞めちまったんだ!?」
ケンイチの指摘に、マリナはうんざりした表情を向けた。
「医学部に入った全員が医者になるわけじゃない。ドロップアウトする人は、学年で数%いる」
「えっと……。何でだ?」
「私は、人間関係でちょっとね? 単位の取得や実習については、問題なかったけど」
それ以上は、聞くな。
責めるような視線に、ケンイチは黙った。
聞いていた俺は、医学部の教授に迫られて拒絶したことでのトラブル? と思う。
せまい業界だろうし、単位を取らせないだけで詰む。
(卒業すら無理と踏んで、早々に見切りをつけたか……)
医学部に入る難易度を考えたら、思い切りが良い。
俺の視線を感じたのか、マリナが言う。
「受験にかかった予備校代と医学部の学費は、バカにならないわ……。医者になってから返済する予定だったから! 一気に稼ごうと、焦りすぎた」
大学受験レベルの化学、生物はあるし、よく使われる薬品の名前や、だいたいの用途、機材について説明できる。
そう付け加えたら、ケンイチが口を開いた。
「借金つながりで、俺の番だ! こいつと違って、ギャンブルの借金だけどな……。パチスロ、競馬とか合法で負けが込んで、ヤーさんの紹介で裏カジノに行ったら、限界まで借りる羽目になったのさ! 役に立つスキルはないな」
事務所でヤーさんに詰められ、この治験に応募することでチャラという話に。
「話が上手すぎるとは、思ったさ! サインして気づいたら、ここの部屋に閉じ込められていた。脱出できたら、ドヤで日雇いをするよ……。もう、こりごりだ」
ケンイチには、注意したほうがいい。
ともあれ、残りは1人だ。
過去作は、こちらです!
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