人生いろいろ、非合法の被験者は言うまでもない(後編)
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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最後の1人。
女子小学生のメティスが、口を開いた。
「状況が状況だけに、正直に言う……。私は、ここにハッキングを仕掛けて逆探知された!」
「ハッカーかよ! すっげーな!? ……あ、すまん」
また口をはさんだケンイチに、メティスが口を閉じて、ジト目を向ける。
近くに立っているマリナが、自分の腕を組んだまま、ため息をついた。
俺は、リーダーとして仕切り直す。
「続けてくれ」
「OK! レトゥス製薬会社の傭兵だかエージェントに捕まって、ここへ放り込まれた。すぐ動くとしたら、必要なのは私の働きだよね?」
「拘束した警備員のIDと、ここの責任者の認証によって、俺たちの移動を他のブロックへ自然なものに見せられるか?」
ハンディタイプの端末をいじったメティスは、画面を見たままで訊ねる。
「So...(えーと……) 最長でも、警備員の次のシフトで交代が来たらバレます! サイは、どうしたいんですか? 脱出を目指すなら、全体マップでルートを決めつつ、外までのアクセス権をハックしますけど」
「このブロックだけ誤魔化して、まっすぐ脱出する場合の難易度は?」
俺の質問に、メティスは息を吐いた。
「ここの権限で行けるところまで行って、警報が鳴ったら強行突破しかない……。海外の軍事施設と同じだと考えて! 警備室にある銃火器、ありったけ持っていこう! 警備員の制服は逆に怪しまれると思うけど」
ケンイチが、手を上げた。
「俺は、警備員に成りすます! とりあえず、着替えるぜ」
いそいそと物陰に行った奴に構わず、メティスに答える。
「俺たちは、ケンイチに連れられている体にしよう! 現場責任者と予備でもう1人のIDを持っていけ」
「Gotcha!(りょーかい!) このブロックから映像や音声、定時連絡は、もう細工したから……。外のブロックの権限をハックする必要はないんだよね?」
「必要ない……。むしろ、異常を検知されるだろ?」
肩をすくめたメティスが、頷いた。
「うん……。ここのシステムも分からないし、不自然にアクセス権を求めた途端に、精査されると思う」
「全員、銃をもて! 自信がない奴は、無理にしなくていい」
警備員の制服に着替えてきたケンイチを含めて、全員が銃を手に取る。
(黒のポリマーで、セミオートマチック……)
警備員に支給されているらしい。
下にライト、上にはドットサイト。
ぴったりと嵌まるホルスターから抜いて構えると、サイトの明るい点が見えた。
右手でグリップを握ったまま、左手で上のスライドを半分だけ後退させる。
(装填済み……)
左手を離すと、シャッと小さな音を立てて、スライドが戻った。
グリップの下からマガジンを落とせば、小さな穴を埋めている弾丸で残弾が分かる。
すれる音を聞きつつ、マガジンを嵌め直す。
予備マガジン2つなどの装備をベルトごと、自分の腰で締めた。
他の3人を見ると――
マリナは、手慣れた様子でチェック。
誰もいないほうへ両手で構えたまま、しきりにドットサイトを覗き込んでいる。
「ま、仕方ないわね……」
俺の視線が気になったのか、こちらを向いたまま、人さし指を伸ばしたままの片手によるホルスターへの収納。
(爪が短い?)
同じく、腰にベルトを締めている。
流れるように動いたマリナは、俺に向き直った。
「何かしら?」
「実弾なのに、手慣れていると思ってな?」
「エアガンが趣味なの……。海外旅行でも、観光客向けの射撃場へ行くわ」
ケンイチが、割り込んできた。
「俺も、銃は好きだぜ! 映画みたいに――」
格好つけたドロウを披露したケンイチは、うっかりボタンを押しこんだのか、拳銃のマガジンを落とした。
ゴンッと、重そうな音。
「おっと――」
「止まれ! 人差し指をトリガーから離しなさい!」
一呼吸で銃を抜いたマリナが、すぐに銃口を向けられる姿勢のまま、警告した。
中腰で見上げたケンイチは、慌てて言う。
「落ち着けって! ほら、これでいいだろ?」
トリガーにかかっていた指を離したケンイチは、立ち上がる。
「マガジンは、ないんだぞ? あんまり神経質に――」
「上のスライドを後ろへ引いてみて」
ケンイチが言われた通りにしたら、弾丸が飛び出して、ゴンッと鈍い音。
「あ……」
「チェンバーに一発! 紛らわしい行動をしたら、警告せずに撃つわよ? いっそ、あなたは銃を持たないべき」
慌てたケンイチは、俺を見る。
「サイ、勘弁してくれよ!」
「銃の携行は、それぞれで決めろ! ただし、『仲間を撃つ』と疑われる行動をしたときの結果も自己責任だ。ホルスターから抜くなら、覚悟しろ」
ブンブンと首を縦に振ったケンイチが、愛想笑い。
「お、おお! 分かってるさ!」
弾丸とマガジンを拾い、セミオートマチックに詰め直した。
余計なことを言われないよう、すぐに腰のホルスターへ収める。
(また、トリガーに指がかかってやがる……)
俺は、人差し指と中指をそろえて伸ばしたまま、空中で振った。
メティスが、両手で端末を持っている。
「私は、銃を持たない……。どうせ当たらないし、私が発砲する時点でもう終わっているから」
それも、そうだ。
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