敵を消すには、まず味方から!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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注目を浴びた俺は、冷静に答える。
「その製薬会社を消そう! 今すぐに……」
沈黙の後に、警察官の稲真夕がツッコミを入れる。
「い、いやいや! おかしいでしょう、それは!」
俺と水鏡アレーテの保護者のような、京本香穂を見た。
観察特区の警察にいる刑事だが、一応は警視庁のくくり。
「あなたからも、言ってくださいよ!?」
「えーと……。水鏡くん? そ、それは言い過ぎじゃない?」
引きつった笑顔の香穂。
その問いかけに、首を横に振る。
「話にならない! 外資系のレトゥス製薬会社? 名前もふざけていれば、近い未来でやることもふざけている! これでも、真面目に答えていますよ?」
近い未来に、世界が滅ぶ。
だったら、今すぐにその製薬会社を消せばいい。
単純な話だ。
しかし、息を吐いた香穂が指摘する。
「外資系だから、本社はUS! 東京支社と施設を全て消しても、おそらく研究成果とサンプルが残るわ」
「今の時点では証拠がなく、警察の部隊を突入させられないと?」
ひらひらと片手を振った香穂は、肯定する。
「そうねー! 残念だけど……」
やはり、全員が俺の様子を窺っている。
その中でも真剣な、天城梨理香。
俺を見つめている彼女に尋ねる。
「その『アルカディア』で開発されたか誕生したウイルスだが……。ワクチンの開発、いや検査体制はどうだった?」
今度は、梨理香が考え込む。
周りの視線も、彼女に集まった。
梨理香は、自信をもって答える。
「アルカディアからの生還者は、例外なく精密検査と隔離をしました! その時点で最高の体制だったと言えます」
「間違いなく? そのアルカディアで感染したことが……」
「間違いありません! 検査で異常がなかったからこそ、完全に不意を突かれたパンデミックとなり、対応しきれなかったんです」
「そうか……」
この瞬間に、俺は全てを悟った。
「フフフ……」
「才さん?」
不審に思う梨理香に構わず、俺は1人で笑い続けた。
呆れた真夕は、軽く手を上げる。
「大丈夫、この子? 本川高校の事件を解決したとは、知っているけど……」
俺も、片手を向けつつ、謝る。
「失礼! レトゥス製薬会社が危険な研究をしていたら、それを掴みたいと?」
「ええ、そうよ……。あなたの考えは?」
「レトゥス製薬会社に侵入する方法は? 合法的なものを……」
はじめて前向きな発言を聞いた表情になった真夕は、タブレットを取り出す。
「端的に言うと、ないわ! 今から求人に応募するわけにもいかないでしょう?」
「見学は?」
「……ない! 敷地は、軍の基地と同じね? 高い塀と各種センサー、見回りの警備員。たぶん、無人の車両やドローンもある」
ふむ。
じゃ、次の案。
「警察ということで、入れませんか? 隙を見て、別行動をします」
「……アニメや映画の見すぎ! 製薬会社、それも世界的となれば、動いている金は数百億で、新薬開発は10年単位よ?」
ため息をついた真夕は、俺を見据えた。
「繰り返すけど、ふざけないで! 敷地内で数人の刑事や高校生を殺しても、死体ごと溶かせるでしょう……。周りにいるのは出入りの業者か、従業員よ? 完全犯罪! 規模とリスクから、元特殊部隊や傭兵を雇って、実弾を装填した銃を配備していてもおかしくない」
「その威光の前には、日本警察などゴミのよう……俺を睨んでも解決しませんよ? 真面目な話、やつらの圧力は? 現場の刑事が動いても、警察の上層部が止めますか?」
降参するように両手を上げた真夕が、言い捨てる。
「ええ、そうね! やつらが警察に裏金を渡すか日本の政治家を動かしたら、すぐに課長が捜査中止を命じるでしょう! 君が解決できるなら、嫌みじゃなくて、具体的にお願いしたいんだけど?」
語るに落ちたな……。
とはいえ、今はこいつの協力が必要だ。
「レトゥス製薬会社が怪しいなら、人体実験をやっていそうです。それに俺を突っ込んでくれませんか? できますよね?」
少し悩んだ真夕は、首を横に振った。
「ダメ! 天城さんの未来予知が確かなら、君は五体満足じゃ――」
パアンッ!
俺が抜いたリボルバーで、マズルフラッシュ。
真夕の傍を通りすぎた弾丸が、生徒会室の床で跳ね、壁にめり込んだ。
そのリボルバーをすぐテーブルに置き、両手を上げる。
周りのメンバーは、立ち上がって戦闘準備を整えており、俺を見たまま。
香穂も、黒いポリマーのセミオートマチックを握っていた。
その銃口は、まだ定まっていない。
アレーテと綾ノ瀬奈々美は、俺を支援する気配。
とっさに床へ倒れ込んだ真夕は、やはり黒ポリマーのセミオートマチックを両手で握り、銃口を俺に向けたままで立ち上がる。
(トリガーに指がかかっているな……)
そう思っていたら、真夕がドスの利いた声。
「銃は……置いたようね? 少しでも動いたら、撃つ! 全員よ?」
左手を外し、俺を見たままでリボルバーをつかんだ。
銃口を向けたままで、叫ぶ。
「説明して!」
「俺を逮捕する理由ができたはずだ! 本川高校でも警官の犠牲者が出たし、『こいつは許せないから、そっちで処分してくれ』と話せるだろ?」
俺を狙ったままで息を吐いた真夕は、もう1人の警官に命じる。
「京本さん! 銃刀法違反と殺人未遂の犯人に手錠!」
「……ハ、ハイッ!」
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