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彼女が見た姿(2)

「じゃあ、最初に出会ったあの日の時点で、調べようと決心していたのか…………?」

「うん。だって二度と会えないと思っていた女の子が、不思議な形でわたしの前に現れたんだから。無事に生きているかどうかもわからなかったのに、元気そうに生活している」

「別にミトちゃんさんも、鼈宮谷さんも、どちらがウソをついているとかを言うつもりはないのだが。どちらか、もしくは双方の勘違いってことはないのか?」

「わたしにとっては、何ヶ月か衣食住をともにしたルームメイトだよ。顔もハッキリ覚えているし、どんな声だったか、どんな姿だったか、ぜんぶ覚えてる」

「それが、ここにいる鼈宮谷さんと同じというわけか…………」

「…………」

 まだなにも答えることはない。自分から真実を話すのは事実を突き合わせたときだけだ、と言わんばかりの様子だ。

「なにも答えることができないなら、わたしが澪さんを紹介してあげる。名前は鼈宮谷澪、身長は148センチ、体重は42キロ、病名は原発性免疫不全症候群。

 一定の確率で生まれる珍しい病気。わたしと同じ。緊急連絡先は血の繋がっていない40代の男性。ここまで言えばわかる?」

「……………………」

 鼈宮谷さんは、なにも言うことはなく、かといって嫌な顔をするわけでもなく、素っ頓狂な表情でミトちゃんさんを見つめている。

「入院していた当時はこれと言った感染症にかかっていたわけではなく、世間で流行していた感染症にかからないための隔離的なものだったそうだよ。

 通常ならば感染症にかかった人を優先的に収容するはずなんだけど、どういうわけか感染していない澪さんが入院していた。そこには難病の研究を行なう意味もあったそう」

「…………鼈宮谷澪さんという人物が入院していたことはわかりました。その人と、ボクが同一人物であることを証明してください。

 同一人物であることを証明できれば、なにか話せることもあるかもしれません。今、この場で…………証明してください」

「今、この場…………」

 難しいことを突きつけられているのは火を見るより明らかだった。

「ちょっといいかい?」

 話に割り込んできたのはマスターだった。

「あっ、すみません、ふたりの話に夢中になってしまっていて…………」

「それはいいんだがね。はい、アイスティーがふたつとアップルジュース。さっきから話は聞こえていたが、この子が噂の鼈宮谷さんね…………」

 マスターは見たことがないと言っていた。噂話や世間話でしか存在し得なかった人物が、今ここにいる。


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