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彼女が見た姿(3)

「この場で証明する…………」

 ミトちゃんさんが完全にフリーズしてしまった。10年前の記憶しか持ち合わせていないミトちゃんさんにとって、今この場にいる鼈宮谷さんを本人と証明するのはたしかにむずかしいかもしれない。

「その資料、オレも借りていいか?」

「ああうん、見てもいいよ。澪さんは見ちゃダメだからね」

「…………わかっています」

 ミトちゃんさんから受け取った、A4サイズのクリアファイル。そこには結構な量の紙が挟み込まれている。

 昔の鼈宮谷さんしか知らないミトちゃんさんが難しいなら、今の鼈宮谷さんを知っているオレが読んでみればいいんだ。そこにはなにか隠された情報があるかもしれない。

「…………証明するのは陽莉さんでも、稜希さんでも、どちらでも構いません」

「オレはこの資料を読み込んでおくから、ふたりはマスターと話をしていてくれ」

「マスター。この子を見てなにか思うことはない?」

「この子が噂の鼈宮谷澪さんねえ…………君のことはいろいろな人から風のうわさとして語られているよ」

「…………そうなんですか?」

「君が水卜さんの言う鼈宮谷さんなのかはわからないが、私の知っている範囲のことであれば語ることができる。聞くかい?」

「…………はい。聞きます」

 ふたりがマスターとの話をしている間に、オレは今の鼈宮谷さんとの関係性を証明するものを見つけ出すんだ。

 ミトちゃんさんが取得してきた資料には、患者として必要なプロフィールが記載されている。

 オレが気になったのは緊急連絡先の40代の男性。10年前に40代だったということは、今はもう初老の男性になっているはずだろう。

 残念ながら、その資料には男性の連絡先は記載されていなかった。男性と連絡が取れれば、なにか知っていることもあるはずなのに。

 そもそも、その男性が誰なのか。なんのために、血の繋がらない彼女を保護していたのか。その真実を知りたいが、現段階でその男性にたどり着くことはできない。

 なにか、なにかないのか…………!

「もともと、君の存在を知ったのはここに足しげく通うおばちゃんたちの話だった。おばちゃんたちの情報網というのは広いもので、君の話はあっという間に広がっていたようだ」

「おばちゃんたちは、どんな話をしていたの?」

「人によってさまざまだった。歳を取らない女の子、ヤクザに拉致された女の子、宇宙からやってきた女の子など、荒唐無稽なものが多かった」

「……………………」

「ただ、さまざまな説が飛び交う中、一番多かったのが…………『消毒された女の子』だということだ」


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