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彼女が見た姿(1)

「おや、今日は3人かい。珍しいね」

「マスター、今日もお客さんいないの? このままじゃお店潰れちゃうよ~」

「潰れそうだと思っているのなら毎日通って売上に貢献してくれや」

「毎日はきついかなあ。まだ学生の身だからね~」

「それで。注文はどうする。水卜さんはなるべく高いのを頼むぞ」

「お客さんに高い商品を買わせようとしちゃいけないの。わたしはとりあえずアイスティー。稜希くん、澪さんはどうする?」

「オレもアイスティーで」

「…………アップルジュースをお願いします」

「あいよ。食べ物はいらないのか?」

「とりあえず話をするだけだから、まずは飲み物だけ。話が長くなったら追加で注文するかもしれない」

「少々お待ちを」

 カウンターの奥で飲み物を用意しているマスター。ミトちゃんさんが一言だけ澪さんと名前を呼んだが、気付いてはいるだろうか。

「あらためまして。わたしが水卜陽莉だよ。…………って、いまさら自己紹介するほどのことではないと思うけど」

「…………鼈宮谷澪、です…………」

「どうしてわたしが澪さんをこの場に呼んだのかわかる?」

「…………話のさわりは稜希さんから聞きました。でも…………ボクはどう反応していいのかわかりません」

「単刀直入に聞くよ。澪さん…………あなたは10年前、この近くの首都医科薬科大学病院・免疫科に入院していなかった?」

「…………ボクは、その病院に入院したことはありません」

 オレが聞いたときと返事は同じだった。それ以上答えてくれる気がしないのだが…………。

「そう。そう言われることを想定して裏を取っておいたんだ。これ、見てくれる?」

 手持ちのリュックから取り出してきたのはA4サイズの紙が入るクリアファイル。なにやらパッと見た感じ多めの紙が挟まれている。

「…………これは、なんですか?」

「本当はこれを公表してはいけないんだけど。いろいろなツテをたどって手に入れた鼈宮谷さんの入院記録。これを手に入れるのに本当に苦労したんだから。

 文字通り走り回って探したよ。当時住んでいた住所とかは載っていないんだけど、入院していた病名と緊急連絡先の情報が書かれているの」

 それをどうやって入手したのか突っ込みたかったが、触らぬ神に祟りなしということで黙っておいた。真実を知るの、怖いから。

「でも、ミトちゃんさんと鼈宮谷さんについての話をしたのは昨日だろ? 昨日今日でそんなことがわかるわけ…………」

「昨日は澪ちゃんがいなかったし、そもそも先に稜希くんにわたしのいきさつを知ってもらう必要があったから、まだ知らないフリをしてたの」

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