学びへ(7)
「あたしが科学技術や生命の不思議に興味を持って授業を取り始めたら、稜希が真似して同じ授業を取ってきただけの話だよ!」
「大げさなことを言うな。オレだってそういう方面の授業に興味があっただけだ」
「よく言うよ! あたしが取ってる授業の9割かぶってるくせに!」
「…………ふふ」
オレたちのやりとりを見ている鼈宮谷さんは、以前よりよく笑うようになった。笑うと言っても声に出すようなことはなく、微笑むだけなのだが。
それでも以前の彼女と比べれば雲泥の差だ。出会った当初のなにもかもに怯えているような姿より…………よっぽど人間味が溢れているような気がする。
「あたしたちは一応理系だけど、あくまで一応って程度だよね。専門知識があるわけじゃないし、特定の分野に詳しいわけでもないし」
「学生の間には文系と理系というジャンルがあるんだ。文系は平たく言えば人々の生活や文化、文明などの人に対する研究を行う学問で、
理系は科学や化学、医学や数学などのモノに関する研究を行う学問だ。どっちも良い悪いがあるわけじゃない、個人の興味によって選ばれる」
「澪ちゃんはどっちに興味があるの? まあ、あたしたちと同じ授業を取ると自動的に理系の授業になっちゃうんだけど」
「…………ボクは、どちらも興味があります。この世界の科学がどうなっているのか、人々の生活がどうなっているのか、興味が止まりません」
「そういう授業のとり方もできないことはないよ。ただ、卒業後にどこかで働くとなったら専門知識を養っていたほうがいいと思うけど」
「まあ、広く浅い知識って仕事には役に立たないよな」
「まあね。なんのお仕事をするにもその仕事の専門知識が必要だから、中途半端に知識を身に着けちゃうとあとから後悔することになるかもしれないよ」
「鼈宮谷さんの賢さならそういう生き方でもどうにかやっていけそうな気もするけどな」
「こういう生き方で後悔するのは稜希みたいな怠惰な人間だけだからね」
「けっ」
軽くバカにされた。だがあながち間違ってもいないので言い返すこともできない。
「鼈宮谷さんは何もわからないから興味をそそられるものばかりで大変だろうけど、なにが一番興味があるんだ?」
「…………一番というと選びにくいのですけど。同列のものがふたつあって、ひとつはこの世界の人たちがどんな生活をしているか、もうひとつがこの世界の科学技術です」
「なるほど。他の人の暮らしと、科学技術か…………たしかにパソコンを買うとき興味津々に見ていたもんな」




