学びへ(4)
「なあ、結月。鼈宮谷さんってウソをついていると思うか?」
「ウソ? ウソとは思ってないけど、なんか話してないことがありそうだなあとは思ってるよ」
「話してないこと?」
「これは前に言ったと思うけど。澪ちゃんが本当に記憶喪失なのかどうかは気になってるね。記憶喪失じゃないなら、なんでそんなことをする必要があるのかなって」
「まあな。それはオレも気になっているところだ」
「それに、ちょっと気になることを言ってたんだよね」
「うん? なんだよ」
「昨日、稜希がひまちゃんと出かけていたときの話なんだけど。あたしは澪ちゃんとお昼を食べていたんだよね。そうしたら…………」
《…………結月さん》
《なに?》
《…………結月さんは、ドッペルゲンガーとか、おばけとか、そういう怖いものを信じていますか?》
《うーんっ。信じてないと言えば嘘になるけど、頭から信じていると言えば違う、ってなるかな。これはあたしがそういう経験をしていないからってことだと思うけど。
もしあたしの目の前におばけが現れたり、自分とそっくりさんが現れたらひっくり返ると思う。そしてそれ以降おばけはいると全力で主張するかな》
《…………それが、『こわい』と思いますか?》
《まあ、そりゃ怖いよね。日常から逸脱するものを目の当たりにしたら》
《…………ある意味、ボクも日常から逸脱する人物ですけど、『こわい』ですか?》
《降ってきた当初は怖かったけど、今はぜんぜん。むしろ可愛い女の子だと思ってる。妹みたいな感覚で接することができるから、あたしとしては気楽かな》
《…………結月さんにとって、ボクは可愛がってもらえているんですね。可愛がられるという経験が少ないので、正直どういう反応をすればいいのか困ってしまいます》
《あは。そういうのはアレだよ。素直に喜べばいいんだよ。相手は善意で接しているんだし、自分はその善意を受け取ったと、全力で喜べばいいの》
《…………そういうものなのですか》
《人間はね、もっと素直に生きていいものなんだよ。卑屈になって愛情を受け取らなかったり、善意をないがしろにするようなことがあっちゃいけない》
《…………善意…………》
《こんなに情をかけてもらえることを不思議に思ってるでしょ。それが人間ってものなの。もっと性格の悪い人に行き当たってたら、また変わっていたかもしれないけど》
《…………わかりました。結月さんの善意、喜んで受け取っておきます》
「って感じかなあ。最初はなんの話をしだしたのかと思ったけど」




