学びへ(3)
「…………はい。ここにいるおふたりと同じ学校に通いたかったのです」
「そうですか。微笑ましくてなによりです。学生証を発行していますので、お受け取りください」
写真入りの学生証が渡された。この写真、いつ撮ったんだろうか。試験のときか。服装が3日前に着ていたものと同じだしな。
「授業の選択の仕方を聞いていかれますか? それともお友達に聞きますか?」
「聞いていきます」
「じゃ、あたしたちはその間待ってよっか。どうせまだ授業まで時間があるしね」
鼈宮谷さんが職員さんから授業のとり方から、学生生活の過ごし方まで、学生のイロハを教え込まれている。なんだか親が子どもに教えているような姿に見えてほっこりする。
「あたしたちもあんなときがあったねー。なんにもわからないまま入学して、覚えながら過ごしていったやつ。もう遠い昔のようだよ」
「そんな昔でもないがな。そう言えば、この学校に入る前は勉強教えてだの宿題やってだのもう色々と頼られてたよな」
「そ、それは昔の話だからいいじゃないの! 今はちゃんと自分で勉強してそこそこの成績取ってるんだから!」
「はは、バカにしたいわけじゃない。ちょっとからかっただけだ」
「まったくもう…………」
「それにしても…………鼈宮谷さんはかなりうまく行ったほうだよな」
「なにが?」
「一般的に、身元がわからない人間ってそうそういないだろ。いたとしても警察を通して施設に入るか、最悪の場合は路上や橋の下で死んでいる可能性さえもある。
それに比べれば、助けてくれた人がいて、友人ができて、世間一般的な人間と変わらない生活を送ることができているんだから、幸運なほうだと思うぞ」
「まあね。そのトリガーを作ったのはあたしなんだからもっと感謝してくれたっていいんだよ?」
「最初にオレの家に連れていくと言い出したときは正気を疑ったけどな」
「あたしだって最初は警察に連れて行くべきだと思ったよ。澪ちゃんの身の安全を考えたら、それが一番安心なのは明らかだと思ってる。
でも澪ちゃんが行きたくないと言ったからには、こうするしかなかった。しかたないよね、ちゃんちゃん」
「お前のその軽いノリを恨むべきなのか見習うべきなのかわかんねえよ…………」
「まあでも、それで話し相手もできたし、ワンチャン狙える存在もできたし、まあ結果オーライだったんじゃないの?」
「一言余計だけどな」
ミトちゃんさんの話題には触れずに、かんたんに鼈宮谷さんについてどういう印象を抱いているか聞いてみるか。




