学びへ(1)
翌日。うだるような暑さが少し和らぎ、比較的快適に外を歩けるようになった。と言っても、暑いことに変わりはないが。
「学校まで車で通えたらいいのにね」
「あの学校のどこに学生用の駐車場があるんだよ。教職員用も狭いし、このへんで車通学なんて夢のまた夢だぞ」
「そっかあ。車で通学できるようなところってどんなところなんだろ」
「山の上とか、市街地から離れてて交通機関もないようなところだと申請してOKのところもあるらしいけども」
「まっ。無理か。仕方ない。嫌でも歩くしかないね」
「と言っても、オレたちの家からは歩いていける範囲じゃねえか。車通学がOKだったとしても少なくともオレたちにはOKは出ないだろうな」
「楽ちんだから近場の学校を選んだんだけど。そういう弊害もあるのか~っ」
いつものように入り口で検温を求められる。
「検温をお願いしまーす」
「先に言っておきますが熱があったとしても暑いだけですから! 病気でもウイルスでもありませんから!」
釘を差しておいた。
「えっと、36.7℃、36.4℃、35.8℃…………はい、今日は平熱ですね。どうぞ入ってください」
おお、ついにうるさく言われない日が来た。割とうれしいぞ。
「あっ、その前に。鼈宮谷さんはこちらに記入してから入ってください。これを書くのも今日が最後になるとは思いますが」
合格が決まればその場で学生証を発行してもらえる。というか、合格ならすでに発行されているはずだ。あとは本人に渡すのみになっていると思う。
「鼈宮谷さんって珍しい名字ですよね。どこから来たんですか?」
「……………………」
どこから、と言われても困ってしまうのが実情だろう。
「ああいや、言いたくないのなら言わなくていいんです。ただの世間話のつもりでしたから」
この女性警備員さんはお堅い人だと思っていたが、意外にもフレンドリーな一面もある人だった。仕事に真面目すぎるだけか。
「よかったら、帰り際に試験の結果がどうだったか教えてくださいね」
この学校で編入生などほとんど見ないので、警備員さんも気になっているのだろう。
「…………わかりました。帰りに寄ります」
「まずは澪ちゃんの結果から聞きに行こっか」
「…………授業は大丈夫なんですか?」
「あたしたちの授業は午後からだから。結果を聞いてお昼を食べて一息ついてからでも間に合うよ」
「…………そうですか。わかりました、じゃあ先に行きます」
今回は鼈宮谷さんのみの編入になるため、学内の掲示板に合格かどうかは貼り出されないらしい。口頭で聞きに行け、ということか。




