得体の知れない秘密(10)
「なによプライベートな話って。えっちな話でもしてたの?」
「おまえさあ…………マスターがいる前でそんな話をするわけがないだろ」
思春期の中学生じゃないんだから、性に直結するのはやめてほしい。
「じゃあプライベートな話ってなによ」
「平たく言えば本人のセンシティブな情報だからだ。特に口止めはされていないが、おおっぴらに話すことでもないからしゃべらない」
「…………むー。けち」
「そのうちミトちゃんさんの方からしゃべってくれるんじゃないか?」
「それがいつになるかわからないから気になってるの!」
「…………結月さん」
鼈宮谷さんが口を開いた。
「…………知らないほうがいいことだと思いますよ。それを知ったところで、結月さんが喜ぶような話でもありませんから」
「む。澪ちゃんがそう言うなら…………」
おいおい。鼈宮谷さんの言うことは素直に聞くんかい。オレの言うこともそのぐらい素直に聞いてくれよ。
「あれ? 澪ちゃんのことでなんか忘れてることがあるような? って、ああああああっ!!!!」
目を見開いた結月が立ち上がった。
「飯を食ってる最中に叫ぶなよ、うるさいな」
「ちょっと、大事なこと忘れてるじゃない! ねえ!!」
「大事なこと?」
「澪ちゃんの合格発表! 今日じゃん! 忘れてたよ!!」
「あ…………」
すっかり忘れてしまっていた。ミトちゃんさんに呼ばれたのがきっかけで、本来の予定がすっかり抜け落ちていた。
《メッセージだとちょっと話が長くなっちゃうから…………明日ひま? ちょっと会って話がしたいんだけど》
《暇だが》
なにも考えることなく暇と即答してしまったのが恥ずかしい。
「もうこんな時間だし…………結果を聞きに来なかったからと言って不合格になるわけじゃなし…………明日聞きに行けばいいだろ」
「今頃なんで来ないのかと話題になってたんだろうね」
「…………別のことを考えていたので、ボクも忘れてました」
受験した本人が忘れてしまっていては元も子もない。
「いいのか悪いのか明日は登校日だし…………まあ、今日の時点で気がついてよかったと思うべきだね」
「電話で確認とかできないのか?」
「こういう受験とかは電話で確認できたら他人がなりすますことだってできちゃうでしょ。そういうのは許可しないようになってるの」
「そういうものなのか」
「澪ちゃんは頭がいいから合格は間違いなしだと思うけどね」
「鼈宮谷さんは途中からの編入だから、オレたちと同時に卒業しようとしたら人一倍頑張らないといけないぞ。まあ、鼈宮谷さんにそんなことは愚問だと思うが」




