得体の知れない秘密(5)
「へー! 世界が舞台とか超絶エリートじゃん! 稜希はもっと誇っていいと思うよ!」
「いくら両親が世の中の仕組みを変えるかもしれない技術者だったとしても、オレは平凡だから誇っても意味がないと思うぞ」
「お父さんとお母さんの実績を知れば稜希もモテモテ間違いなしだよ!」
「それは親の七光りって言うんだ。オレはそういうのがあんまり好きじゃない。あくまで親の実力であってオレの実力じゃねえからな。
それにモテモテになるって言っても、そこまで必死にモテたいという感情はあんまりない。なるようにしかならないと思っているから、いきあたりばったりだ」
「えー。そうなの? 稜希くらいの年頃はみんなセックスセックスってうるさいぐらいなのに」
「そんながめついやりかたをしたって心証が悪くなるだけじゃねえかよ…………オレは平和が一番だ。平和で誰かに巡り会えたらそれでいい」
「ある意味、社会的地位を確立しているお父さんやお母さんとは違う考え方だね。それが悪いとは言わないけど」
「親の反動なのかもな。高給取りで地位も名声もあるが、その代わり忙しくてプライベートを確保できない…………そういう現場を見てきたからかもしれないな」
「ふ~~~~ん。稜希は普通が一番と。なるほどね、理解った」
「なんか、わかったのイントネーションが違うような気がしたが」
「気のせいじゃない? さ。ゲームしよ」
露骨に話題をそらされて、会話が終わった。
2階からバタンという音が聞こえ、とん、とん、とん、と小気味よく階段を降りてくる音が聞こえてきた。
「鼈宮谷さん。どうしたんだ?」
「…………おなかがすきました」
「えっ、ああ! もうこんな時間! 今準備するからちょっと待っててね」
我が家ではすっかり炊事担当が結月になった。オレがやらなくてもよくなったので、楽ちん。本当は手伝ったほうが良いんだろうけどな。
でも料理が好きな人に下手に手伝うとこの上なく邪魔になることが多い。だからあえて手伝わないという判断だ。
「……………………」
「……………………」
さっきのこともあって、ちょっと話題を切り出しにくい雰囲気になっている。結月は台所だ。今ここで鼈宮谷さんと会話をしても、彼女には聞こえないだろう。
「な、なあ鼈宮谷さん」
「…………なんですか?」
「入院していた鼈宮谷さんと、今ここにいる鼈宮谷さん。それを繋ぎ止めるものを探し出してください、と言っていたよな」
「…………はい、言いましたね」




