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思い出を手に取り(11)

「……………………」

 なにか、なにか言ってくれ、頼む…………オレは、謎を謎のまま放置しておきたくないんだ…………!

 正確には、オレ個人としては鼈宮谷さんの過去がどうであれ、それ自体に大して興味がない。ただ、それによって起こるかもしれない不思議なこと、

 そう遠くない未来のトラブル、そしてつじつまの合わない衝突した『事実』と『事実』に、落とし前をつけたいだけなんだ…………!

「……………………」

 鼈宮谷さんに焦っている様子はない。ただ…………先ほどまでに比べるとなにか言いたげな表情を浮かべている。

「どうか頼む…………なにか知っていることがあるなら教えてくれ」

「…………稜希さんは、どう思いますか?」

「は?」

「…………仮にボクがウソをついているとしたら、なんのためにウソをついていると思いますか?」

 ドリルで掘り進めていた岩盤に、一筋の光が差したような気がした。

「なんのため…………か。最初はDVとかから逃げている女の子だと思っていたが…………様子を見る限りどうもそんな感じはしない」

「…………」

 そこで『違いますね』とは言わなかった。ウソをついていることが確定するのを恐れたのか。

「そうだなあ。とても中二病チックな妄想になってしまうが…………誰かから逃げてるとか? DVとかじゃなくて、なんらかの使命を背負ったがゆえに逃げているとか」

「…………」

 一瞬だけ目をそらした。正解かどうかはわからないが、心当たりはあるのだろう。

「あの人が出会った鼈宮谷さんと、今ここにいる鼈宮谷さんが同一人物かどうかはオレにはわからない。でも同一人物だとしたら、鼈宮谷さんの過去は存在していたことになる。

 当時は逃げる必要がなかったとすると、この10年の間になにかがあったと見ている。親の代わりとなる人物とのトラブルとか…………」

「…………言っておきますが、『ボク』はその病院に入院したことはありません」

 はっきりと否定された。その言葉に裏はない。そう思わせられるほどはっきりとした口調だった。

「じゃ、じゃあ! あの病院に入院していた人物は同姓同名で、同じ顔をした、別人だというのか…………?」

「…………仮にボクがウソつきなのであれば、なぜウソをつく必要があったのかを考えてみてください。入院していた『鼈宮谷澪』さんと…………今ここにいるボク。

 それを繋ぎ止めるものを探し出してください。そうすれば…………ボクも話せることがあるかもしれません。出会った当初よりはハードルが低くなっています」


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