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思い出を手に取り(10)

「さて…………鼈宮谷さん。オレから聞きたいことがあるんだ」

「…………なんでしょうか? ボクからは特になにもありませんが…………」

「火球のことはわかった。宇宙人が襲来したかもしれないという報道も置いておこう。それだけじゃなくて、鼈宮谷さんに聞きたいことがある」

「…………むう」

 正確ではないし、外れることのほうが圧倒的に多いが。オレは他人の表情の変化が見えることがある。まぶたや眉がピクリと動くのを見逃さなかったりするようなことだ。

 でも、この言葉を投げかけても、鼈宮谷さんの表情はなにひとつ動かなかった。彼女の肝が据わっているのか、本当に身に覚えがないのか。それは話してみないとわからない。

「この前、水卜陽莉さんという人に会ったのは覚えているか」

「…………はい、覚えていますよ」

「今日は彼女に呼び出されて、駅前のカフェに行ってきたんだ。そこでとある話を聞いた。ミトちゃんさんの…………昔の話だ」

「…………それが、どうかしたのですか?」

「ミトちゃんさんは昔から病弱で、入退院を繰り返していたそうだ。そこでとある病院に入院した先に、ある少女がいたんだ」

 彼女の表情はやはり動かない。むしろ『なぜこんな話を聞かされているんだろう』と言わんばかりの表情だった。

 やはり別人なのだろうか。でも、別人だとしたら…………ミトちゃんさんが言っていたことと辻褄が合わなくなる。ミトちゃんさんの話がウソでなければ、だが。

「…………はて?」

「ミトちゃんさんが入院した病院、お世話になることになった病室にいた女の子の名前が『鼈宮谷澪』という人だったそうだ」

「…………!」

 ようやく表情が動いた。でもそれは核心を突かれたときのものではなく、単に驚いているだけのように見える。

「…………その女の子は、『鼈宮谷澪』という方だったんですか…………?!」

「ああ、そうだ。この話を聞きたいか?」

「…………聞きたいです。詳しく教えてください…………!」

 思ったより良い反応が得られた。でもそれは自分自身のことであるような様子ではなく、自分と同じ名前だから興味を持っているのかもしれない。

 とにかく。ミトちゃんさんから聞いた話を鼈宮谷さんに話してみよう。なにかわかることがあるかもしれない。

「…………と、言った感じだ。オレたちは今ここにいる鼈宮谷さんと、その入院していた鼈宮谷さんが同一人物ではないかと見ている」

「…………」

「つまるところ、鼈宮谷さんはオレたちにウソをついていた。そういう主張をしなければいけないのが心苦しいが…………オレたちの主張はこうだ。

 鼈宮谷さんは自分の過去を隠すため、なんらかのウソをついている。いいや、ウソをつかなければいけないほどの大きな理由が、そこにあると思っている。

 その理由が明かせないのも、オレたちに言えないことであるもの仕方ない。ただ、オレたちの考えた『真実』が正確であるか教えてほしいだけだ。

 今までの鼈宮谷さんの人となりを見るに、悪意を持ってウソをつくようには思っていない。そこだけは安心してほしい」

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