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思い出を手に取り(5)

「マスターも多少気になるんですね」

「ここに通いに来るおばちゃんたちの間で噂になっていたからね。どんな人物なのか気になっていたことがある」

「マスターも、口外こそせずともいろいろなうわさ話を耳にすることが多いんですか」

「水商売はうわさ話のたまり場さ。気になる話から、どうでもいい話まで。いろいろなことが飛び交う場だ」

「そうなんですか」

「うーん。これ以上話を続けていてもらちが明かないなあ。とりあえず切り上げよっか。わたしも澪さんの行動や様子を伺いながら探るから、稜希くんもお願いね」

「ああ、そのつもりだよ」

「マスター、ごちそうさま! お代の800円。稜希くんは1,200円。ちゃーんと払ったから安心してね」

「はいはい。お粗末さまでした。また来てくれよな。ついでに彼女の話もよかったら聞かせてくれ」

「なにかわかったらお話しに来るよ。またね!」

 そう言って、店から出た。


 昼間は残暑が厳しい頃合い。朝と夜はだいぶ過ごしやすくなってきたような気がする。

 ミトちゃんさんから聞いた話は有益なものだった。自分が病弱で、入院していた先に鼈宮谷さんと思われる人物がいた…………と。

 他人の空似だったら都合が良すぎるし、本人だったらさらに意味がわからない。彼女は空から降ってきたんだ。少なくともその点に関してはオレたちの目で見た事実だ。

「ただいま」

「あっ。帰ってきた。ほかの女の子をたぶらかすヤバイやつ」

「すげえ言われようだな…………」

「だってたぶらかしてるじゃん」

「たぶらかすもなにも、話したいことがあるって言われて駅前のベロニカに行って昼飯を食いながら話を聞いていただけだ。ミトちゃんさんには指一本触れてねえ」

「ふ~~~~んっ?」

「嘘だと思うならベロニカのマスターに聞いてみるといい」

「まっ。信じてあげるけど。それで、夕飯はいるの?」

「普通の量の飯しか食ってないから、夕飯はいるよ」

「そ。じゃあ作ってあげるけど。別にまだ作らなくていいでしょ」

 まだ午後4時だ。飯を食うにはまだまだ早い時間だ。今すぐなにかほしいという感情はない。

「鼈宮谷さんは?」

「部屋でパソコンしてる。あたしはスマホしてるのも飽きたから、今はテレビを見てた」

「お前がスマホに飽きるだと?」

「なによその言い方」

「いつでもどこでも何度でもTmitterで近況報告をするお前が飽きただと?」

「あたしだってそういう日ぐらいあるよ! 今はちょっと浮上したくないだけ」

「へえ、なにかあったのか?」

「今、Tmitterで炎上してるんだよね」

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