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思い出を手に取り(4)

「流れ…………星? 降ってきた? 空から? 澪さんが? そんなわけ…………」

「そんなわけがあったから、今こうしてオレが頭を抱えているというわけだ。マスター。なにかコメントできるようなことはありませんか」

「…………申し訳ないが、俺から言えることはなにもない」

「そうですか。そうですよね。そりゃ、こんな話を信じろってほうが無理があるとは思いますが…………」

「じゃあ、わたしが見ていたあの女の子は誰だったの?」

「それも鼈宮谷さん本人だとすると…………なにもかもおかしいことになってしまうんだよな」

「わたしが見ていた澪さんが病弱で入院している年上の女の子…………稜希くんが見ていたのが空から降ってきた記憶喪失の女の子…………。

 澪さんがウソをついている可能性はゼロじゃないんでしょ? それなら本人に聞いてみたほうがいいんじゃないの?」

「本人に聞いて素直にそうです、と言ってくれるとは思えない。別の方法を考えるべきだと思う」

「おふたりさんよ。ちょっといいかい?」

「はい、なんでしょうか」

「仮に10年前に会った鼈宮谷澪さんとやらと、高嶺くんが出会った鼈宮谷澪さんが同一人物だと仮定する。

 それならば10年間見た目が変わっていない女の子、というのはおかしな話ではないか? 子どもから大人になることができる年月が過ぎている」

「じゃあ、別人なのかな?」

「水卜さんが最初に見たとき、彼女の顔を認識できたからこそ記憶が蘇ったんだ。その認識は間違いではないはずだ」

「そうなの…………?」

「人間の脳には顔を認識して記憶に格納する特別なシステムがあって、記憶した相手を瞬時に認識できるようになっている。それに格納された顔の記憶は、そうそう忘れない」

「じゃあ、わたしが出会った鼈宮谷澪さんはウソじゃなかったんだ…………」

「その点がウソじゃないとなると、ウソをついている可能性が高いのは…………」

「オレたちが出会ったあとのこと、というわけですか」

「少なくとも空から降ってきたことに関しては曲げようのない事実だろう。だが記憶喪失については真実であるか怪しい。少なくとも俺はそう見る」

「ちょっとちょっと! 空から降ってきたというどう考えてもおかしい状況を無視しちゃいけないよ!」

「無視しているのではなく、皆目検討もつかないから棚にあげているだけだ」

「棚に上げているって言っちゃうんだ…………」

「10年間見た目が変わっていない謎、空から降ってきた謎、過去と現在の彼女の謎。主な疑問点はこれだろうな」

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