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思い出を手に取り(3)

「それが澪さんかもしれないって噂? あはは、まさかそんなおばけみたいな話があるわけないじゃん」

「俺は話でしか聞いたことがないから信じるかどうかは自由だが、当時は年上に見えて、大人になった今では子どもっぽく見える…………そういう話も頭に入れておいたほうがいいかもしれないぞ」

「歳を取らないねえ…………本当にそんなことがあるのか不思議だけど」

「いったいどういうことなんだ…………?」

「うん? 稜希くん? どうしたの?」

 オレが見た鼈宮谷さんは空から降ってきた存在だ。入院していたなど歳を取らないなど…………もとよりこの周辺で生活していたような様子じゃないか。

「あのさ…………」

 どうする。鼈宮谷さんが空から降ってきた存在であることを明かすべきか。黙っておくべきか。ミトちゃんさんもマスターも、口外することはないだろうが…………信じてもらえるかどうかは不安だ。

 どうする…………?


「あのさ…………話しておきたいことがあるんだけど」

「うんうん。稜希くんが言いたいことがあるなら聞くよ。なにかあったの?」

「マスターはその噂の人に直接会ったことはないんですよね」

「ああ。そうだよ。だから俺の話を信じるかどうかは自由だ」

「そして、ミトちゃんさんは実際に入院生活をしていて鼈宮谷澪という人物に出会ったわけだよな」

「うん。そう。だから最初に見たときに気がついたというわけ」

「…………」

 おかしい。なにもかもおかしい。彼女は空から降ってきた人物だ。仮に過去があったとしても、この世界のことをなにも知らない様子だった。

 それならば彼女がウソをついているか、本当に知らないかの二択になる。あの様子だと…………どちらとも言えない。

 なにかしらの過去を知っているのは事実だろうが、この国、この世界のことは本当になにも知らなかったようだ。この矛盾とは…………なんだ?」

「そこまで言いかけて黙っちゃうなんてずるいじゃない。なにか話があるならちゃんと聞かせてよ」

「実は…………オレと結月は、鼈宮谷さんと奇妙な出会い方をしたんだ。普通の人には信じてもらえないような、ありえないことが」

「奇妙な出会い方って? Tmitterのスパムアカウントが女の子だったとかいうオチ?」

「それならば普通に現実味のある出会い方だわ。鼈宮谷さんは…………空から降ってきたんだ」

「…………え?」

 あの日、あのとき。ありのまま起こったことを話した。もちろんその内容にウソはないし、信じられない内容なのは百も承知だ。

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