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思い出を手に取り(2)

《…………ボクは、初対面だと思います》

《そ。それならいいんだけど。わたしの勘違いだったみたいね。澪さん、よろしくね》

「あのとき…………わたしの勘違いって言っていたじゃないか。内心では久しぶりに見る顔だと思ってたのか?」

「もちろん。最初は目を疑ったよ。稜希くんの存在は結月を通して知っていたから驚かなかったけど、澪さんは信じられなかった。何年も前に会ったきりの存在が、そこにいるんだもの」

「それにしては他人のふりをしていたじゃないか」

「最初は一声かければ思い出してくれるものだと思ってた。でも返ってきた反応は素っ頓狂なものだった。だから臨機応変に態度を変えたの」

 この人も結月に負けず劣らずのコミュ力おばけだな…………。

「澪さんはわたしのことを覚えていないようだったから、即座に他人モードにして接することにしたの。それから別れるまで一緒にいたのに、思い出すことはなかった」

「完全に今日知り合いましたって感じの態度だったな。つらいと思ったか?」

「つらいとは思わなかったけど、そっか、その程度だったんだな、って思った。わたしにとっては澪さんのおかげで考え方が変わったけど、あちらはそうでもないみたい」

「おふたりさんよ。ちょっと割り込んでもいいかい?」

 マスターが話に割って入ってきた。

「なんですか?」

「その鼈宮谷澪さんという人は…………どういう人だ? 身体的特徴とか、顔つきとか」

「身長は小さくて、見ただけだと子どもっぽい様相の人だよ。顔つきは…………わたしはかわいい系の顔つきだと思うけど。年齢にはそぐわない感じの人だね」

「うーむ…………」

「で、それがどうしたの?」

「鼈宮谷澪さんとやらに直接会ったことはないが、昔からその名前は聞いたことがある気がするんだよな。もう10年以上も前の話だ」

「わたしが澪さんと出会ったのがそれぐらい前だし、入院していたのもこの辺の大病院だし、別に不思議ではないんじゃないの?」

「不思議なのはいることそのものじゃない。水卜さんよ、入院していた当時…………その子の年齢はいくつぐらいに見えた?」

「入院していた当時? 今でこそ子どもっぽい様相だなと思うけど、当時は年上っぽい感じに見えたかなあ。わたしが子どもだっただけかもしれないけど」

「…………もしかしたら、その子なのかもしれないね」

「なんのお話なの?」

「昔から、この近辺で歳を取らない女の子がいるという話が噂になったことがある。何年経っても顔立ちや姿が変化することがなく、老いることがないという話だ」


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