受勲式1
暗黒生命体討伐戦線から1週間後、帝国航宙軍から送られて来たリザルトの内容は予想通りと予想外のものが混じっていた。
予想通りなのはアークとブラックダイヤに支払われる報酬、約23億と数千万マニ、そして予想外なのは・・・
「勲章?」
「はい、功一等銀皇大授賞がノワ様とキャプテンに授与される運びとなったようです」
「なんか皇って入っているから凄そうな勲章っぽいんだけど」
「凄いなんてものじゃありません!」
ニーナはカタカタと震えて勲章について話し始めた、え、そんなレベルの勲章なの?
「功一等銀皇大授賞は先ず皇の文字が入っている通り、勲章の中で高位に位置する勲章です」
「ふむふむ、銀だから上から2番目っぽいね?」
「はいノワさん、まず功一等銀皇大授賞の授与資格は『多大なる勲功を帝国に納めた者』が歴代の授与者とされています」
「えっ、なんかすごく凄いね」
嫌な予感を振り切る様にすごく凄いとかふざけて言ったものの、ニーナは堅い表情を崩さずに続けた。
「端的に言って功一等銀皇大授賞は上から数えた方が早い勲章です」
「へ、へえー」
「へえー、じゃないですよ、この勲章は領地を持たない法衣男爵相当の名誉なものですよ!」
「え゛、男爵? 辞退って出来ない?」
「帝国軍の名誉勲章ですよ、出来ると思います?」
「デ、デスヨネ、因みに銀皇って事は上に金皇もあるの?」
「有りますよ金皇、生きている人に授与された事なんて無いですけど」
「ええ・・・、それ撤退戦で殿を務めた上に敵軍に打撃を与えた英霊とか、そういうクラスじゃあ?」
「正解ですノワ様、既に銀皇勲章を授与された英雄が二階級特進して与えられる勲章が帝国金皇十字星大勲章となります」
「ハハッ、まるで星にでもなった勲章だな!」
「その通りですよキャプテンさん、星に名前を付けられる勲章です」
「流石に星には成りたくないねえ・・・」
死んでるじゃんソレ! 死んでから勲章を貰って喜ぶのは遺族とか軍人の家系とかだよね、私にとっては全然嬉しくないものだ。
おちゃらけたキャプテンもシェフィの補足情報に真顔になってしまった。
「因みにこの勲章、近年は大規模な戦闘が無いので十数年振りの授与となりますね、それと最年少です」
「うわ、目立つじゃん・・・」
「まあノワは取っとけば良いんじゃないかい? 公的な立場の保証はノワにとってプラスに働くだろう、法衣でも貴族扱いなら表立って襲うバカは居ないだろうし」
「あ、そういう考えも出来るね」
「他人事のように言ってますけど、最年少ってキャプテンさんも含まれてますからね、ノワさんが最年少記録を同時更新しただけで・・・」
「あぁん!?マジかよ!?」
「マジです」
お固めなニーナがマジですと真目な顔で言うくらいには凄い勲章だって事が判った。
「説明致しますと、ノワ様とキャプテンが前線でほぼ単機で敵勢力を押し留め、本艦隊の後退を手助けした行為は殿を務めたと判断されました、死亡してもおかしくない状況に身を置き、尚且つ稼いだ時間は黄金相当、もしあの時間が無かった場合艦隊には甚大な損害が発生していたとAI上のシミュレーションでも確定しております」
「軍としては、この階位の勲章でも与えないと面目が保てないと判断したようですね」
辞退出来ないなら受け取るしかないんだよね、うーん、爵位と聞くだけで自由が無くなるイメージが強いからヤダなあ、あまり帝国の貴族身分制度詳しくないから先入観なのかなぁ。
「あ、勲章だと授与式って」
「有りますよ、正装で参加しますね」
「シェフィ、正装って私持ってたっけ?」
「サジタリウスL2で衣類をまとめて購入した時にドレスを何着かご用意しております」
「えっ、アレ正装なの、てっきりシェフィの趣味かと思ってたんだけど」
「私の趣味であり、正装でもあります、問題なくご参加出来ますよ」
「アタシはパース」
「えっ、ずるい、キャプテンも道連れでしょ!!」
「はい、いいえ、ノワ様、キャプテンは過去に何度か軍と騒ぎを起こしているので居ない方が良いです」
「ええ・・・、何してるのキャプテン・・・」
「アタシは別にわるくないよ! ケツ触ってきた奴とかをぶっ飛ばしただけださね!」
「ええ・・・、帝国軍でも男の人はそんななの・・・」
「すいません、ごく一部の人間なんですけど、居ないとは言えなくて」
「死ねばいいのに、セクハラ男はみんな死ねばいいのに・・・」
キャプテンも身長高くてスタイル良いから声掛けられるのも解る、ニーナも否定しないってことは被害に遭った事あるんだよね、私は思わず呪詛を吐き出した。
正装のドレスを着ていくとして髪は少し色を変えて行けば大丈夫かなぁ、流石にキャプテンハットを被っては行けないもんね。
シェフィはメイド服でオーケーとして、ニーナはこの前衣服を購入した時に正装も合わせていたから、私とニーナ、シェフィの3人で授与式に参加しておけばまあ大丈夫でしょ。
***
「素敵ですノワ様」
「そ、そうかな、なんか着慣れないから照れるなあ」
「ふふふ、本当にお似合いですよ、貴族の御令嬢と言って差し支えないと思いますノワさん」
「そういうニーナさんだってタキシード似合ってるよ、なんか男装の麗人って言うか、上手く言えないけどカッコ可愛い」
「ありがとうございます、パンツスーツは軍服で気慣れているので個人的にも落ち着きますね」
私はオフショルダーのウエストを引き絞った膝丈のドレス、可愛いものは好きだけど自分がこういう格好は殆どしたことが無いから落ち着かないね。
逆にタキシード姿のニーナはピシッとした普段の様子と上手くマッチしていて格好良さと麗しさが合わさった舞台で有名なヅカタカラ・スタイルが似合っていた。
男装と言っても上着を押し上げる胸部は私より大きいのでセクシーさも合わせた女性らしさも欠かしていない。
うーん、羨ましい・・・
「ノワ様は確かに全体的に小柄ですが、ウエストが細いのでカップ数は意外と、もごもご」
「ちょっとシェフィ、シーシー!」
「ふふ、今度は衣装逆転でも良いかも知れませんね、私もドレス着てみたいです」
「あっ、うんうん!ニーナはスタイル良いから絶対似合うよ!着よう着よう!」
スカートに苦手意識があったニーナは当然ドレスも片手で数え切れる程しか着たことないそうだ、肩までのボブも最近は伸ばし始めているので絶対に似合うよ。
そんなこんなでアレコレとキャプテンを除いた3人、私、シェフィ、ニーナは正装に身を包み授与式会場のG星系帝国軍旗艦ヴァリガルマンダへと降り立った。
戦艦の指定格納庫へアークを着艦させジェネレーター出力を停泊モードへ落とす、今回キャプテンはコロニーで休暇、アークには『第三の私思』のシェフィ(球)がお留守番として待機してくれる。
『いってらっしゃいませノワ様、ニーナ様、私』
「行ってきます、シェフィ?」
「お願いします、シェフィさん?」
「はい、いいえ、行ってきます私」
パーソナリティー維持と区別の為に機械風音声にしてあるシェフィ(球)に見送られてタラップへと向かう、行ってきます私、なんて中々聞かない挨拶だね。
「御手をどうぞ、ノワ」
「ありがとうニーナ」
フワリと広がったドレスに足下が見えないので、そっと手を重ねるとニーナは寄り添ってエスコートをしてくれた、シェフィは楚々と後を付いてくる。
パシュウー、装甲の冷却を終えて安全温度まで下がった事で自動的に外部ハッチが開いた、ザワザワと喧騒が格納庫に響いているので結構な人が集まっているみたいだ。
カツン。
タラップに足音を響かせ私達は1歩を踏み出した。




