受勲式2
「え、あの子がクレイジーシップのパイロット?」
「誰だよゴリラみてえな女に決まってるって言った奴」
「可憐だ・・・」
「隣のタキシードの黒髪がゼクセリオンの方か?」
「あっちも女だったのか」
「いや、ゼクセリオンの方は眼帯で茜色の髪らしい」
「じゃあ黒髪の方はサブパイロットかオペか、銀髪がアークのメインパイロットなのは間違いないらしい」
「全員女だとさ」
「何歳だって?」
「銀髪が15、眼帯が20代だとよ」
「人生2周目でもしてるのかよ、15であのテクとか本物のクレイジーじゃねえか」
カツンカツンと数段のタラップを降りている僅かな時間であちらこちらから好き勝手な批評が聴こえてくる、ゴリラって操艦に筋肉は必要ないでしょ。
あと人生2周目じゃないよ、小さい頃からシミュレーションを延々とやっていただけだから、時間掛ければ誰でもアレくらいは出来るようになるよ。
「時間をかけてもノワさんの域にはならないと思います」
「はい、いいえ、可能性として全く無いとは言いませんが、概ね同意致します」
何故か私の意見には皆否定的だ、そんな無茶なこと言ってない筈なのにね、そんなことを話していると胸に勲章を付けた士官っぽい2人組みの軍人さんに話し掛けられた。
「初めまして、キャプテンノワ、で合っていますか?」
「あ、はい、傭兵ギルド所属艦アーク、艦長ノワです」
「私は旗艦ヴァリガルマンダの副官ガーデナー大尉と申します」
ガーデナーさんが手を差し出してきたので握り返す、若い・・・んだよね、多分30代くらいに見えるんだけど白髪が混じっていて何とも言えない外見年齢だ。
なんか、苦労してそうな見た目というか、疲れている感じが哀愁を漂わせている印象の人だった。
艦を代表して一度顔合わせに来てくれたらしい、柔和に笑うトゲのない男性なので特に裏は無いように思えた。
それなら艦長が挨拶に来ても良いと思うけど、あまり傭兵に謙った対応も軍として宜しくないもんね、授与式では艦長さんに会えるのかな?
隣の人は情報分析官のメイ少尉、此方はニーナと近い年齢で若いお姉さんだ、メイ少尉が私達の案内をしてくれるらしい。
2人ともニーナさんを一瞥、特に声を掛ける事もなくスルーしたあたりは恐らく極秘任務という事自体は把握しているのだろう。
「では本日勲章の授与はキャプテンノワのみ、キャプテンドレイクは欠席でノワさんが代理で受け取るという事で宜しいですか?」
「はい、一応電子書類で正式な代行書類も持って来ました」
「ありがとうございます、軍と言っても役所なので電子書類は助かります」
良かったー、キャプテンが来ないってなって揉めると大変だ、式の前であーだこーだ言い合いなんてしたくないし、事前にニーナさんからの勧めで代理人書類を作成しておいて正解みたいだね。
私の髪の色も白銀より若干暗めの銀に変えて来たけど、違和感が少ないのでバレなさそう。
「ノワさんの髪と瞳の色は天然のものですか?」
「ふあっ、は、はい」
「良い色ですね」
「あっ、ありがとうございます」
銀髪と青い眼イコール皇家の色だから会話の導入に褒められて私はギクリと背筋が冷えた。
惑星住みの人達だと「天気良いですね」から入るらしいけど、大体の人ってコロニストだから、無難に瞳とか髪とか分かりやすい容姿を褒めるんだよね、悪い色なんて無いからね、・・・それにしてもビックリした。
「戦闘記録を拝見させて頂きましたが素晴らしい腕前でした、私も小型戦闘艦に憧れて軍に入ったのですが、どうにも適性が無くて」
「あー、適性ですか、酔っちゃうとか?」
「そうなんです、どうしてもグリグリーってされるとウプってなっちゃって、何度も何度も対策しながら試験受けたんですがダメでした・・・」
「ああ、そうなるとノワさんの機動を見たら、」
「1発で酔う自信有りますね! ですので、私からすると宇宙酔いの視点だけでも憧れます」
「あはは、慣れ、と言うと失礼になっちゃいますかね」
「いえいえ、私は慣れてもダメだった、それだけですから、それに情報分析官ですとノワさんの様なウルテク傭兵の映像もいの一番に見れたりするので悪くないですよ」
「ウルテク」
「はい、ウルテクですね、言葉は悪いですけど、あの暗黒生命体の大群に小型艦2機で吶喊なんてクレイジーの一言ですよ、勿論良い意味で」
人懐っこい顔でウキウキと話すメイ少尉は正直な質のようで、吶喊したあの場面は、新型暗黒生命体は、と気になった事には嬉々として話を振ってきた。
話し易い感じなので私達は直ぐに打ち解けることが出来た、ところが授与式会場へと向かっている途中・・・
「おい、うまいことやった様だがいい気になるなよ」
傭兵の1人が私を睨みつけた
「うまいこと?」
「あんな無茶苦茶な吶喊をして抜け切るなんて有り得ない、どうせ無人機を使って後から乗ってたとか言ったんだろう」
いや、それは逆に難しいでしょ、暗黒生命体が密集している宙域へ突撃したのを外から操艦していたって、肉壁の関係上通信もかなり不安定になっていたし、あの速度で機動と射撃を外部操作は無理があるよ。
宝探し用のドローンを非戦闘時に飛ばすのとは訳が違う、コンマ以下の判断と感覚、先読みと経験、集中力を以て突破したアレを遠隔操作の方が逆に凄くない?
「これは異なことを、私共の戦闘データを帝国軍に提出して認められたのを『うまくやった』と申す?」
シェフィが強烈な皮肉を返す、戦闘データの改竄も改竄したデータを偽って提出するのも犯罪だ、帝国軍相手にそんな事をして只では済まない。
そんな危ない橋を渡った上、帝国軍はその改竄に気付かずに私達に勲章を与えるのか、貴方はそう言うのですね、へー。
と言う意味だ、
「だから、うまくやったと言ったんだ、どうやったかは知らないが俺は騙されないぞ」
「ふぁー!?」
変な声が出た、嘘でしょ? 軍艦の中で、しかも情報分析官の目の前でそんな事言っちゃうの!? 私はギョッとしてメイ少尉を見た。
「・・・」
あっ、これは激おこですね、先程まで快活に人当たり良くお話をしていたメイ少尉の額に青筋がビキビキと立っていた。
いや、うん、だよね、情報分析官だもんね、リアルタイムで多分私とキャプテンの事は観測していただろうし、戦艦において情報分析官の役職は決して軽くない。
データの確認も当然メイ少尉の名前で電子サインは入っているし、勲章の授与となれば艦長から星系統合指令室、そこから帝国軍中央機関首脳部まで上奏した上での判断がまた、このG星系旗艦ヴァリガルマンダまで下された結果の受勲だ。
つまり帝国軍の判断にケチをつけたのがこの傭兵さんとなるのだ、因みにニーナも表情が無になって黙っているので死ぬ程怖い、私個人としてはもう一度暗黒生命体の大群に吶喊した方が余程気楽な空気になっている。
て言うかあなたの背後の軍人さんはレーザーライフルのトリガーに指掛かってますよ、まあ後ろの人どころか今の声が聞こえていた周囲の軍人全員がレーザーガンに手を添えている。
うんうん分かるよ私だよね、15歳の女の子で戦闘艦艦長にしてパイロット、功一等銀皇大勲章を受勲予定の最年少記録ホルダーだもん、アークから顔を出した瞬間から注目を集めていたもんね、皆興味津々に私達の方を見ていたし会話も聞き耳立てていたもんね?
あーあ・・・
「馬鹿野郎、何やってんだ!」
「あん? なんだよお前だって昨日言ってただろうが」
「馬鹿、馬鹿馬鹿、ありゃ酒飲み話のひとつだろうが、酒飲んで息巻くのと此処で本人に言うのは別に決まってんだろ!」
「そうだ、つうかそもそもデータ改竄なんて出来ねえんだから、すげえ腕だなって話に落ち着いただろうが馬鹿」
「此奴、途中で酔い潰れたから覚えてねえんじゃねえか馬鹿!」
あっ、空気の読めるお知り合いかな、止めて止めて、もう手遅れだけど止まらないよりはマシだから止めて!
周囲は一部の冷静な軍人が止めた事で皆レーザーガンからは手を離していた、代わりと言ってはなんだけどスタンロッドをカシーンと振り伸ばして構えた人が数人居るけどね!
「いいか、俺はなぁッ」
ゴキッと鈍い音が立て続けに叩き込まれ静かになった、知らない、私は何も見ていない。
大丈夫スタンロッドは素材自体は柔らかめだから死にはしない筈、ボコボコにされたから当分まともに動けないだろうけど大丈夫(?)
流石傭兵判断が早い、止めていたお知り合いらしき傭兵達は素早くハンズアップして無抵抗をアピールして難を逃れていた。




