ブラックダイヤ号
「お姉様カッコよかったです」
「え、カッコいいって何が?」
「はい! 戦闘の一部ムービーがニュースで公開されていたんですけど、お姉様のアークと姐様の艦がコンビで大活躍したのが何回も放送されてましたよ!」
「ええっ!?」
バッとキャプテンを見ると、思い出した様に言った
「あー、星系とかコロニー、帝国軍の広報担当によるんだが一種の娯楽として一部戦闘記録が公開される事はあるねえ」
「ほら、お姉様観て下さい!」
ミュウちゃんが情報端末で見せてくれたのは、ニュースサイトで公開されているムービーだった
『現在、帝国航宙軍広報によると戦況は優位に進んでいるとして国民には冷静な対応を求めています、此方は公開された動画の一部です、どうぞ』
映し出されたのは白銀の航宙艦アークとキャプテンが乗っていたブラックダイヤ号だ、1番大変だった所のムービーで二機で死角を潰し合いながら暗黒生命体の大群の中心を駆け抜けているシーンだった。
おー、第三者視点だと結構ギリギリのシーンも有るね、私的に状況は完全コントロール下にあったつもりだけど、こうして観ると針の穴を通す事を繰り返していて良く抜けたもんだなあ。
ミュウちゃんによると帝国軍の行動を公開すると他国に分析されかねないので、こういう動画は傭兵艦の画になるものを選定されて公開されるらしい。
今回はド派手に敵陣を突っ切った私達が帝国軍の隠れ蓑として利用された形になった。
「醜悪な敵を切り裂く白銀の流星、傭兵艦アークは美しい艦ですし汎用機じゃないので凄い人気ですよ」
「ま、まさか、私の顔とか出てないよね」
「それは流石に無いですよ、でも傭兵ギルドには問い合わせが殺到しているみたいですね、あと姐様の方はゼクセリオン・コーポレーションの方に問い合わせが」
「え、キャプテンはゼクセリオン?」
「はい、姐様の艦は見ての通りゼクセリオンのベースカラーで会社のマークも機体の胴体に着いてますからね」
ワタリさんの方を見るとにっこりと、それはもう最高の笑顔で頷いた、これは株価とか売り上げとか相当商いをうまいことやったね。
「へい旦那、アタシの艦安くしてくれんだろうね」
「ははは、勿論、勉強させて戴きますよ」
艦を安く買い取るつもり満々のキャプテン、既に大儲けのワタリさん、ニュースサイトに大々的に取り上げられたアーク、意外な情報に戸惑いながらも私達は再会を喜んで打ち上げを始めたのだった。
***
さて、楽しかった(?)打ち上げも終わり、ミュウちゃんも静かに
「ねえ、お姉様が望むなら、私なんでもしますよぉ」
静かにドリンクを飲んで、シェフィとニーナもひと息ついた頃、キャプテンとワタリさんは商談に入っていた。
「所で旦那、アタシは艦を買い取りたいんだが」
「はい、事前に連絡を戴いたのでこちらが見積もり書です」
「・・・もう一声」
「・・・これでも破格だと思いますが」
「アタシが乗った宣伝効果はこんなもんじゃないだろう?」
「・・・これでは?」
「もう一声」
最初は眉を寄せるキャプテンとにっこり笑うワタリさんが対照的だった交渉が、話が進んで行くと逆にキャプテンがにっこり、ワタリさんが苦い顔へと変わっていった。
ゼクセリオン・コーポレーションのハイエンド機体でレーザー砲四門とミサイルポッド二門に爆縮弾4発、他の構成は聞いてないけど武装のTierから判断するに最低ラインは20億マニ以上、内装や装甲ペイントの予定を加えると総額25億マニは超えるかな。
「分かりました」
「オーライ、良い商談だった、まあ報酬足りなかったら買い取りはナシだけど」
「・・・足りる事をお祈り申し上げますよ」
「冗談だ、アレだけド派手にやってケチったら軍のメンツは丸潰れだからね、経験上確実に足りるさ」
どうやら話は纏まったみたいで横から端末を覗いてみると、やっぱり20億オーバーで目が点になった。
うんまあ帝国軍の支払いに期待って事でね、私とキャプテンで合わせて20億は越えてくるだろうから足りると思うよ、その場合はキャプテンの返し終わった数億の借金が10億マニの莫大な額に早変わりだけど、祈るのはワタリさんじゃなくてキャプテンの方じゃないのかなコレ。
「お姉様は次の星へ行っちゃうんですよね・・・」
「うん、一応その予定ではあるよ、報酬の精算額によってはキャプテンの機体の予算で食われちゃうから、もう一稼ぎするかもだけど、多分目標額は超えてくるからね」
「次は主星なんですか?」
「ううん、会いたい人が居るからD星系に向かう予定、後は場合によって主星に行くか辺境方面に離れて行くかって感じ」
「そうですか・・・、遠いですね」
「うん、ちゃんと定期連絡は入れるからそんな顔しないで」
「はい・・・」
ここまで懐いた相手は初めてなので腕に馴染んだ体温が無くなるのは私も寂しい、でも冷たい言い方になってしまうけど他人をアークに乗せて行くのはちょっとリスクが高いんだよね。
今の所そういった気配は無いけど、育てのママが殺された時のように私の血筋を知る貴族や賊に襲われる可能性は否定出来ない、ミュウちゃんを私の事情に巻き込むには年齢や技能、全ての面に於いて賛成出来ないだろう。
当然親であるワタリさんも執事のサトゥーさんも絶対に許さないのは分かっている。
広大な宇宙ではいち星系渡っただけで遥かに遠い、またねと言うには無責任、いつかと言うとその日は分からない距離が開く。
まあ仮にこの先の星系で何かあったとして逃げる際には、此処G星系を経由するのは可能だと思うから二度と会えないって話にはならない筈だ。
この先は、リゾート地のF星系、間にE星系、そして目的地である産みのママが住むD星系、その先は貴族ばかりの領地居住地のC、B、A主星系しかない。
産みのママに会う事を目的にここまでやって来たけど、欲を言えば血縁上の父親をこの手で殴りたい気持ちが胸の奥に燻っているんだよねえ。
皇子サマがママを含む複数の女性を妊娠させた事が諸悪の根源だし、皇家に引き取られた子供達が続々と亡くなったのも不審感満載だし、それも皇家としての対応なのか幼子だったから病気か何かで亡くなったのか判らないし、まあ情報が何もかも足りていないんだよね。
確実なのは、第三皇子サマが立場を笠に着て貴族令嬢と関係を複数持った事、これは当時のニュースサイトにも掲載されていてプレイボーイ具合が分かったので事実。
妊娠した令嬢の内、出産したのは3人で皇家の外戚として振る舞いたいからという理由と、授かった子に対して堕胎に消極的だったからという理由の半々、これも事実。
うーん、考えれば考える程、血縁上の父親を殴りたい気持ちが熱くなってくる、庶子と言っても親子 (反吐が出る)喧嘩って事で殴れないかな、問題起こした第三皇子なんて上の兄2人には確実に嫌われてるでしょ、ましてや何人も妊娠させた下半身の緩い弟なんて、私だったらボッコボコに殴ってるよ、至極真っ当な対応をした曽祖父皇帝、祖父皇太子、辺りと仲良く出来ないかな、そしたら殴っても良いよね?
「お姉様、怖い顔してますけど、何か?」
「あっ、ごめんね、血縁上の父親の事を考えていたら、どうやったら殴れるかなって」
「えっ、お姉様のお父様って皇家の・・・、あっ、いえ、なんでもないです
「ぶほっ!?」
ミュウちゃんには私の血筋を匂わせた話したもんね、ワタリさんもそれとなく気付いてそうで知らないフリしてくれてるけど、流石に話の内容に驚いて口に含んだ水を噴き出した。




