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■第45話 「それぞれの夜――揺れる心と変わらない日常」


 ――同じ一日を過ごしても、夜になると人はそれぞれの場所に戻っていく。



 白瀬家。



 リビングの灯りは落ち着いていた。



「……疲れたな」


 神谷伊織かみや いおりがソファに沈む。



「今日は色々あったしね」


 白瀬舞衣しらせ まいがキッチンから水を持ってくる。




 少しだけ静かな時間。



 テレビもついていない。



 音は呼吸だけ。




「なあ」



 伊織が言う。



「今日の話、さ」




「未来の?」




「うん」




 舞衣は少しだけ視線をそらす。



「まだちょっと恥ずかしい」




「だよな」




 伊織は苦笑する。




「でも」




「悪くなかっただろ?」




 舞衣は小さく頷く。



「……うん」




 その言葉だけで十分だった。




 一方その頃。



 神保亘しんぼ わたるの部屋。



「今日さ」



「なんか変な一日だったな」




「全部が現実っぽくて現実じゃない感じ」




 スマホを見ながら呟く。




「でもまあ」



「あいつらはあいつらか」





 相葉正佳あいば まさよしの家。



「はぁ……」



「恋愛って難しいよな」




「いやあれはレベル違うか」




 苦笑。





 二宮真匡にのみや ただしの部屋。



「普通ってなんだっけ」




「考えるだけ無駄か」




 天井を見上げる。





 水瀬蒼葵みなせ あおいの部屋。



 静かな夜。



「……あの二人」




「もう止まらないだろうな」




 少しだけ笑う。





 西宮七瀬にしのみや ななせ



 窓の外を見ている。



「ちゃんと前に進んでる」




「羨ましいな」





 ――それぞれの夜。



 それぞれの距離感。



 でも共通しているのは一つだけ。




 “あの二人はもう変わらない”という確信だった。




 白瀬家。



 深夜。



「ねえ伊織」



 舞衣が小さく言う。




「なに?」




「今日の話さ」




「うん」




「ちょっとだけ……怖かった」




 伊織は少し黙る。




「未来の話?」




「うん」




 舞衣は布団の上で膝を抱える。




「でも」




「嫌じゃなかった」




 その言葉で、伊織は少し笑う。




「ならいい」




「ゆっくりでいいだろ」




 舞衣は小さく頷く。




 ――夜は静かだ。



 でもその静けさの中で、



 確かに何かが積み重なっていく。




 それは恋でもなく、



 家族でもなく、



 まだ名前のない関係。




 でも確かに続いている。




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