表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

■第4話 「幼馴染は鋭すぎる――“その関係”、隠しきれてないよ?」


 ――絶対に、バレる。


「……はあ」


 朝、登校しながらため息が漏れる。


 原因は分かりきっている。


 水瀬蒼葵。


 昨日のあの目。あれは完全に“気づきかけている目”だった。


「後で話あるから」


 あの一言が、ずっと頭から離れない。



 教室。


「おはよー」


 いつもの空気。


 けれど俺の中だけが、まったく“いつも通り”じゃない。


 席に座る。


 そして――


「……」


 視線を感じる。


 横。


「おはよう、伊織」


 にこっと笑う蒼葵。


 ――笑ってるのに、目が笑ってない。


「……おはよ」


「今日、放課後空いてる?」


「……なんで」


「話があるって言ったでしょ?」


 逃げ道はない。


「……分かった」


「うん」


 満足そうに微笑む。


 けど、その奥にあるのは――


 確信。



 1限、2限。


 時間がやけに長い。


 その間も、蒼葵の視線が何度も刺さる。


 そして。


 もう一つの存在。


「……」


 窓際。


 白瀬舞衣。


 相変わらず本を読んでいる。


 ……けど。


 今朝、家でのことを思い出す。



『放課後、気をつけて』


『蒼葵、かなり鋭いから』



 舞衣の言葉。


 あいつも分かっている。


 危険だって。



 昼休み。


「神谷くん」


 またか。


 振り向くと、西宮七瀬。


「今日も一緒に食べよ?」


「……いや今日は」


「ダメ?」


 じっと見つめてくる。


 断りづらい。


「……少しだけな」


「やった」


 にこっと笑う。


 ――この距離感、ほんとやめてほしい。



「ねえ」


 七瀬が弁当を開きながら言う。


「昨日さ、面白かったね」


「……何が」


「水瀬さんとのやつ」


「面白くねえよ」


「でもさ」


 くすっと笑って、


「ちょっと嫉妬してたよね?」


「は?」


「どっちが?」


「……」


 言葉に詰まる。


 その時。


「伊織」


 低い声。


「……蒼葵」


 来た。


「今いい?」


「……今?」


「うん、今」


 逃がす気ゼロ。


「ごめんね」


 七瀬が割って入る。


「今この人とご飯中だから」


「関係ない」


 即答。


「ちょっと借りるね」


 腕を掴まれる。


「おい」


 強引に立たされる。


「またね、神谷くん」


 七瀬の余裕の笑み。


 ――完全に面白がってる。



 人気のない階段。


「……で?」


 蒼葵が振り返る。


「何が聞きたいんだよ」


「全部」


 即答。


「最近の伊織、明らかに変」


「気のせいだろ」


「違う」


 一歩近づく。


「視線。態度。反応」


「……」


「特に――」


 少し間を置いて、


「白瀬舞衣」


 ――心臓が止まりかけた。


「……なんのことだよ」


「昨日からずっと見てるでしょ」


「見てない」


「嘘」


 即答。


 逃げ道がない。


「ねえ」


 蒼葵はさらに距離を詰める。


「なんであの子なの?」


「……」


「関係あるんでしょ?」


「ない」


「あるよ」


 断言。


「だってさ」


 蒼葵は、じっと俺の目を見る。


「伊織、あの子と目合った時だけ――」


 言葉を区切って、


「顔、変わるもん」


 ――バレてる。


 ほぼ。


「……」


 言葉が出ない。


 その沈黙が、何よりの答えだった。


「やっぱり」


 蒼葵の目が細くなる。


「何かあるんだ」


「……違う」


「じゃあ証明して」


「は?」


「今ここで」


 腕を掴まれる。


「白瀬さんのこと、なんとも思ってないって」


「そんなの――」


「言えるよね?」


 逃げられない。


 完全に詰められている。



 その時。


「……何してるの」


 静かな声。


 振り向く。


 そこにいたのは――


 白瀬舞衣。


 階段の上。


 こちらを見下ろしている。


「白瀬さん」


 蒼葵が先に口を開く。


「ちょうどよかった」


「……何?」


「聞きたいことあるんだけど」


 やめろ。


 やめてくれ。


「神谷とさ」


 蒼葵は、わざとらしく言う。


「どういう関係?」


 ――終わった。


 完全に終わった。


 空気が凍る。


 沈黙。


 数秒。


 けれど、永遠みたいに長い。


「……クラスメイトだけど」


 舞衣が答える。


 完璧なトーン。


 完璧な距離感。


「それだけ?」


「それ以上でも、それ以下でもない」


 一切ブレない。


 プロの演技。


 いや――


 本物の女優。


「ふーん」


 蒼葵はじっと見つめる。


 探るように。


 けれど。


「……そっか」


 そう言って、少しだけ笑った。


「ならいいや」


 あっさり引いた。


 ……いや、


 引いた“ように見せた”。


「行こ、伊織」


 腕を引かれる。


「……ああ」


 そのまま通り過ぎる。


 舞衣の横を。


 一瞬だけ。


 本当に一瞬だけ。


 目が合う。


 ――その目は。


 明らかに、“危機”を感じていた。



 放課後。


「ねえ」


 帰り道。


 蒼葵が隣で言う。


「まだ隠すの?」


「……何を」


「全部」


 横目で見る。


 笑っている。


 でも。


「私、諦めないから」


 その目は、本気だった。


「絶対に見つける」


 ――幼馴染は、もう止まらない。



 そしてその夜。


「……危なかった」


 俺の部屋。


 舞衣が小さく息を吐く。


「完全にバレかけてた」


「……ああ」


「でも」


 少しだけ近づいてきて、


「ちゃんと守ってくれたね」


「……え?」


「私とのこと」


 そう言って、


 ほんの少しだけ笑う。


「ありがと」


 その距離は、近くて。


 その声は、柔らかくて。


 ――やっぱり、この人はずるい。



 秘密は、まだ守られている。


 けれど――


 崩壊は、もうすぐそこまで来ていた。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ