■第37話 「親友たちの距離感――変わった関係」
――“知ってしまった後の関係”は、少しだけ距離が変わる。
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「なあ、伊織」
神保亘が言う。
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「今さらだけどさ」
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「お前って、ほんとに大変な人生歩んでるよな」
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「……急に何だよ」
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神谷伊織は苦笑する。
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「いや」
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相葉正佳が続ける。
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「今までは“面白い噂の人”だったけどさ」
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「今は“ガチの関係者”だもんな」
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二宮真匡が腕を組む。
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「正直、まだ実感ないけどな」
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「でもまあ……普通に友達でいいんだよな?」
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「当たり前だろ」
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伊織は即答する。
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その時。
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「ねえねえ」
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新しい声。
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森本千穂。
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「ほんとに舞衣さんと同じ家に住んでるの?」
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「ちょっと千穂、それ聞きすぎ」
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櫻井博和が止める。
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「いや気になるじゃん」
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柘植拓人が笑う。
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「国民的女優と同居って普通じゃねえし」
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戸次佳未がため息をつく。
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「でもさ」
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「もう“普通”の定義が分かんないよね」
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教室の空気は、以前より柔らかい。
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さらに別の机。
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盛本貴文。
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「なんかさ」
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「伊織って急に別世界行ったよな」
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三好朱美。
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「でも変わってないのが逆にすごい」
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福島彌生。
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「そういうの一番信用できるかも」
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その時。
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教室のドアが開く。
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「……おはよう」
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白瀬舞衣。
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一瞬静まる教室。
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だが、以前の“緊張”はない。
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「おはようございます」
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「舞衣さんおはようです!」
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「普通に来てるの逆に安心する」
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舞衣は少し戸惑いながらも、小さく笑う。
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「おはよう」
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一方。
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廊下。
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深瀬碧。
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「……すご」
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「本物だ」
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その横を歩く二人。
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田仲郁哉――日本代表サッカーDF背番号5。
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「芸能人と一般高校生の距離感じゃねえな」
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大山球児――日本代表野球投手。
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「いや、もう“普通の学校”じゃないだろこれ」
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グラウンドの空気まで変わる。
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一方。
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昼休み。
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「なんかさ」
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神保が言う。
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「最近、お前に話しかける人増えたよな」
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「まあな」
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伊織はパンをかじる。
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「でも」
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相葉が笑う。
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「前より自然だわ」
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二宮が頷く。
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「距離は近いのに、圧は減った」
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「それっていいことなのか?」
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柘植が横から言う。
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「いいことだろ」
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伊織は即答した。
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一方。
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女子側。
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「舞衣さんってさ」
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森本千穂が言う。
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「思ってたより普通だよね」
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「分かる」
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櫻井博和。
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「怖い人かと思ってた」
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「でも優しいよね」
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戸次佳未。
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教室の空気は確実に変わっていた。
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その時。
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西宮七瀬が呟く。
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「これってさ」
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「“距離が縮まった”ってことだよね」
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水瀬蒼葵は少しだけ笑う。
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「うん」
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「ようやく“人として見られてる”」
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そして放課後。
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白瀬舞衣と神谷伊織。
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「なんか疲れたな」
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「だな」
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でも。
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その疲れは悪くない。
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遠くでは。
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東繭子が静かにカメラを閉じる。
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「……もういいかしらね」
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林輝久が驚く。
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「やめるんですか?」
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「ええ」
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「もう“壊す必要”がないわ」
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――物語は変わった。
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壊す話から、生きる話へ。
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そして。
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日常は静かに続いていく。
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