■第34話 「反撃開始――“隠された関係”の逆転」
――守るだけの時間は終わった。
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「行くぞ」
神谷伊織が言う。
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「うん」
白瀬舞衣は自然に頷いた。
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もう、隠す必要はない。
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ショッピングモール。
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人の流れはいつも通り。
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でも――空気だけが違う。
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「……見られてるな」
伊織が小さく言う。
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「うん」
舞衣は落ち着いた声で返す。
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「でも」
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「隠れる理由、もうないでしょ」
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そのまま二人は歩く。
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マスクも帽子もない。
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“普通の距離”のまま。
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すれ違う客の視線。
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「あれ……白瀬舞衣?」
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「え、マジ?」
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「隣の人って……」
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ざわめき。
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でも以前とは違う。
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「カップル?」
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「いや、家族だろ」
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「公表されてたやつじゃね?」
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“疑い”ではなく“理解”。
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空気が変わっていた。
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「なんか普通にいるのすごいな」
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若い客の声。
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「芸能人ってもっと隠れるもんかと思ってた」
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舞衣は少しだけ笑う。
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「ね」
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伊織を見る。
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「変な感じ」
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「だな」
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でも悪くない。
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食品売り場。
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「これでいい?」
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「それは多い」
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「えー」
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「絶対余る」
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普通の会話。
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普通の距離。
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それが逆に目立つ。
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少し離れた場所。
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スマホを構える人物。
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東繭子。
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「……堂々としてるわね」
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林輝久。
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「隠さなくなった分、撮りづらいですね」
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「いいのよ」
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東は笑う。
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「“普通”が一番記事になる」
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一方。
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クラス。
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「え、マジで一緒に買い物してんの?」
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神保亘。
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「もう普通に生活してるじゃん」
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相葉正佳。
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「逆に強くね?」
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二宮真匡。
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百瀬晴海。
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「なんか安心した」
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三森祥子。
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「隠すよりいいよね」
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遠藤千夏。
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その時。
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西宮七瀬。
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「これで“物語”が変わるね」
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水瀬蒼葵。
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「うん」
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「守る段階は終わり」
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「次は」
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少しだけ目を細める。
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「“選ばせる段階”」
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――戦いの質が変わる。
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その夜。
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白瀬家。
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「……疲れたな」
伊織が言う。
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「普通に歩いただけなのに」
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「それが一番すごいんだよ」
舞衣が笑う。
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「もう隠さなくていいの、楽」
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「でも」
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少しだけ間。
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「まだ終わってないでしょ?」
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伊織は頷く。
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「ああ」
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その横顔を見て、
舞衣は少しだけ安心する。
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その頃。
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東繭子。
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「次はこれね」
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画面に新しい写真。
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“堂々と歩く二人”
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「“関係は隠していないのに、距離が近すぎる”」
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口元が歪む。
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「最高のネタじゃない」
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――終わったはずの日常。
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しかしそれは、
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新しい火種でもあった。
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