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■第33話 「公表――崩れる世界と守る手」

 ――その一報は、あまりにも静かに放たれた。



「……出たわね」


 神谷紫苑かみや しおんが、画面を見て呟いた。



 その隣で、白瀬舞衣しらせ まいは息を止めていた。



 スマホの通知。



 ニュース速報。




『白瀬舞衣・神谷伊織、家族関係を正式発表』




 一瞬、世界が止まる。



「……家族、か」


 舞衣が小さく言う。



「ええ」


 紫苑は静かに頷く。




 その内容はシンプルだった。



白瀬舞衣しらせ まい

神谷伊織かみや いおり


・両親の再婚により“義理の姉弟”であること




 そして――


 恋愛関係についての言及は一切ない。




「……これで、止まるの?」


 舞衣が聞く。




「止まらないわね」


 紫苑は即答した。




「でも」



「“方向”は変わる」




 その瞬間。



 別の場所。



 教室。



「……は?」



 神保亘しんぼ わたるが固まる。



「家族?」



 相葉正佳あいば まさよし



「え、マジで?」



 二宮真匡にのみや ただし



「つまり……どういうことだ?」




 百瀬晴海ももせ はるみ



「恋人じゃなかったってこと?」



 三森祥子みもり しょうこ



「でも距離近すぎじゃない?」



 遠藤千夏えんどう ちなつ



「それはそれで怖いんだけど」




 教室は一気にざわつく。




 その時。



「……ねえ」



 西宮七瀬にしのみや ななせが言う。



「一応、形は整ったね」




「でも」



 視線を上げる。



「まだ“全部”は出てない」




 一方。



 水瀬蒼葵みなせ あおい



「……やっとスタートラインか」



 静かに呟く。




 そして。



 芸能界。



 事務所会議室。



「……出したわね」


 陣川千夜子じんかわ ちよこが言う。



「ええ」


 白瀬文隆しらせ ふみたか



「これで説明はつく」




「でも」



 陣川が続ける。



「一番重要な部分が抜けてる」




 紫苑が静かに言う。



「“それでいいのよ”」




「全部を出したら」



「今度は別の問題が生まれる」




 一瞬の沈黙。




「……隠したまま守る」



 文隆が低く言う。



「そういう戦い方だ」




 一方。



 記者編集部。



 東繭子ひがし まゆこ



「ふーん」



 画面を見ながら笑う。



「家族ね」




「じゃあ」



 指を動かす。



「次はそこよ」




 林輝久はやし てるひさ



「まだ掘りますか?」




「当たり前」



 即答。



「“隠している部分”がある限り」



「そこに真実がある」




 ――戦いは終わっていない。



 むしろ、



 ここからが本番。




 その夜。



 白瀬家。



「……終わった、のかな」


 舞衣が言う。




「終わってない」


 神谷紫苑。




「でも」



 少しだけ優しく言う。



「守れる形にはなった」




 舞衣は小さく息を吐く。



「伊織、びっくりするかな」




「するわね」




 紫苑は少し笑う。



「かなり」




 その頃。



 神谷伊織かみや いおり



 スマホを見たまま固まっていた。



「……家族?」




「……ああ」



 和真かずまが隣で言う。



「完全に守りに来たな、これ」




 伊織はゆっくり画面を下ろす。




「……だったら」




 小さく呟く。



「もう、隠す理由はないな」




 その目は、



 もう迷っていなかった。




 そして――



 遠くで東繭子が笑う。



「いいわね」



「守りが固まるほど」



「壊しがいがある」




 ――まだ終わらない。



 むしろ、これから。




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