■第28話 「プロデューサー介入――仕事か恋か」
――“現実”が、静かに首を絞めてくる。
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「……白瀬舞衣」
重たい声が響いた。
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事務所の会議室。
空気は冷えている。
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そこに立っていたのは――
陣川千夜子。
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48歳。
トッププロデューサー。
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「説明してもらえる?」
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机の上に置かれたタブレット。
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例の記事。
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“同級生男子との同棲疑惑”
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「……」
舞衣は黙ったまま。
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「否定しないのね」
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「……事実ではありません」
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「でも」
陣川の目が細くなる。
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「そう“見える”」
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――芸能界の論理。
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「白瀬舞衣」
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「あなた、今いくつ?」
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「……」
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「23」
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「恋愛は自由よ」
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間。
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「でもね」
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声が一段低くなる。
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「“商品価値”は自由じゃない」
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空気が凍る。
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「このままだと」
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「次の作品、降ろすことになるわ」
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「……っ」
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舞衣の手がわずかに動く。
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そこへ。
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「待ってください」
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扉が開く。
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神谷紫苑。
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「……あなたは?」
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「母です」
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静かに言う。
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空気が変わる。
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「母親が出てくる案件ではないと思うけど?」
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「そうね」
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紫苑は歩み寄る。
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「でも」
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「これは“家族の問題”でもあるの」
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陣川の視線が鋭くなる。
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「家族?」
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「ええ」
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一拍。
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「正式に言うわ」
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舞衣の方を見る。
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「白瀬舞衣と神谷伊織は」
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――沈黙。
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「再婚した両親の子ども」
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「つまり」
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「“義理の姉弟”」
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空気が止まる。
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「……は?」
陣川が眉をひそめる。
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「それを今まで隠していた理由は?」
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「仕事のため」
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紫苑は即答する。
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「でも」
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「今は逆」
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「隠すことがリスクになる」
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――核心。
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「公表しなさい」
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紫苑は言い切る。
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「家族関係として」
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「スキャンダルを“事実”に変える」
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沈黙。
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「……簡単に言うわね」
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陣川が呟く。
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「簡単じゃない」
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紫苑は首を振る。
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「でも必要」
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――そこへ。
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扉がもう一度開く。
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白瀬文隆。
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白瀬ホールディングス会長。
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「……決めた」
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一言。
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全員が見る。
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「公表する」
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――決断。
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「ただし」
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続ける。
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「タイミングはこちらで決める」
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陣川が息を吐く。
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「……やっと話が通じる相手が来たわね」
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一方。
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学校。
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「……やばいな」
和真が呟く。
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「何が?」
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「事務所まで動いてる」
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「……」
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「もう完全に戦争だろこれ」
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神保亘。
相葉正佳。
二宮真匡。
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黙っている。
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「なあ」
神保が言う。
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「これ、伊織どうすんの?」
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「……」
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答えは出ない。
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その頃。
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「……仕事か」
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廊下。
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神谷伊織。
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呟く。
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「恋か」
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もう一度。
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――選べない。
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その先で。
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白瀬舞衣が立っていた。
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「……伊織」
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「……聞いた」
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「うん」
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短い沈黙。
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「……ごめん」
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舞衣が言う。
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「勝手に進んでる」
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「……いい」
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即答。
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「むしろ」
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一歩近づく。
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「ここまで来たなら」
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「最後まで行くしかないだろ」
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――覚悟。
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その瞬間。
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舞衣の目が揺れる。
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「……うん」
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小さく頷く。
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そして。
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その夜。
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記事編集部。
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東繭子。
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「……出たわね」
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白瀬ホールディングスの声明準備情報。
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「家族公表」
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林輝久が言う。
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「止めますか?」
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「いいえ」
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東は笑う。
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「むしろ歓迎」
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「本物のネタになる」
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――火は消えない。
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むしろ。
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燃え上がる。
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