■第27話 「決定的瞬間――撮られた二人」
――静かに、終わりへ近づいていた。
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「……これで十分ね」
東繭子は、モニターを見ながら呟いた。
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画面には――
ショッピングモールでの写真。
キッチンへ向かう後ろ姿。
そして、距離の近すぎる横顔。
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「全部揃った」
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隣で林輝久が言う。
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「“関係性の証明”としては完璧です」
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「ええ」
東が頷く。
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「恋愛じゃなくてもいい」
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「“そう見えればいい”」
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――それが記者の論理。
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「じゃあ出すわよ」
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カーソルが動く。
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公開ボタン。
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その瞬間――
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「……待て」
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林が止める。
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「何?」
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「もう一枚あります」
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差し出されたデータ。
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――それは。
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買い物帰りの二人。
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変装した白瀬舞衣。
隣に神谷伊織。
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笑っている。
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“ただのカップル”にしか見えない瞬間。
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「……これ」
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東の目が細くなる。
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「いいじゃない」
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「え?」
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「決定打になる」
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口角が上がる。
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「この“幸せそうな顔”が一番危険なのよ」
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――歪んだ確信。
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「炎上するのは、事実じゃない」
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「感情よ」
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クリック。
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公開。
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一方。
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「……まずい」
神保亘がスマホを見ながら言う。
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「何が?」
相葉正佳。
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「出た」
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二宮真匡が固まる。
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画面。
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タイトル。
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――『国民的女優・白瀬舞衣、同級生男子と“同棲疑惑”』
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「……は?」
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空気が一瞬で凍る。
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「おいこれ……」
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百瀬晴海が顔を青くする。
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「やばくない?」
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三森祥子が震える。
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「完全にアウトじゃん」
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遠藤千夏。
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クラス中が騒然となる。
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「神谷ってマジで……」
「いやいやいやいや」
「え、これ本当だったらやばい」
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――崩壊。
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その時。
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「……」
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教室のドアが開く。
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白瀬舞衣。
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一瞬で静まる。
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視線。
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無数。
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「……」
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舞衣は何も言わない。
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ただ、机に座る。
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その手が、わずかに震えていた。
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「……伊織」
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小さく呟く。
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その瞬間――
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伊織のスマホにも通知。
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記事。
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完全公開。
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逃げ場なし。
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「……最悪だな」
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和真が呟く。
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「……ああ」
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「どうする」
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「……」
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答えはない。
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でも。
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立つしかない。
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その時。
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「ねえ」
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西宮七瀬が言う。
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「終わったわけじゃないよ」
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「……」
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「まだ“誤解”で済む」
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――希望。
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でも。
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その裏で。
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さらに動く影。
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水瀬蒼葵。
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「……これ」
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記事を見ながら呟く。
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「もう止められないね」
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そして。
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「でも」
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静かに目を上げる。
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「守るって決めたんでしょ」
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その言葉は、
誰に向けたものでもなかった。
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――全員への宣言。
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一方。
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白瀬家。
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「……」
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舞衣の父・白瀬文隆は、
静かに新聞記事を見ていた。
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「……やられたか」
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低く呟く。
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その時。
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神谷紫苑から連絡。
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「出たわね」
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「……ああ」
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「予定より早い」
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「……そうだな」
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「どうする?」
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一拍。
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そして。
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「……予定通りだ」
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静かに言う。
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――“動く時”。
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家族が、ついに動き出す。
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その選択は――
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まだ誰も知らない未来を変える。
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