■第24話 「敵事務所の影――仕掛けられる罠」
――表に出ているのは、ほんの一部。
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高層ビルの最上階。
重厚な扉の奥。
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「……動き出したか」
低く響く声。
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倖田蔵之介。
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その隣には、
倖田雄介。
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「兄さん」
雄介が笑う。
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「いい流れですね」
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「……まだ甘い」
蔵之介は言う。
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「“匂わせ”程度では潰せん」
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「では?」
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「決定打だ」
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一言で空気が変わる。
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「家」
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「学校」
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「そして――仕事」
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「すべてから崩す」
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「……了解」
雄介が頷く。
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「まずは記者を利用する」
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「東繭子と林輝久ですね」
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「ああ」
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「奴らは嗅ぎつけている」
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「ならば」
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蔵之介の口角が上がる。
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「“餌”を与えろ」
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――罠が仕掛けられる。
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一方。
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夜。
静かな部屋。
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「……やっぱりね」
神谷紫苑は、記事を見ていた。
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画面には――
拡散され始めた写真。
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「……雑」
小さく呟く。
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「でも」
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「意図は明確」
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目が細くなる。
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「これは“作られてる”」
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直感ではない。
確信。
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「……なら」
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スマホを手に取る。
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連絡先。
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表示される名前。
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「白瀬文隆」
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一瞬だけ、間。
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「……久しぶりね」
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通話ボタンを押す。
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数秒後。
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「……紫苑か」
低い声。
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「ええ」
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「珍しいな」
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「用件があるの」
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声が変わる。
完全に“仕事の声”。
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「今回の件」
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「……ああ」
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「見てるでしょ?」
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「当然だ」
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「放置すれば」
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一拍。
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「舞衣が壊れる」
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沈黙。
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「……それで?」
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「お願いがある」
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はっきりと言う。
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「“家族として公表して”」
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――核心。
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空気が変わる。
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「……」
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「今なら間に合う」
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「スキャンダルは“誤解”にできる」
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「……」
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「でも」
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「時間がない」
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静かに、確実に追い詰める。
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「……紫苑」
文隆が言う。
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「それをやれば」
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「……分かってる」
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「すべてが繋がる」
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「……」
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「過去も」
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「関係も」
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「そして――」
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「“今”も」
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すべてを背負う決断。
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「……」
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数秒の沈黙。
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そして。
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「……いいだろう」
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「……!」
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「ただし」
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「条件がある」
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「……何?」
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「タイミングはこちらで決める」
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「……」
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「中途半端な公表は意味がない」
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「……分かった」
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「……任せる」
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通話が切れる。
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「……ふぅ」
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小さく息を吐く。
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「……伊織」
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画面を見る。
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「あなた、何してるのかしらね」
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少しだけ笑う。
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でもその目は――
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完全に“守る側”だった。
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一方。
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翌日。
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「……おかしい」
教室。
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水瀬蒼葵が言う。
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「……何が」
神谷伊織。
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「記者」
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「……」
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「動きすぎ」
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「……」
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「普通じゃない」
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その通りだった。
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その時。
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「神谷くん」
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西宮七瀬。
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「ちょっといい?」
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「……」
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「外」
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「……?」
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「変な人、いた」
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――完全に囲まれている。
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一方。
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校門の外。
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「……来たわね」
東繭子が笑う。
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「餌の効果、上々」
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「ええ」
林が頷く。
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「“あの情報”が本当なら」
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「確定ですね」
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「ええ」
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その目が鋭くなる。
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「次は“家”」
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――決定打へ。
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そして。
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その裏で。
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すでに動いている。
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“家族”という、最大のカードが。
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まだ誰も知らない。
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その一手が――
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すべてをひっくり返すことを。
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