■第22話 「追跡開始――記者の嗅覚」
――“匂い”は、もう掴まれている。
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「……ここが学校か」
校門の前。
サングラスをかけた女が立っていた。
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東繭子。
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「普通の高校生、ね」
小さく笑う。
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「でも」
スマホを確認する。
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「写ってる顔は、普通じゃない」
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――ターゲット確定。
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「林」
隣に立つ男へ。
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「はい」
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「あなたは“男側”」
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「神谷伊織、ですね」
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「ええ」
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「私は“女側”」
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役割分担。
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「学校内と外」
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「両方から詰める」
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「了解」
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――プロの動き。
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一方。
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「……気持ち悪いな」
教室。
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和真が窓の外を見る。
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「……何が」
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「視線」
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「……」
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「誰か見てる」
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――正解。
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校門の外。
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東は、双眼レンズで校内を見ていた。
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「……いた」
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白瀬舞衣。
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「やっぱりね」
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視線をずらす。
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「……で」
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神谷伊織。
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「ふふ」
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「距離が微妙」
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わずかな違和感。
それを見逃さない。
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「これは」
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「当たり」
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一方その頃。
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別の場所。
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高層ビルの一室。
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「……これは」
静かな声。
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白瀬文隆。
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白瀬ホールディングス会長。
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机の上には、タブレット。
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そこに表示されているのは――
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あの写真。
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「……舞衣」
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目が細くなる。
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そして。
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「……この少年」
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伊織。
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「……」
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沈黙。
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その時。
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「……あら」
別の声。
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リビング。
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神谷紫苑。
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「……何これ」
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スマホを見て、止まる。
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「……舞衣ちゃん?」
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そして。
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「……え?」
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隣に写る人物。
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「……伊織?」
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――一致。
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「……どういうこと」
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画面を拡大する。
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距離。
空気。
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「……ただの家族じゃない」
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直感。
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そして――
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「……面白いわね」
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口角が上がる。
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その目は、
ただの母親じゃなかった。
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フリーライター。
元教師。
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“見る側”の目。
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「……誰が書いたのかしら」
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記事をスクロールする。
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「……甘い」
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一言。
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「この程度じゃ、証明にならない」
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冷静な分析。
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「でも」
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「匂いはする」
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完全にスイッチが入る。
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「……伊織」
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小さく呟く。
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「何してるのかしら」
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その頃。
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学校。
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「……なあ伊織」
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「……なんだ」
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「完全に見られてる」
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「……ああ」
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違和感が確信に変わる。
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その時。
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「神谷くん」
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「……」
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振り向く。
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蒼葵。
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「さっき」
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「……」
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「外に、いた」
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「……誰が」
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「大人」
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短く言う。
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「記者っぽい」
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――確定。
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「……来たか」
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小さく呟く。
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放課後。
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「……完全に動いてる」
事務所。
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近藤絵莉が言う。
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「学校まで来てる」
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「……」
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「もう」
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「逃げ場はない」
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その言葉が重くのしかかる。
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そして――
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夜。
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「……なるほど」
東繭子が呟く。
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「家族設定」
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「でも」
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「距離が違う」
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確信に近づいている。
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「林」
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「はい」
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「次は」
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一歩進む。
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「“家”を押さえる」
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――終わりに近づく一手。
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その頃。
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神谷家。
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「……伊織」
紫苑が呟く。
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「帰ってきたら」
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「聞きましょうか」
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静かに笑う。
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その目は――
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すべてを見抜く者の目だった。
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そして。
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白瀬家。
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「……舞衣」
文隆が低く言う。
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「説明してもらおうか」
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――親、参戦。
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学校。
芸能界。
記者。
そして家族。
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すべてが交差する。
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もう、“子供の秘密”じゃない。
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――大人の戦いが始まる。
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