■第21話 「再燃――消えたはずの写真」
――終わったはずだった。
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あの写真は消えた。
記事も削除された。
学校も、日常も、なんとか戻った。
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――“はずだった”。
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「……なあ伊織」
昼休み。
教室。
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「……なんだ」
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「また出てる」
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「……は?」
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和真のスマホ。
画面を見た瞬間――
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血の気が引いた。
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そこにあったのは、
あの写真。
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しかも――
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「……なんだこれ」
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前よりも鮮明。
前よりも拡散されている。
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「“続報”だな」
和真が低く言う。
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「続報って……」
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「最初のやつ、わざと消した可能性ある」
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「……は?」
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「食いつきを確認してから、本命投下」
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――最悪だ。
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「……誰だよこんなこと」
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「プロだろうな」
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その言葉が、現実を重くする。
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その時。
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「ねえ」
後ろから声。
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「……七瀬」
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「見た?」
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「……ああ」
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「これさ」
一歩近づく。
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「もう“ただの噂”じゃないよ」
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「……」
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「完全に狙われてる」
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その通りだった。
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「……伊織」
今度は蒼葵。
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「これ、ヤバい」
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「……分かってる」
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「前と違う」
真剣な目。
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「今回は“消される前提で出してない”」
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「……」
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「拡散させるための出し方」
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完全に分析されている。
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「……ちっ」
思わず舌打ちが出る。
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教室の空気も変わっていた。
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「なあ、あれってさ……」
「神谷じゃね?」
「いや違うだろ……でも」
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神保、相葉、二宮がひそひそ話している。
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女子側も。
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「ちょっと似てない?」
「いやでも白瀬さんだよ?」
「え、もし本当だったら……」
百瀬、三森、遠藤もざわつく。
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――もう隠しきれない。
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「……伊織」
和真が小さく言う。
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「学校も限界近いぞ」
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「……ああ」
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その時。
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ガラッ。
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教室のドアが開く。
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入ってきたのは――
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白瀬舞衣。
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いつも通り。
でも。
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全員の視線が、一斉に集まる。
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「……」
舞衣は何も言わない。
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でも。
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その一瞬の“間”。
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それだけで、
“何かある”と分かってしまう。
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「……席つくね」
静かに言う。
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その声さえも、いつもより小さい。
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「……」
空気が重すぎる。
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放課後。
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「……来たわね」
事務所。
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近藤絵莉が立っていた。
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「……これ」
タブレットを見せる。
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例の写真。
そして――
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「“第2弾”」
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「……」
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「完全に狙われてる」
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「……誰が」
舞衣が聞く。
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「まだ特定できてない」
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「でも」
一拍。
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「“記者”が絡んでる」
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「……」
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「名前は」
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「東繭子」
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そして。
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「林輝久」
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――新たな敵。
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「……本気だな」
俺が呟く。
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「ええ」
絵莉が言う。
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「遊びじゃない」
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「潰しに来てる」
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空気が冷える。
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「……対処は」
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「する」
即答。
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「でも」
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「今回は簡単じゃない」
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「……」
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「向こうも“プロ”だから」
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同じ土俵。
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その意味は――
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“逃げられない”ということ。
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その頃。
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「……面白くなってきた」
暗い部屋。
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スマホを見ながら呟くのは――
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東繭子。
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「ここまで反応いいとはね」
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「……次は?」
隣で林が聞く。
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「決まってるでしょ」
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口角が上がる。
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「もっと決定的なの」
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――狩りは、まだ終わらない。
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そして。
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その裏で。
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「……動き出したか」
低い声。
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倖田蔵之介。
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「兄さん」
雄介が笑う。
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「潰しますか?」
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「当然だ」
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静かに言う。
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「徹底的に」
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――敵は一つじゃない。
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学校。
記者。
芸能界。
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すべてが敵に回る。
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それでも。
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守ると決めた。
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その代償は――
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まだ、誰も知らない。
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