■第20話 「暴露か、共犯か――選ばれた“秘密”」
――もう、隠せない。
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白瀬家の前。
夜。
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「……そういうこと」
水瀬蒼葵は、すべてを理解した。
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「……違う」
舞衣が言う。
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「違わない」
蒼葵が静かに返す。
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「……もう見た」
一歩前へ。
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「距離」
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「空気」
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「……あれは」
言い切る。
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「“家族”じゃない」
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――完全な核心。
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「……」
舞衣は何も言えない。
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「……ねえ」
蒼葵が言う。
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「いつから?」
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「……」
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「どこまで?」
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「……」
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沈黙。
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「……答えないんだ」
小さく笑う。
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「……そっか」
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その笑顔は、
少しだけ寂しそうだった。
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「……ごめん」
舞衣が言う。
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「……謝らないで」
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「え……?」
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「謝られると」
視線を逸らす。
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「余計、壊したくなる」
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――本音。
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「……」
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「ねえ」
蒼葵が顔を上げる。
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「好きなの?」
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直球。
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「……」
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一瞬。
迷い。
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でも。
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「……うん」
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舞衣は、頷いた。
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――終わった。
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でも同時に、
始まった。
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「……そっか」
蒼葵が小さく笑う。
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「負けたな」
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「……え?」
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「私」
少しだけ肩をすくめる。
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「そこまで本気になれなかった」
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静かな敗北。
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「……」
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「ねえ」
蒼葵が言う。
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「これ、バレたらどうなるか分かってる?」
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「……うん」
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「学校」
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「……」
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「芸能界」
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「……」
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「全部終わるよ」
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残酷な現実。
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「……それでも」
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「……」
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「守るの?」
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最後の確認。
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「……守る」
迷いなく。
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「……そう」
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少しだけ間を置いて、
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「……じゃあさ」
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一歩近づく。
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「私も決める」
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――選択。
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「……」
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「バラすか」
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「……」
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「黙るか」
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その二択。
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そして。
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「……黙る」
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静かに言った。
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――共犯。
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「……え」
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「その代わり」
指を立てる。
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「条件」
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「……何」
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「絶対、壊れないこと」
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「……」
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「中途半端で終わるなら」
目が鋭くなる。
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「私がバラす」
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――覚悟の契約。
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「……」
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「いい?」
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「……ああ」
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頷いた。
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その時。
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「……やっぱりここか」
声。
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振り向く。
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「……和真」
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そして――
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「……七瀬」
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二人が立っていた。
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――見られていた。
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「……」
空気が止まる。
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「……今の」
七瀬が言う。
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「全部聞いた」
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――終わり。
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「……はあ」
七瀬が大きくため息をつく。
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「やっぱりね」
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「……」
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「完全に本気じゃん」
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笑う。
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「勝てるわけないわ」
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でも。
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「……悔しいけど」
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「……」
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「負けは認める」
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はっきり言った。
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「……」
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「でも」
指を向ける。
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「幸せにならなかったら許さない」
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それは――祝福に近かった。
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「……」
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そして。
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「……俺も聞いてた」
和真が言う。
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「……」
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「まさかそこまでとはな」
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苦笑する。
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「……引いたか?」
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「いや」
首を振る。
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「むしろ納得」
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「……」
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「だから」
一歩前へ。
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「最後まで守るぞ」
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完全な味方。
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「……」
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気づけば。
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もう一人じゃなかった。
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蒼葵は共犯になり、
七瀬は身を引き、
和真は支える側に回った。
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でも。
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これは終わりじゃない。
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むしろ――
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始まり。
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芸能界。
世間。
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本当の敵は、外にいる。
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それでも。
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この関係は、
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もう、揺るがない。
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――誰にも壊させない。
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■第2章 完
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